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【クレイジークレバー編】
第16話 再戦
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ノブナガがモコ助の眼前に勇ましく立ちふさがる。フゥンと大きく鼻息を鳴らし、立派な歯並びを見せつけるようにニッと笑ってみせた。対するモコ助も負けてはいない。小さな身体ながら、おじけることなく眼前の巨大な敵に相対している。
まず動いたのはノブナガだ。
おもむろに前脚を高く持ち上げ、ヒヒンといなないたのち、そのままモコ助を踏み潰さんと、前脚を勢いよく振り下ろした。
モコ助は小さな身体の駆動力を活かし、それをかわす――が、ノブナガはモコ助の動きを読んでいた。攻撃をかわすことで精一杯のモコ助の顔面にノブナガのしなる尻尾が直撃する。モコ助は数メートル弾き飛ばされた。
よろけつつも、すかさず立ち上がろうとするモコ助。ブルブルと身体を震わせ、モコモコの毛にまとわりついた砂を飛ばした。しかし、モコ助は相当なダメージを負った様子で、全身の痛みに耐えるように歯を食いしばっている。
戦況は明らかに悪かった――
*
「おい。また会ったな」
と、ノボルはほとんど真横からした声に驚いた。ユウリとサトミのデュエルに意識を集中させていたため、近づいてくる人影に気付かなかったのだ。
それは、クレイジークレバーのひとりだった。
「お、おまえは……」ノボルが眉根を寄せ、相手の顔を検分するようにジロジロと見た後、「誰だっけ?」と、とぼけた調子で言うと、クレイジークレバーは盛大にズッコケた。
「誰だっけじゃねぇよ! お前の記憶力はアメーバなみか!」
「そ、そんなこと言われても、本当に覚えてないんだ」
クレイジークレバーは「はぁー」と大きなため息を吐き出した後、「こんなやつに負けたなんてな……」と項垂れた。その後、顔を上げ、ノボルをひと睨みして言った。
「バットだよ。コードネーム、バット。お前のお仲間の嬢ちゃんをデュエルでボコッた……」
「あ!」
ノボルはバットの発言を途中で遮った。
「僕に負けた」
「都合の良いところだけ思い出すな!」
ふたりがそんな3文ノリツッコミを繰り広げていたところ、
「あ!? バットじゃないの!」
横からサチが会話に参加した。
「お、噂をすれば。お前は俺様に盛大に敗北を喫した、おてんばデコ自信過剰娘!」
「お、おてんばデコですって!?」
サチが目を剥く。
「下らない減らず口は健在ね。ふん。あんただって、奇問を出題して偉い気になってる勘違い野郎じゃない!」
「ち、イチイチ癇に障る女だぜ。いいぜ、もう一回やるか? お前のその折れ損ないの鼻、今度こそしっかりへし折ってやるぜ」
「いいえ」
と言ってサチが視線を動かした先にはノボルがいた。
「あんたのオハコは奇問でしょ? それなら、こっちにはうってつけのメンバーがいるわ」
「え……」
ノボルは一瞬固まり、
「もしかして、僕?」
自らを指さして引きつった笑顔を見せた。
サチが静かに頷く。
「ハッハッハッハ!」
バットが高笑いする。
「どう考えてもあんときのはまぐれだろ。解いた本人も、何故解けたのか分かってなかったじゃねぇか! まぁ、いいよ。まぐれは二度はねぇ。どっちが賢いか、しっかり決めようじゃねぇか」
「い、嫌だよ。僕、そんな……」
ノボルは自分の顔の前で両手を振って全力で拒絶を表明するが、サチのひと睨みによってシュンとした。
「は、はい。やります」
「ふん、大好きな女の子の言いなりかよ。カッコ悪りぃなぁ」
「な、なんだと!」
バットの挑発にいともたやすく乗るノボル。
バットは右手の拳を前方に突き出した。
人差し指にはめられたデュエルリングが輝く。
「単問相互出題。科目は算数。デュエルスタディー!」
ノボルも慌てて右手の拳を突き出す。
互いのデュエルリングが共鳴するように発光し、デュエル開始の一連のエフェクトが空中に巻き起こる。
次いで互いのラーニングアニマルが姿を表す。バット側はコウモリのルーセット、ノボル側はカピバラ(名前はまだない)だ。バットのルーセットがちょこまかとあたりの空間を飛び回る一方、ノボルのカピバラは眠たそうに目をしょぼつかせている。
ノボルは震えた。無論、武者震いではない。ただただ怯えているのだ。とんでもないことになったと思っているのだ。しかし、時すでに遅しである。
(くそ、こうなったらやるしかない! よくわからないけど、僕は一度バットに勝ってるんだ。今度もきっといける!)
ノボルは自分の自信よりも、(記憶がおぼろげな)過去の戦績という客観的事実にすがって、みずからを奮い立たせた。その実、心中はほとんど破れかぶれ状態だった。
ノボルとバットが各々のウィンドウを指で操作する。
サチもウィンドウを開いた。
【周囲が200mの池の周りに4m間隔で木を植えるには、何本の木が必要か答えよ】
「って、ノボルあんた! これ、あんたとのデュエルで私が出題したまんまじゃない!」
「だ、だって! ぼ、僕、ぜんぜん勉強しないから、そんなに問題を知らなくて……」
「はぁ……」サチは大きなため息をつくも、ハッと何かに気付いたように目を見開いた。「そうよ! ノボル、あんたが出題した問題なんて、この際どうだっていいのよ!」
ノボルはポカンとした。
「だぁかぁらぁ!」サチが苛立ちをあらわにする。「バットが出す奇問をいともたやすく解いてしまえば、きっとかなりの得点が入るに違いないわ! こんなへなちょこの出題じゃバットも正解するでしょうけど、ノボルの解くスピードと解答の質によっちゃ、まだ勝ち目があるわ!」
「で、でも、僕そんな奇問なんて解けるはず……」
「つべこべ言わず、解く!」
「は、はいぃ!」
慌ててウィンドウを操作するノボル。
サチも自身のウィンドウを操作する。
「さて、バットのやつ、今度はどんな妙ちくりん問題を出してきたのかな?」
しかし、サチの表情は固まり、みるみる血の気が引いていった。
「え? そ、そんな……」
【次の計算をしなさい。 9×15+9×35= 】
まず動いたのはノブナガだ。
おもむろに前脚を高く持ち上げ、ヒヒンといなないたのち、そのままモコ助を踏み潰さんと、前脚を勢いよく振り下ろした。
モコ助は小さな身体の駆動力を活かし、それをかわす――が、ノブナガはモコ助の動きを読んでいた。攻撃をかわすことで精一杯のモコ助の顔面にノブナガのしなる尻尾が直撃する。モコ助は数メートル弾き飛ばされた。
よろけつつも、すかさず立ち上がろうとするモコ助。ブルブルと身体を震わせ、モコモコの毛にまとわりついた砂を飛ばした。しかし、モコ助は相当なダメージを負った様子で、全身の痛みに耐えるように歯を食いしばっている。
戦況は明らかに悪かった――
*
「おい。また会ったな」
と、ノボルはほとんど真横からした声に驚いた。ユウリとサトミのデュエルに意識を集中させていたため、近づいてくる人影に気付かなかったのだ。
それは、クレイジークレバーのひとりだった。
「お、おまえは……」ノボルが眉根を寄せ、相手の顔を検分するようにジロジロと見た後、「誰だっけ?」と、とぼけた調子で言うと、クレイジークレバーは盛大にズッコケた。
「誰だっけじゃねぇよ! お前の記憶力はアメーバなみか!」
「そ、そんなこと言われても、本当に覚えてないんだ」
クレイジークレバーは「はぁー」と大きなため息を吐き出した後、「こんなやつに負けたなんてな……」と項垂れた。その後、顔を上げ、ノボルをひと睨みして言った。
「バットだよ。コードネーム、バット。お前のお仲間の嬢ちゃんをデュエルでボコッた……」
「あ!」
ノボルはバットの発言を途中で遮った。
「僕に負けた」
「都合の良いところだけ思い出すな!」
ふたりがそんな3文ノリツッコミを繰り広げていたところ、
「あ!? バットじゃないの!」
横からサチが会話に参加した。
「お、噂をすれば。お前は俺様に盛大に敗北を喫した、おてんばデコ自信過剰娘!」
「お、おてんばデコですって!?」
サチが目を剥く。
「下らない減らず口は健在ね。ふん。あんただって、奇問を出題して偉い気になってる勘違い野郎じゃない!」
「ち、イチイチ癇に障る女だぜ。いいぜ、もう一回やるか? お前のその折れ損ないの鼻、今度こそしっかりへし折ってやるぜ」
「いいえ」
と言ってサチが視線を動かした先にはノボルがいた。
「あんたのオハコは奇問でしょ? それなら、こっちにはうってつけのメンバーがいるわ」
「え……」
ノボルは一瞬固まり、
「もしかして、僕?」
自らを指さして引きつった笑顔を見せた。
サチが静かに頷く。
「ハッハッハッハ!」
バットが高笑いする。
「どう考えてもあんときのはまぐれだろ。解いた本人も、何故解けたのか分かってなかったじゃねぇか! まぁ、いいよ。まぐれは二度はねぇ。どっちが賢いか、しっかり決めようじゃねぇか」
「い、嫌だよ。僕、そんな……」
ノボルは自分の顔の前で両手を振って全力で拒絶を表明するが、サチのひと睨みによってシュンとした。
「は、はい。やります」
「ふん、大好きな女の子の言いなりかよ。カッコ悪りぃなぁ」
「な、なんだと!」
バットの挑発にいともたやすく乗るノボル。
バットは右手の拳を前方に突き出した。
人差し指にはめられたデュエルリングが輝く。
「単問相互出題。科目は算数。デュエルスタディー!」
ノボルも慌てて右手の拳を突き出す。
互いのデュエルリングが共鳴するように発光し、デュエル開始の一連のエフェクトが空中に巻き起こる。
次いで互いのラーニングアニマルが姿を表す。バット側はコウモリのルーセット、ノボル側はカピバラ(名前はまだない)だ。バットのルーセットがちょこまかとあたりの空間を飛び回る一方、ノボルのカピバラは眠たそうに目をしょぼつかせている。
ノボルは震えた。無論、武者震いではない。ただただ怯えているのだ。とんでもないことになったと思っているのだ。しかし、時すでに遅しである。
(くそ、こうなったらやるしかない! よくわからないけど、僕は一度バットに勝ってるんだ。今度もきっといける!)
ノボルは自分の自信よりも、(記憶がおぼろげな)過去の戦績という客観的事実にすがって、みずからを奮い立たせた。その実、心中はほとんど破れかぶれ状態だった。
ノボルとバットが各々のウィンドウを指で操作する。
サチもウィンドウを開いた。
【周囲が200mの池の周りに4m間隔で木を植えるには、何本の木が必要か答えよ】
「って、ノボルあんた! これ、あんたとのデュエルで私が出題したまんまじゃない!」
「だ、だって! ぼ、僕、ぜんぜん勉強しないから、そんなに問題を知らなくて……」
「はぁ……」サチは大きなため息をつくも、ハッと何かに気付いたように目を見開いた。「そうよ! ノボル、あんたが出題した問題なんて、この際どうだっていいのよ!」
ノボルはポカンとした。
「だぁかぁらぁ!」サチが苛立ちをあらわにする。「バットが出す奇問をいともたやすく解いてしまえば、きっとかなりの得点が入るに違いないわ! こんなへなちょこの出題じゃバットも正解するでしょうけど、ノボルの解くスピードと解答の質によっちゃ、まだ勝ち目があるわ!」
「で、でも、僕そんな奇問なんて解けるはず……」
「つべこべ言わず、解く!」
「は、はいぃ!」
慌ててウィンドウを操作するノボル。
サチも自身のウィンドウを操作する。
「さて、バットのやつ、今度はどんな妙ちくりん問題を出してきたのかな?」
しかし、サチの表情は固まり、みるみる血の気が引いていった。
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