二人姉妹の恋愛事情〜騎士とおくる恋の物語〜

みぃ

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第53話

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森で怪我をして帰ってきたレティシアは、夕方帰って来たソフィアに回復魔法で治してもらい、次の朝にはいつもの元気な姿で昼の営業の準備をしていた。



「お姉ちゃん、昼の営業の準備おわったら、私ロベルトさんに出す昼食とケーキ作り始めるね」



「レティ、もう残りの準備は私がやっておくから、貴女はロベルトさんに出す料理に専念して良いわよ」



「お姉ちゃんありがとう!」



レティシアは少しづつソフィアに料理を習っている内の一番上手に出来るようになった料理をロベルトに出す予定だが、ロベルトに食べてもらいたいのは食後のケーキだ。

前から何度も作って最近やっと人に出せる位上手になったケーキをロベルトに一番先に食べて欲しかった。いつも森へ行くときお菓子を作って持っていってはロベルトが喜んで食べてくれていたから、このケーキも早く食べて欲しかったのだ、持ち歩けないとロベルトに言ったが持ち歩けない訳ではない、ただ外で食べるようなケーキではない為いつか食べてもらおうと機会をうかがっていたのだった。



あわただしく料理をするレティシアにソフィアは手伝おうかと声をかけるがレティシアは頑なに断った。



「お姉ちゃん、これは私がロベルトさんにお礼がしたくて料理を

作っているんだから、私が作ったご飯とお菓子を出さなきゃ意味がないんだよ!」



「わかったから、そんなにむくれた顔しないの」



「むー」



ソフィアは心配しながらも口や手を出してはいけないと、昼の定食の準備をしながら隣で黙って見守っていた。

レティシアは習った通りに次々とロベルトに出す料理の下準備をし、あとは焼くだけになった。



昼の営業が始まり、レティシアは普段通りに接客をしているつもりでいるが、ソフィアから見るとなんかソワソワして動きがぎこちない。レティシアは心のどこかで昼営業のあとに来るロベルトのことが気になっていたからだろう。



「レティ、ラストオーダの時間になったし、今日はもうお客様がいないからお店しめるわね。レティもあと少しでロベルトさん来るんでしょ?そろそろレティももう仕上げに入らないと」



「はーい、もうそんな時間?早くしなくっちゃ!」



レティシアは慌ててロベルトに出す昼食とお菓子の仕上げを始めた。



「いや~時間ないー」



ロベルトが遅れて来ることを願いながらレティシアは腕を動かした。あと少しで2時になろうかという時、店のドアが開きドアベルの音が店内に鳴り響く。



「こんにちはー」



「いらっしゃいませ、ロベルトさん昨日はありがとうございました」



「レティシアさん足の具合いかがですか?」



「お姉ちゃんに治してもらって、もう大丈夫です!ロベルトさんお席にどうぞ」



「良かったです、では失礼します」



ロベルトを席に案内案内すると、レティシアは少し待ってて下さいと言って厨房へと戻って行った。

ロベルトが待っていると、階段から人が降りてくる音がする。



「あらロベルトさん、いらっしゃいませ。昨日はレティシアを助けて頂いてありがとうございました、抱っこして森から帰って来るの大変だったでしょう?」



「いえ、大変では…。こちらこそレティシアさんを守ることが出来なくてすみませんでした」



「ロベルトさんのせいじゃないわ、レティの怪我なんてしょっちゅうだもの。今日はレティシアが張り切って全部作ったのよ。ロベルトさんごめんなさい、来て頂いて直ぐなんだけど私は用事があって出かけなきゃいけないの」



ソフィアはロベルトににっこりと笑って、「二人きりになっちゃうけど、ロベルトさんゆっくりしていってね」と言って出かけて行った。



「ロベルトさん、お待たせしました。あれ?今お姉ちゃん居ませんでしたか?」



「ええ、今挨拶して頂いて、ソフィアさん出かけられましたよ」



「そうなんですね、出かけるなんて言ってたかな?」



ロベルトはソフィアに自分の気持ちがばれている気がしたが、今はその気遣いに甘えておこうと思った。



「ロベルトさん、今日は来てくれてありがとうございました」



「お言葉に甘えて、来させてもらいました」



レティシアは手に持った料理をロベルトの前に置き、説明をする。



「今日はお子様ランチならぬ、大人様ランチです!メインはビッグドードーのケチャップチキンライス入りオムライス、ウサギさんウインナー、黒豚さんベーコンが入ったナポリタンスパゲッティとサラダです。本当はハンバーグもあったんですが少し焦がしちゃって…また今度ちゃんと出来たときにお出ししますね」



ハンバーグを失敗して、レティシアはしゅんとした。



「少し焦がした位ならかまいません、レティシアさんの作ってくれたハンバーグ是非食べさせて下さい」



「えっ、良いんですか?」



「はい」



ロベルトはレティシアが自分の為に作ってくれたものなら焦げなど気にもならなかった。



レティシアは恥ずかしそうにハンバーグをロベルトに出す。



「美味しくなかったら残して下さいね」



「大丈夫ですよ、いつもレティシアさんの作った料理は美味しいのですから。今日はどの料理も美味しそうですね、オムライスにハートのケチャップが可愛くて食べるのが勿体ないです」



「ハート…」

しまった!いつもお姉ちゃんが出してくれるオムライスにケチャップでハートが書いてあるから私も書いちゃったよ。頭の中であわてるレティシアは自分のやらかしたことを誤魔化すようにロベルトに他の料理の説明をする。



「このナポリタンスパゲッティ、黒豚さんのベーコンが入ってるんです。お姉ちゃんが団長さんに何か作るって冷蔵ボックスに入れてたから少し貰っちゃいました」



「団長へのベーコン…使ってしまって大丈夫ですか?」



「大丈夫、大丈夫」



「ではその黒豚さんベーコン入りナポリタンスパゲティから頂きます」



ロベルトは器用に皿の淵を使い、フォークでスパゲッティを巻いていき口に入れた。



「美味しいです! トマト味のスパゲッティ…懐かしいです、子供の時によく母が作ってくれたのを思い出します…。

凄いですね、ソーセージがウサギの形にカットしてある。

ハンバーグも美味しそうです、焦げてる様には見えませんけど」



「裏が…ちょっと食べてみて無理そうなら直ぐに止めて下さいね」



「はい。では、いただきます」



レティシアはドキドキしながらロベルトがハンバーグを食べている姿を見ている。ロベルトは恥ずかしそうにレティシアに言った。



「レティシアさん、そんなに見られたら恥ずかしいです。ハンバーグは香ばしくて美味しいですよ、焦げなんて気になりません。レティシアさんも早く一緒に食べましょう」



「あっごめんなさい、焦げが気になってしまって…。じゃあ、私も一緒にいただきます」



レティシアとロベルトは、騎士団の森の討伐のエピソード話やお互いの失敗談、暴露話に花が咲き、いろいろと会話しながら食事を楽しんだ。

食事を終えてあとは食後のデザートだけになった。



「ケーキを仕上げるのに少し時間がかかるので、先に何か飲まれますか?」



「ありがとうございます、では紅茶を頂けますか」



「はい、直ぐにお持ちしますね」



レティシアはお茶の準備をしに厨房へ行き、お湯を沸かしている間に焼くだけになったケーキをインベントリから取り出しオーブンに入れる。

お湯が沸いたのでお茶を入れてロベルトへ持って行くと直ぐに厨房へ戻った。

ケーキが焼ける前に添えるものを準備しているのだが、ハンバーグの様に失敗しないようにとレティシアは焦っていた。



「ケーキ焼きすぎないように注意しなきゃ…」



ピーピーピー



ケーキが焼けて甘い匂いが店の中に広がる。



「チョコレートの香りがする、この前のザッハトルテも美味しかったですが今日のケーキはどんなのでしょうか、楽しみです」



ロベルトは想像しわくわくしながらレティシアが来るのを待っている。



レティシアは無事にケーキが焼けて、最後の仕上げをして直ぐに盛り付けて急いでロベルトへと持って行った。



「お待たせしてすみません、これがロベルトさんに食べて欲しかったケーキ、フォンダンショコラです!」



フォンダンショコラにホイップクリームを添えて、別のガラスの器にはバニラアイスがのっていた。



「熱々のケーキに冷たいアイスがとても美味しくて、いつかロベルトさんに食べて欲しかったんです」



成功して嬉しかったレティシアは満身な笑みでロベルトに話しかける。そんなレティシアを見て、ロベルトの心は射抜かれた。



「ありがとうございます、では早速いただきます」



ロベルトが大きめのスプーンでケーキを切ると、中からとろりとチョコレートソースが流れてくる。



「わっ、中からチョコレートソースが出てきました」



ロベルトはスポンジとソース、バニラアイスをスプーンに乗せて、大きく一口で口に入れた。



「ケーキが熱々でアイスが冷たくて、溶けたチョコレートソースが口の中で合わさって、ものすごく不思議な感じですがとても美味しです」



「良かった!」



ロベルトの美味しそうに食べる姿を見ながらレティシアは嬉しそうにニコニコ笑う。



「…レティシアさんの恋人になる人は幸せ者ですね」

ロベルトはレティシアと共にいれる幸せからか、するりと口から言葉が漏れ出していた。



レティシアはそんな呟きを聞いて、ふと頭の中にロベルトと恋人同士になった情景が浮かんだ。

あれ?なんでだろう自分の恋人が出来たのを想像した時に自分の隣にロベルトさんがいるの。

あれ…私、もしかしてロベルトさんのことが好きなのかな?

もしかして私、ロベルトさんと手を繋いだ時のドキドキも恋してたからなの?



レティシアは自分の気持ちに気づいた衝撃からかフォークを落としてしまった。

レティシアは焦って床に落ちたフォークを拾おうとしゃがむが慌てたせいで机におでこを打ちつけてしまう。



「痛っ!」



「大丈夫ですか!?」



ロベルトが心配してレティシアに近づき、打ちつけたおでこを見る為指でそっと前髪を掬い上げる。



「あぁ、少し赤くなってますね、早く冷やさないと」



ロベルトの顔が近すぎてレティシアは心の中で悲鳴をあげる。



(ひぇっ!?、お顔が近すぎるよロベルトさん!!)



「あっ、わ…私、冷やしてきます」



レティシアは落ちたフォークを拾い、慌てて厨房へとパタパタと走って行った。

厨房で、おでこを冷やしながらレティシアは考える、



(と…とりあえず今は平常心を装ってロベルトさんに接しよう)



レティシアが席に戻ると、ロベルトが心配そうに声をかけてきた。



「レティシアさん、おでこ大丈夫ですか?」



「すみません、もう大丈夫です。あっ!ロベルトさん早く食べないとケーキが冷たくなっちゃいます」



レティシアは恥ずかしさを誤魔化すようにロベルトにケーキを薦め、自分も食べ始めた。



ケーキもあと少しで食べ終わろうという時、レティシアはロベルトの口の脇にクリームが付いているのに気がついた。

レティシアは自然と手を伸ばし、ロベルトの口の脇についたクリームをレティシアが指で掬い、パクっと咥えてしまった。



ロベルトはレティシアが自分の口の脇についたクリームを指に入れた姿を見て

(指を咥えてるレティシアも可愛い…はっ、そのクリームは自分に付いてた物)



「っ…」

ロベルトは驚いて顔が赤く染まる。



そんなロベルトの様子を見てレティシアはまた自分がやらかしたことに気が付き、しどろもどろに言い訳を口にする。



「あっ…ごめんなさい!つい、いつもシャルちゃんにしてしまう癖で…ロベルトさんにもしてしまいました!」



「ははっ、そうなんですか?レティシアさんは王女様と、とても仲が良いのですね。

この前自分もレティシアさんに同じ事をしたのですからおあいこですね」



ロベルトは心臓がバクバクしていたが、自分の気持ちがばれないように平常心を装って返事をかえした。



「あはははっ」



レティシアは笑って誤魔化したが、いつもよりも鼓動が早くなり心臓のドキドキがなかなか収まらなかった。





いつの間にか空になっていた紅茶を入れ直し、レティシアはロベルトの残りの休みは何をするのか気になったので、ロベルトにティーカップを渡しながら聞いてみた。

「ロベルトさん、残りのお休みはどうされるんですか?」



「明日は買いだめしてた本を読もうと思ってます、ただ体が鈍るといけないので明後日は森で昨日の復習をしようと思ってます」



「そうなんですね、また今度お休みが合ったら森に誘って下さいね」



「もちろんです、昨日の特訓の続きをレティシアさんにお願いしないと」



「ロベルトさんなら直ぐにもう1段階上の特訓に入る事ができそうですね」



ロベルトは何かデジャブを感じたが、レティシアに聞き返す



「…まだ上があるのですか?」



「昨日やった特訓までしか私はしたことがないんですが、お父さんがリカ兄様にしてた特訓があるんです。私もしたかったんですが、お母さんとお姉ちゃんに止められて…危ないからって、でもロベルトさんならきっと出来ますよ!」



「リカルド様がされた特訓ですか、早く出来るように頑張ります」



「頑張って下さい、いくらでも特訓に付き合いますから!」



「はい、よろしくお願いします」



ロベルトはリカルドにいつか勝つ為にさらに頑張らなければと決意した。

「レティシアさんは、前に剣をリカルド様に教わったと言ってましたが、昨日の特訓を剣だけでされたんですか?」



「最初は魔法も使いながらでしたが、途中からは剣だけになりました。でもつい使っちゃうんですよねー」



「魔物が沢山一度に来られたら使ってしまいますよ」



「そうなんです!でも使うとその日のおやつが抜きになるので頑張るしかなかったんです」



「はははっ、おやつ抜きですか?それは頑張らないと」



「もう酷いんですよ、リカ兄様ったら私のおやつを目の前で美味しそうにぱくぱく食べて!」



「リカルド様、容赦無いですね」



「本当ですよねー」



楽しい会話を遮るように4時を知らせる鐘の音が鳴り響く。



「ああ、もうこんな時間に。楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまいました」



「私も楽しかったです」



「では、名残惜しいですが、そろそろ私は失礼します」



「はい」



二人が店の外へ出ると、ロベルトがレティシアにお礼を告げた。

「今日はありがとうございました。レティシアさんの作った料理どれも美味しかったです、ご馳走様でした」



「来てくれて嬉しかったです。またお店にもご飯食べに来て下さいね」



「はい、では失礼します」



「ありがとうございました」



そんな二人が店の前で話す姿を、遠くから見ている影があることを二人は気づかないでいた。



ロベルトが宿舎へと戻り、レティシアは店に入りドアを閉め、ため息をつくとしゃがみこみドアに背を付け寄りかかった。

やらかしたわ…つい癖でって…何やってるの。

気持ちに気づいたばかりでパニックになってたのかな?

レティシアは両手で頭を抱えて苦悩していると、突然店のドアが開きバッタンとレティシアは後ろへと倒れた。



「わっ、あれお姉ちゃん、おかえりなさい」



レティシアが転がったまま上を見上げるとソフィアがレティシアを見下ろしていた。



「ドアの前で何やってるの?危ないわよ」



ほらほら、とレティシアの手を取り起き上がらせると、ソフィアがレティシアの顔を見て心配そうに声をかける。



「どうしたの?ずいぶん顔が真っ赤だけど、何かあったの?熱でもあるのかしら?」



「あ…う…、熱はないよ、大丈夫」



「本当に?でもレティ何か変よ」



「お姉ちゃんあのね、私…ロベルトさんの事が好きみたいなの…」



真っ赤な頬を両手で押さえながらレティシアはソフィアに告白した。



「まぁ!!レティったらそうなのね、で告白はいつするの?」



「告白って…今さっき気づいたばかりだよ、まだ無理だって…」



「あら、レティったら。早くしないと他の女性にとられちゃうわよ」



「うっ……」



「後悔しないようにね」



「…うん」


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