二人姉妹の恋愛事情〜騎士とおくる恋の物語〜

みぃ

文字の大きさ
上 下
50 / 64

第47話

しおりを挟む


(今年もこの時期がやってきた)



今日、私は書類を第一騎士団長に提出する為に王城へと足を運んだ。



毎年ガルシア王国では秋に非公式だが、王都に駐在している騎士達で行われる武道大会が開催される。



この武道大会では剣でも魔法でも何でもありのトーナメント戦になっている。



トーナメント戦を勝ち抜き、優勝した者には第一騎士団長と戦う権利と、報奨として後日一週間の休みが与えられるという催し物だ。



騎士団長はトーナメント戦に不参加になっているが、武道大会が始まる前のデモンストレーションで第二騎士団と第三騎士団の団長同士が打ち合いをする。



私が今持っている書類は、その武道大会についての書類である。



「少し近道するか」



第一騎士団長の執務室へと近道する為に中庭の回廊を歩く。

すると中庭から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

ふと、その声がする方を見ると木と木の間から、ガゼボにいる三人の姿が目に入った。



「レティシアさん…」



そこにいたのはレティシアさんと、第二王子のライムンド殿下と、王女のシャルロット殿下であった。

三人はガゼボで楽しそうにお茶会をしているようだ。

王族が一般の人間が入ってこれる中庭でお茶会など危ないだろうと思ったが、周りを魔力探知で探ってみると何人もの騎士達が影から警備しているので問題はなさそうである。

少し前までは使えなかった魔力探知は、レティシアさんから習った魔力操作のおかげで、細やかな魔力の使い方を会得し使える様になった魔法の1つだ。

この魔法のおかげで周りの情報収集が楽になった。



「それにしても…」



レティシアさんとライムンド殿下の距離がとても近く、胸の奥がざわめいた。

レティシアさんは前に、恋人はいないと言っていたが、本当はライムンド殿下と付き合っているのではないかと錯覚してしまう程の距離感だ。





「敵は手強そうだ」









私は、レティシアさんの事が好きだ。











初めて会った時から好ましい人だとは思っていて、可愛らしい妹みたいだと思い接していた。

だが、オークの事件があってからだろうか、一人の女性として尊敬する様になった。

もう駄目だと思っていたその時、颯爽と助けに入り戦いだした彼女の姿が今でも脳裏に焼き付いている。



王へと謁見した際、彼女達が英雄様方の娘だと聞いて驚いた。

しかしそんな事よりレティシアさんを愛おしそうに見つめているライムンド殿下が気になった。



そしてライムンド殿下の色を身に着けているレティシアさんを見ると胸が苦しくなった。

腰を抱き寄せられエスコートされる姿を見たくないと思ってしまった。

今思えば、その時にはもうレティシアさんの事が好きだったのだろう、だがまだ自覚はしていなかった。



この想いが恋だと気が付き始めたのは、レティシアさんと共に狩りに行った時だろうか。

レティシアさんに情けなくも自分の弱音を吐いてしまったあの時。

不甲斐ない自分にレティシアさんは慰めの言葉だけで無く、これからの事を考え、そして私の為に特訓に付き合ってくれると言ってくれた。

レティシアさんに得など無いだろうに。



レティシアさんの特訓はとてもハードだったが、確実に自分が強くなっていると実感出来る程に上達した。



使えないと思っていた闇魔法も、今では息を吸うように使いこなせる。



何回か狩りを共にした時、どうしてここまで私に良くしてくれるのか聞いてしまった事があった。



その時、彼女はこう答えた。



「どんな事があろうと、ロベルトさんに怪我なく帰ってきてほしいからですよ!

それに私、街の皆の為、仲間の為に強くなろうとしているロベルトさんの事とても尊敬します」



裏表のない、にっこりと笑うレティシアさんに、私は彼女が好きだと自覚したのだ。



私は彼女に自分の事を好きになってもらいたい。



だが、ライムンド殿下があからさまに好きだとアプローチしているのにレティシアさんは、それに気が付いていない様に感じる。



もしかしてレティシアさんは恋愛に鈍感なのでは無いかと思い、少しずつ距離を縮めていこうと思った。



そう思っていた時、建国祭で一人彼女が屋台を見て周っている所に出くわした。

普段着とは違う、綺麗に着飾っている彼女に胸が高まった。

そして、このまま一人にしていては飢えた男共の格好の餌食だと思い、一緒に屋台を周ろうと提案し、どさくさに紛れて手を繋ぎ、赤いクリスタルローズを彼女髪にさした。

これで少しは意識して貰えないだろうかと思ったが、レティシアさんはいつも通りのレティシアさんだった。



少しも進展していないが、レティシアさんは楽しそうにしていたので良しとした…。



「だが…うかうかしてられない」



ライムンド殿下も隙あらばレティシアさんにアプローチを続けている。



今もそうだ。

ガゼボでレティシアさんを愛おしそうに見つめ、そして彼女の口元に付いたクリームを指で拭ったのだ。



流石のレティシアさんも、ライムンド殿下を意識したかと思ったが、杞憂だったみたいだ。

レティシアさんは、ライムンド殿下に普通にお礼を言って、何事も無かった様にまたケーキを食べだしたのだ。

あれ位のアプローチではレティシアさんには通じないみたいなので、これからはもう少し積極的にいってみる事にしようと決意した。



立ち止まっていた足を踏み出し、第一騎士団長の執務室まで向かった。

書類を無事に提出し、さっさと第三騎士団まで戻ろうと廊下を歩いていると、前から第二騎士団の副団長であるパブロ・アロソンが歩いてきた。



「なんだ、ロベルト君じゃないか」



「アロソン様、ご無沙汰しております」



若干……いや、とても苦手な相手なのでやり過ごそうと思っていたのに、相手から話しかけてきた。



「つれない挨拶だな。君も武道大会の書類を届けに来たんだろ?

今年も決勝戦で戦えるのを楽しみにしているよ。

まぁ!勝つのは、この私だがな!せいぜい、私が退屈しないように精進することだ」



声高々に宣言する姿を見て心の中で溜め息をついた。

腕は確かなのだが、侯爵家の三男というだけあって尊大な話し方が鼻に付く人物であり、何かと私に突っかかって来るので相手にしたくない人物No.1だ。



そして、奴は私とすれ違う際に耳元に低い声で囁いた。



「お前に勝って、竜騎士に相応しいのはこの私だと王族の方々に知らしめてやるよ」



パブロ・アロソンは竜のパートナーに選ばれなくて余程プライドが傷ついたのだろう、その言葉には憎悪が篭っていた。



言いたい事を言って、廊下をスタスタと歩いていく彼を横目に見る。

確かに彼は強い、私は一度も勝てたことがない、毎年決勝戦で負けてしまうのだ。



「だが…今年こそは」



去年よりはレティシアさんの特訓のおかげで強くなっていると確信している。

だが、油断は禁物だ。



「レティシアさんが鍛えてくれたこの力…存分に発揮出来るように策を練るとしよう」



あの男に勝てなければ、一生レティシアさんに勝つ事など出来ないだろう。

レティシアさんも自分より弱い男性に告白されても………いや、きっと強さなど気にしないのだろうが、私が嫌だ。



少しは彼女に格好いいと思って貰えるようにより一層努力を積もう。



そう心に誓い、武道大会まで時間があれば森へ向かい魔物と戦う日々が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜

なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...