二人姉妹の恋愛事情〜騎士とおくる恋の物語〜

みぃ

文字の大きさ
上 下
17 / 64

第15話

しおりを挟む
月の始め、ポカポカと春の日差しが温かい日【まんぷく亭】を臨時休業した姉妹の朝は早かった。



今日は森へ姉妹で春の食材を調達しに行く日であった為、何時もより早い時間に起床したのだった。

準備を終えたレティシアは姉の部屋へ向かいドアを開けると、ソフィアの従魔であるキューちゃんがお出迎えしてくれた。





「おはよう、お姉ちゃん!キューちゃん!」



「あら、おはようレティ」 



「コン!」



返事をしたソフィアの真似をする様に九尾の尻尾を振って鳴き声を上げたキューちゃんの頭をレティシアはヨシヨシと撫でる。





「今日は凄くいいお天気だね」





「そうね、良かったわ」





「うん、今日のお姉ちゃんの洋服似合ってるね!」



今日のソフィアの服装は最近流行り始めている八分丈の若草色のスカーチョと、白いブラウスに、スカーチョとお揃いの色の前開きベスト。

ベストには蔦と花の刺繍が施されていてお洒落なデザインだ。

靴は歩きやすい踵の低い黒のショートブーツを履いている。

後はインベントリの隠蔽の為にマジックバックのウエストポーチを着けている。



「ありがとう、レティもよく似合ってるわよ」



「本当!?狩りに行く服新しく新調したんだ」



レティシアの新しく新調した服は、ボウタイの白いブラウスにキャメル色のショートパンツ。桜色の前開き膝丈ロングベストはAラインなので後ろから見るとワンピースの様に見える。

靴下は白のニーハイで脇にレースの装飾が施されており、靴は焦げ茶のショートブーツ。

腰には双剣が装備してあり

斜めがけのカバンは姉と同じくマジックバックである。



二人が無限収納である時空魔法が使える事を冒険者ギルドの職員には知られているが、使える者が少なくとても重宝される魔法の為、なるべく知られる人間は少ないほうが良いので、こうして隠蔽のマジックバックを持ち歩くのだ。



時空魔法に限らず貴重な魔法が使える人間は人攫いなどに合いやすい為の自衛である。



レティシアは攻撃魔法が得意で運動神経も良いので、反撃も逃げる事も出来るが、ソフィアは攻撃魔法よりも支援系魔法や治癒魔法という繊細な魔法を得意としており、力も弱く逃げ足も早く無いのでバレない方が安全なのだ。





「今日はキューちゃんも連れて行くんだね」



「コン!」



「えぇ、何時も家の中にいては退屈でしょうし、それに今日は森の少し深い所まで行くって言っていたでしょ」



「そうだね!キューちゃんがいた方が安全だね」



純白の狐のキューちゃんは治癒魔法増幅とMP回復の魔法が得意で、ソフィアとの相性がとても良いのだ。

ソフィアの治癒魔法だけだと欠損や瀕死まで治せないのだがキューちゃんの増幅魔法が加わると、死んでさえ居なければ治す事が出来る。



「森に着くまでは私の影の中に居ててね」



「コンコン!」



従魔は基本、影の中で主の魔力を糧にして生きている。

そして主に呼ばれた時に姿を表すのが一般的と言われているのだが、ソフィアの従魔であるキューちゃんは全くと言っていいほど影の中に入らずに、ソフィアの布団の上で1日寝ているのだ。



「私も森に着いたらあの子達呼ぶから、キューちゃん一緒に遊んであげてね」



「コン!」



了解とばかりに鳴いて嬉しそうに返事をしたキューちゃんはソフィアの影の中に入っていった。







準備を終えた姉妹は家を出て直ぐにある西門へと向かった。



門を出て少し歩くと西の森に辿り着く、青々と茂った草花が暖かな光を浴びて元気に咲いている。



「もうすっかり春だねー!色んな植物が生えてるよ」



「そうね、春にしか取れない山菜は多めに収穫しようかしら。山菜の天ぷらが食べたいわ」



「うん、今日は沢山食材を調達しようね!」



「先ずは浅瀬で山菜を取りましょうか、その後に西の森の中腹でキノコを取って、最後に北の森の入り口付近で魔物を狩りましょう」



「そうだね!泊まるのは西の森の中腹で良い?とりあえず魔物避けの薬草は持ってきたから大丈夫だよ」



「えぇ、そうしましょう」




森の中を歩いていると木と木の間に30センチ程の草が群生して生えていたので、ソフィアがサーチ魔法をかけると草と草の間にお目当ての山菜がいくつも生えていた。



「レティ!今年は豊作ね」



「そうだね~お姉ちゃんの天ぷら楽しみ!」



「ヨモギも取って帰って草餅も良いわね」



「草餅大好き!いっぱい取って帰ろう!」



二人は何を作るか、何が食べたいだとか山菜を摘みながら話しに華をさかせていた。

二人の側で影から出した四体の妖精達とキューちゃんが仲良く遊んでいる。



「ふふふ、みんな楽しそうね」



「本当だね、久しぶりに皆んなと来て良かったね」



そう楽しそうに会話をしているレティシアはふと、以前から姉に聞きたかった事を思い出した。



「ねぇねぇ、お姉ちゃん」



「どうしたの、レティ?」



「ずっと聞きたかったんだけど…お姉ちゃんって団長さんの事どう思ってるの?」



「あら、急にどうしたのよ」



「だって…お姉ちゃんってば団長さんがお店に来ると何時もより嬉しそうだし…この前は一緒にお出かけした時の事、楽しそうに話してたし」



(主に抱き着いた時の素晴らしい胸筋の話だったけど)とレティシアは心の中で呟いた。



「ルイスさんの事はとても良い人だと思ってるわよ?」



「恋愛感情は?」



レティシアの問にソフィアはルイスの事を思い浮かべた、すると胸がキュッと締め付けられる感覚に襲われソフィアは頭に?マークを浮かべた。

一体今の感覚は何だったのだろうか、とソフィアは心の中で思ったが分からなかった。



「んー………好きかどうかはまだ分からないわ、でも」



「でも?」



「ルイスさんの筋肉はとても好きよ♡」





相変わらずブレないソフィアだった。





そんなこんなでソフィアとレティシアも楽しく会話をしながら採取をしているとあっという間に沢山の山菜が集まった。



「レティ、そろそろ場所を移動しましょうか」



「はーい」



別の場所に移動する為、レティシアは妖精達とキューちゃんを呼び戻そうとすると突然妖精達がレティシアの方まで飛んできて服をツンツンと引っ張った。



「どうしたの?」



「キュー」



「ん?あっちがどうかしたの?」



妖精達が指を指す方向を見るが、特に何も見えない。



「あらあら、何かあるのかしら?ちょっと待ってね今、魔法で調べるわ」



「うん、お願いお姉ちゃん」



ソフィアは妖精達が指差す方向へサーチ魔法を展開し、何かあるのか確認すると



「まぁ!大変!」



「お姉ちゃん!?どうしたの?」



急に声を上げた姉に驚いたレティシアだが、ソフィアは慌ててレティシアに説明する。



「この先で魔物の群れが人を襲っているわ!」



「え!?ここまだ森の浅瀬だよ?魔物の群れがいる訳ないのに」



「そうだけど、本当にいるのよ!中型の魔物が50体以上はいるわ、人も十数人程いるけど…サーチで見る限り戦えているのは二人だけだわ」



「そうなの!?不味いよね、取り敢えず見に行ってみよう!」



「えぇ、そうしましょう」





ソフィアはキューちゃんを影の中にしまう。



二人は慌てて森の中を駆けていく、走るのが苦手なソフィアの手を繋ぎレティシアと4体の妖精達が先導する。



すると前から人が走ってきたのでソフィアとレティシアは警戒しその場に立ち止まった。





「誰か来たね…」





「そうね」







それは………まんぷく亭に時々食べに来てくれる第三騎士団の新人騎士だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

処理中です...