二人姉妹の恋愛事情〜騎士とおくる恋の物語〜

みぃ

文字の大きさ
上 下
11 / 64

第10話

しおりを挟む



洋服を購入し店を出た二人は街を歩く、すると新しく出来た武器屋にレティシアの目線が奪われた。



「どうかした?」



「ううん!何でもないよ」



新しい武器屋に気を取られるが今は姉と出掛けているからまた今度一人の時に来ようと思い返事をした。

だけどそんな妹の心の中など分かりきっているとばかりに姉は言う。



「あら、新しい武器屋さんが出来てたのね…レティ気になるんでしょう?私は広場の噴水前で休憩して待ってるから見に行ってらっしゃい」



「え、でも」



「ほら、荷物も持っとくからね」



「ありがとう!お姉ちゃん、ちょっと行ってくるね」



「ゆっくりで良いわよ」







レティシアの持っていた荷物も持ちソフィアは近くの広場にある噴水の前まで歩きベンチへと腰掛けた。



「ふう…良い天気ねぇ」



冬だが風もそんなに無く日差しが温かく心地よい。



レティシアを待つ間時間を潰そうと鞄から取り出す様に、こっそりインベントリの中から本を取り出した。

ガルシア王国の南隣の国である大国フェニーチェ帝国から入ってきた冒険小説が最近のソフィアのお気に入り。



「さて、続きを読みましょう」



ペラペラと小説を読みすすめていると、ふと目の前に影が落ちたのに気がついた。

レティシアが戻ってきたのかと思い顔を上げるとそこにいたのはガラの悪い男達だった。

冒険者らしき風体だが、見る目がニヤニヤしていてソフィアは身体を強張らせた。





「姉ちゃんさっきから一人だな、今から俺達と遊ぼうよ」





「えっと…人を待ってるので」





知りもしない相手と一緒に遊ぶはずも無いソフィアは人が待っているからと断るのだが…





「待ってるのって女の子?ならその子も一緒に行こうよ、ってかその子今から迎えに行こうよ」



「お前いい事考えるな、そうだ!そうしようよ」





こちらの都合など一切気にしない男達





「キャッ!!は、離して下さい」





「そんな事言ってないで、ほら行くぞ」





無理やり腕を捕まれ立たされる、ソフィアが持っていた本はバサリッと地面へ落ちた。



抵抗しようにも街中で魔法を使うわけにはいかない。

ソフィアは捕まれた腕を引っ張られ連れて行かれそうになる。



街の広場の真ん中で起きた余りにも強引なナンパに

周りの人達はガラの悪い男達から絡まれているソフィアを助けたいが、強そうな見た目の男達に恐れてただ見守る事しか出来ない。



腕を捕まれ引っ張られる、足で踏ん張るが細く力の弱いソフィアが男の力に敵うわけなく、ズルズルと広場から連れ出されてしまった。





どうすれば良いのか分からない恐怖で声も出ないソフィアはギュッと目を閉じ誰か助けてと心の中で叫ぶ。









すると聞き慣れた勇ましい声が聞こえてきた。











「何をしている!」


瞼を開け声の聞こえる方に目を向けるとそこには、数人の警邏隊と騎士の服を身に纏ったルイスの姿が見えた。





「騒ぎを聞きつけて来てみればお前達、嫌がる婦女子を無理やり連れ出そうとするとは言語道断!」





「チッ!クソッ警邏隊だ、お前達逃げるぞ!」





「逃すか!拘束しろ!」





走り逃げ出そうとする男達を次々に警邏隊が捕まえて、抵抗する腕に縄を巻き付けて拘束していく。



助かった事にソフィアは身体の力が抜け地面へ座り込んでしまった。

そんなソフィアにルイスは慌てて駆けつける。



「大丈夫か!?」



ソフィアを心配する様にルイスも目線を合わすようにしゃがみこむ。

走って来てくれたのであろう、少し息が上がり額に汗が滲んでいる。





「は、い」





「それは良かった…広場で女性が質の悪い輩に絡まれていると通報があって駆けつけたのだが、まさか貴方だったとは…」





「助けて頂きありがとうございます…」





「はぁ…貴方が無事で本当に良かった、怪我はないか?」





ルイスは安堵の息を吐き怪我が無い事を確認する。





「はい、大丈夫です」





「そうか、今日は買い物だったのか?荷物は」





「あ、荷物は広場に置き去りで」





「そうか…なら俺が…」







「お姉ちゃん!!!!」







ソフィアの代わりに荷物を取りに行こうと言おうとしたルイスの声を遮るように大きな声が聞こえた。



目を向けるとそこにはレティシアがソフィアの荷物を持って駆けてくる姿が写った。



レティシアが泣きそうになりながら走ってきたのだ。

姉と待ち合わせしていた場所に行ってみたら、そこには姉の荷物が落ちており、周りにいた人達に聞いたら姉が質の悪いゴロツキに連れて行かれたと言われ
警邏隊が来たのでもう捕まったとも言われたが気が気ではなく走ってきたのだ。




「おねえ゛ち゛ゃんー!一人にしてごめんなさい」





地面に座り込んでいる姉の身体に泣きながら抱きつき一人にした事を謝るレティシアの頭を撫でるソフィア。





「レティは何1つ悪くないわ…悪いのはあの男の人達でしょ?レティが謝る事なんてないわよ」





「でも…私が」





「それに、団長さん達が駆け付けてくれて助かったのよ」





「そ、うなんだ………ありがとうございます団長さん」





「いや、職務を全うしたまでだ…それより姉君が無事で良かった」



「うん…」





グズグズと泣きながらも礼をするレティシアに表情を和らげルイスは話しかける。





「今日はもう帰った方が良い。姉君も疲れきっているだろう、今馬車を手配するから一緒にここで待っていてくれ」



「はい、ありがとうございます」





そう言ってルイスは馬車を手配しに走っていった。





「お姉ちゃん…本当に良かった」



「心配かけてごめんなさい」



「うん…団長さんには感謝しないと」



その後、用意してくれた馬車に乗り込み二人は無事に家へ帰ることが出来た。













※※※※※※※※※※※※※※※※※※※









馬車に乗った姉妹を見送ったルイスは警邏隊と共に男達を牢屋へとぶち込む為に詰め所へ連行したが

調査の結果今回の事件は強引過ぎるナンパという事で国としては男達に厳重注意だけという軽い罰則しか与えられなかった。





しかし後日聞いた話では、奴らはDランクの冒険者だったらしく冒険者ギルドは奴らの冒険者の称号を剥奪し脱退させたそうだ。

ギルドとは世界共通の独立した組織なので、余程のことがない限り国がどうこう口出す事は出来ない機関である。

余程の事とは、奴隷落ちになる程の罪を犯した時などの事であり、その場合は国の要請に従い冒険者のランクの称号を剥奪する事がある。

そんなギルドが今回国の要請も無く、罪にも問われなかった冒険者のランクの称号剥奪という重い処罰を出した事に大分驚いたルイスだった。



そして職を失った男達は住居からを追い出され、持ってる金も底をつき借金するにも銀行が貸さず、冒険者の頃に知り合いだった人間にも白い目で見られ、気がつけば王都から姿を消していた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜

なーさ
恋愛
侯爵令嬢のアーニャ。だが彼女ももう23歳。結婚適齢期も過ぎた彼女だが婚約者がいた。その名も伯爵令息のナトリ。彼が16歳、アーニャが13歳のあの日。戦争に行ってから10年。戦争に行ったまま帰ってこない。毎月送ると言っていた手紙も旅立ってから送られてくることはないし相手の家からも、もう忘れていいと言われている。もう潮時だろうと婚約破棄し、各家族円満の婚約解消。そして王宮で働き出したアーニャ。一年後ナトリは英雄となり帰ってくる。しかしアーニャはナトリのことを忘れてしまっている…!

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

処理中です...