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第7話
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【まんぷく亭】の定休日である昼下がり、姉であるソフィアは一人で街へと買い出しに来ていた。
必要な食材をこれでもかと買い込んでいたらいつの間にか両手は塞がり、買い物をしていた店の店主が心配になる程の大荷物になってしまっていた。
よいしょと、店兼自宅へと続く長い道のりを歩いていると前から頭一人分抜きん出ている長身である、男性が歩いてきたのが彼女の目に入った。
その人物は最近【まんぷく亭】常連になったルイスである。
(やっぱりいい筋肉をしているわ)とソフィアが見ていたら、彼女の視線に気が付いた団長とぱっちりと目があう。
「団長さん」
「あ、貴女はお店の」
「はい、ソフィアです。
いつもご来店ありがとうございます、団長さんも今日はお休みですか?」
いつもソフィアと店で会う時は騎士の制服をビシッと着ている為、シャツとトラウザーズの簡素な服装がとても新鮮である、そしてその簡素な服装が彼の持つ肉体美を引き立たせていてソフィアはうっとりとその上腕二頭筋に魅入ってしまっていた。
そんな事とは露知らないルイスは色っぽく微笑むソフィアにタジタジしながら返事をした。
「あぁ…そうだ」
「街へはお買い物ですか?」
「そうだ、たまには街に出るのも悪くないと思ってな…それよりその荷物の量はなんなのだ?一人で持つには重たいであろう」
ソフィアの細腕には持つのが無理があるだろう程の大荷物を目にしルイスはギョッとした、まさかマルシェからここまで運んで来たのかと驚いたのだ。
「恥ずかしながら、食材の在庫が底をついてしまって。ちょうど重たさのあるものばかりでして」
「妹君は一緒ではないのか?」
「レティにはお肉を狩ってきて貰っているから今日は一人なんです」
「そうか、肉の買い出しか。なら俺が持とう」
流石にこんなにも重たそうな荷物を持っている女性を一人にはしておけないとルイスは彼女の手から荷物をニつひょいと持ち上げる。
するとズシリとくる袋の重たさに、どれ程の量を買い込んだのだと驚くと共に尚の事放ってはいけないと心に思った。
「そんな!申し訳ないです大丈夫ですよ」
彼女が慌ててこちらに伸ばした手がルイスの目に映る、手のひらは赤くなっておりとても痛そうになっていた。
「何を言っている手が赤くなっているではないか、俺ももう帰ろうとしていた所だからついでだ。他に買うものはないな?」
「えぇ…ありがとうございます、優しいんですね」
「……紳士として当たり前の事をしたまでだ」
ルイスは少し嘘をついた、今から帰るのではなく行く最中だったのだが…何故か彼女の事を放ってはおけなかったのだ。
ルイスは今まで側によれば怖がられるか、気絶されるかだった為に女性とこんなふうに隣同士歩くことなど出来なかった。だがソフィアは厳つい見た目の彼の側でも怖がらないどころか、とても嬉しそうに笑い楽しく会話を弾ませていた。
そうやって二人楽しく会話して歩いていると結構な距離があったのに直ぐに着いてしまった。
ルイスは今まで一人で黙々と歩くには遠い距離だと思っていたのにこんなに早くついてしまった事にとても驚いた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
その日の夜
「お姉ちゃんただいまー!ごめんなさいお肉今日は不作だった」
「あらあら、おかえりなさい。そうなのね…だったら明日は卵料理にしましょうか。ちょうど卵が沢山売ってたから買ってきたのよー。後は小麦粉と砂糖も買ってきたの、ついつい安くて沢山買ってしまったわ」
「え!お姉ちゃんこんなに買ったら重たかったでしょ!?大丈夫だった?」
「えぇ、帰り道で団長さんに会って持ってくれたのよ。とても三角筋が素晴らしかったわ」
「団長さんって…最近良くお店に来てくれるよね。
…………もしかして、お姉ちゃんに気があったりしてボソッ」
「あら、何か言った?」
「うんうん、何でもないよ!(第一印象は良かったしお姉ちゃん好みの見た目だけど今度どんな人物か調べてみよう…お姉ちゃんに変な虫がついたら大変。)」
「それでね、お礼に何か作ろうと思うのだけど…レティも手伝ってくれる?」
「良いよ!ちょうど妖精達がお腹空いたって言ってたからマフィンとかどうかな?甘いのが苦手だったとき用におかずマフィンも作ろう」
「それが良いわ!おかずマフィンにはほうれん草とベーコンはどうかしら」
「うん!美味しいと思うよ、甘い方はナッツ入り作ろっと!」
「そうねー、早速作りましょう」
必要な食材をこれでもかと買い込んでいたらいつの間にか両手は塞がり、買い物をしていた店の店主が心配になる程の大荷物になってしまっていた。
よいしょと、店兼自宅へと続く長い道のりを歩いていると前から頭一人分抜きん出ている長身である、男性が歩いてきたのが彼女の目に入った。
その人物は最近【まんぷく亭】常連になったルイスである。
(やっぱりいい筋肉をしているわ)とソフィアが見ていたら、彼女の視線に気が付いた団長とぱっちりと目があう。
「団長さん」
「あ、貴女はお店の」
「はい、ソフィアです。
いつもご来店ありがとうございます、団長さんも今日はお休みですか?」
いつもソフィアと店で会う時は騎士の制服をビシッと着ている為、シャツとトラウザーズの簡素な服装がとても新鮮である、そしてその簡素な服装が彼の持つ肉体美を引き立たせていてソフィアはうっとりとその上腕二頭筋に魅入ってしまっていた。
そんな事とは露知らないルイスは色っぽく微笑むソフィアにタジタジしながら返事をした。
「あぁ…そうだ」
「街へはお買い物ですか?」
「そうだ、たまには街に出るのも悪くないと思ってな…それよりその荷物の量はなんなのだ?一人で持つには重たいであろう」
ソフィアの細腕には持つのが無理があるだろう程の大荷物を目にしルイスはギョッとした、まさかマルシェからここまで運んで来たのかと驚いたのだ。
「恥ずかしながら、食材の在庫が底をついてしまって。ちょうど重たさのあるものばかりでして」
「妹君は一緒ではないのか?」
「レティにはお肉を狩ってきて貰っているから今日は一人なんです」
「そうか、肉の買い出しか。なら俺が持とう」
流石にこんなにも重たそうな荷物を持っている女性を一人にはしておけないとルイスは彼女の手から荷物をニつひょいと持ち上げる。
するとズシリとくる袋の重たさに、どれ程の量を買い込んだのだと驚くと共に尚の事放ってはいけないと心に思った。
「そんな!申し訳ないです大丈夫ですよ」
彼女が慌ててこちらに伸ばした手がルイスの目に映る、手のひらは赤くなっておりとても痛そうになっていた。
「何を言っている手が赤くなっているではないか、俺ももう帰ろうとしていた所だからついでだ。他に買うものはないな?」
「えぇ…ありがとうございます、優しいんですね」
「……紳士として当たり前の事をしたまでだ」
ルイスは少し嘘をついた、今から帰るのではなく行く最中だったのだが…何故か彼女の事を放ってはおけなかったのだ。
ルイスは今まで側によれば怖がられるか、気絶されるかだった為に女性とこんなふうに隣同士歩くことなど出来なかった。だがソフィアは厳つい見た目の彼の側でも怖がらないどころか、とても嬉しそうに笑い楽しく会話を弾ませていた。
そうやって二人楽しく会話して歩いていると結構な距離があったのに直ぐに着いてしまった。
ルイスは今まで一人で黙々と歩くには遠い距離だと思っていたのにこんなに早くついてしまった事にとても驚いた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
その日の夜
「お姉ちゃんただいまー!ごめんなさいお肉今日は不作だった」
「あらあら、おかえりなさい。そうなのね…だったら明日は卵料理にしましょうか。ちょうど卵が沢山売ってたから買ってきたのよー。後は小麦粉と砂糖も買ってきたの、ついつい安くて沢山買ってしまったわ」
「え!お姉ちゃんこんなに買ったら重たかったでしょ!?大丈夫だった?」
「えぇ、帰り道で団長さんに会って持ってくれたのよ。とても三角筋が素晴らしかったわ」
「団長さんって…最近良くお店に来てくれるよね。
…………もしかして、お姉ちゃんに気があったりしてボソッ」
「あら、何か言った?」
「うんうん、何でもないよ!(第一印象は良かったしお姉ちゃん好みの見た目だけど今度どんな人物か調べてみよう…お姉ちゃんに変な虫がついたら大変。)」
「それでね、お礼に何か作ろうと思うのだけど…レティも手伝ってくれる?」
「良いよ!ちょうど妖精達がお腹空いたって言ってたからマフィンとかどうかな?甘いのが苦手だったとき用におかずマフィンも作ろう」
「それが良いわ!おかずマフィンにはほうれん草とベーコンはどうかしら」
「うん!美味しいと思うよ、甘い方はナッツ入り作ろっと!」
「そうねー、早速作りましょう」
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