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第5話
しおりを挟む「注文承りましたー!」
パタパタと走り去る少女を横目に、ルイスはロベルトの事を再度睨みつけた。
「おい、お前もこの店に来たのは初めてではないのか?あっさりと注文を決めるから悩む暇が無かったではないか。」
「えぇ、初めてですよ。ですがここの生姜焼きとやらがとても美味しいと団員から聞いていたので」
何とちゃっかりしている。それなら俺にも教えてくれても良かったであろうに。
そんなこんなで数分待っていると美味しそうな匂いが厨房の方から漂ってきた。
「いい匂いだ」
「そうですね、これは期待できます」
漂う匂いにあれだけ食欲の無かった胃からグーとなる音が聞こえた。
なんと食欲のそそる匂いなんだ。
「「お待たせいたしました」」
そう思っていると先程の可愛らしい美少女と共に、目の覚める様な美女が料理を持ってやってきた。
きっと彼女があの団員達が言っていた美人姉妹の姉の方であろう。少女によく似たピンクゴールドの長い髪を頭の高い位置に1つにくくりあげ、宝石をはめ込んだ様な碧の瞳がこちらを写し、優し気な笑みを浮かべている。
社交界でも見る事が無いほどの美女に目を奪われる、しかも今まで一度も向けられた事が無いほどの笑顔についつい時を忘れてしまいそうになった。
「団長?」
「はっ!す、すまん」
時を忘れているとロベルトから声をかけられた。
「こちらがBセットです!」
「こちらがAセットです唐揚げはレモンを絞って頂くとさっぱりして美味しいですよ」
妹のレティシアはロベルトにBセットのオークの生姜焼きを渡し、姉のソフィアはルイスにAセットのロックバードの唐揚げを渡す。
「ありがとう…美味そうな匂いだ」
「ありがとうございます。本当に美味しそうですね」
「ふふ、ありがとうございます。熱いのでお気をつけてお食べ下さいね。」
「あぁ、頂きます」 「頂きます」
「「ごゆっくりどうぞ」」
美人姉妹にも驚いたが、目の前に置かれた見慣れない料理にもとても目が奪われた。
艶々のライスに、野菜が沢山入っているのが分かるスープ、そして一口サイズの茶色くゴツゴツした丸い物体から漂う香ばしい香り。
少女の説明通り肉に衣がついているのであろう、少し硬そうに見える。
レモンをかけたらさっぱりすると言っていたがまずは、そのまま頂いてみる。
サクッ…
「なんとコレは!」
硬いかと思っていた衣はサクッとしていて硬すぎず、中は非常に柔らかく噛むたびに肉汁が口の中に溢れ出してとてもジューシーである。
「美味い」「美味しい」
ロベルトも美味しかったのであろう、一言美味いと口にしてから
目を輝かせ黙々と目の前の料理を口に運んでいる。
「なんと美味い料理なんだ…このスープも初めて食べる味だが優しく、野菜の甘みが引き出されている。
ライスもオススメされただけある、これは唐揚げにとてもあって手が止まらない!
すまない!ライスのお代わりを頂けないか」
「自分も!」
「はーい!ただいま!」
ライスの減りが早い、騎士はライスのお代わりが無料なのが本当にありがたい。
少女が持ってきてくれた2杯目のライスも次々に無くなっていく。
「ふぅ…そういえば唐揚げにレモンが合うと言っていたな、かけてみるか」
皿の端にあった切れたレモンを摘み唐揚げに数滴絞って一口噛ってみると爽やかな香りが鼻に抜ける。
これもまた美味であった、肉の油とレモンがマッチして飽きが来ず無限に食べれそうだ。
昼間はあれ程食欲が無かったのが嘘のように目の前の皿から料理が腹の中へと消えていった。
「美味かった…。」
「本当にです。」
ロベルトの方も気がついたら皿から料理が無くなっていた、あれだけ美味そうに彼が料理を口にしている姿を見るのは初めてであった。
「「ごちそうさまでした」」
一心不乱に食べていたからであろうか、知らないうちに店の中にはウチの騎士団の団員達の姿がありとても賑わっていた。
これだけ美味い料理を出す店だ、団員たちが気に入るのも無理はない…そう言う自分も胃袋が掴まれてしまったみたいだ。
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