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第一章 盗賊団「鋼鉄のならず者」
第二十四話 効果的な尋問
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男が店を出たとき、その手にはなにやらものが詰まった麻袋があった。男はそれを持って北の門に括りつけておいた馬の方へ歩いて行った。
「ニコラ、まずいぜ。馬に乗られたら追い付けなくなる。ここは尾行なんてしてられねぇ」
「あ! ジャン! ちょっと!」
男の様子を見てすぐにジャンは駆けだした。ニコラもその後ろに従った。
「ったく、しょうがないわね……」
シェリーもその後を追いかけた。そのまま三人は男に向かって走って行ったが、ある程度近付いたところで男はジャンたちの存在に気付いた。男は近付いてくる三人の足音を聞きつけて振り返ると、状況を察してすぐさま馬の方へ全力疾走しだした。
「くそ、これじゃあ追い付けねぇ!」
軽装防具とはいえ鎖帷子と鎧を着たジャンの足では、短距離で男に追い付くのは難しい。無論、魔術師であるニコラにとってもそれは困難だった。
「情けないわね」
と、その後ろから追いかけてきたシェリーはあっさり二人を抜き去り、数秒後には男を射程内に捉えた。
「待ちなさいよっ!」
彼女は走る男の腕をしっかりと捕まえ、その場に引き留めることに成功した。
「おお! さっすがシェリー!」
「あったりまえよ! あたしにかかればこれぐらい朝飯前よ!」
得意満面のシェリー。彼女のおかげで三人はなんとか男を捕らえることに成功した。
「くっ! なんなんだおまえらは!? 俺になんの用があるってんだ!?」
「大した用じゃねぇよ。ちょっとその中身を確認したいだけだ」
ジャンがそう言うと、男はすぐさま目を逸らした。
「そんなのおまえらに関係ないだろ!」
「そうでもないんだよな。てゆーかよ、中身は北の森で採れるキノコだろ?」
「う……」
男の顔は袋の中身がなにかを雄弁に物語っていた。もう聞くまでもない。ジャンたちは袋の中身が例のキノコだと確信した。
「聞かせてくれませんか? なんのために価格の高騰したキノコを大量に買い込んだのか? できれば、この件に関してあなたが知っているほかのことについても」
ニコラは尋問を始めた。
「俺はただの行商だ! 俺は中抜きしてるだけなんだ!」
「本当かよ? なんか隠してるんじゃねぇのか?」
「いや、ジャン。この人に嘘をついている様子はない。ただ……あなた、やっぱりただ中抜きしているだけじゃないですよね? キノコを買い入れる以前に、この件に関与したことはないですか?」
「そ、それは……」
男が隠しごとをしているのはほとんど明らかだった。だが人目がないわけではないこの場所で手荒なまねはまずい。さすがのジャンもそれぐらいは理解していた。二人が対応に困っていると、痺れを切らしたシェリーが口を挟んだ。
「じれったいわね。あたしが聞き出してやるわよ」
「え?」
彼女は左手で男の左手首をしっかりと握り、男の手のひらを右手でつまむようにして持った。
「うん、あったあった。ちょっと痛いわよ」
「え? あっ! ちょっ!! 痛い痛い痛い!!」
「大丈夫よ、ツボを押してるだけだから。終わったらむしろ気分よくなるわよ。終わったらだけど」
「痛い! 悪かった! 言うよ! 言うからやめてくれ!」
「うん、素直でよろしい」
男はシェリーの指圧に悶え、ついに折れてしまった。
「かーっ、北の森の魔獣なんかよりシェリーのほうがよっぽど怖いぜ」
「空耳かしら? なにかいますっごく不愉快な発言が聞こえた気がしたんだけど」
「すみません、ごめんなさい」
ジャンはまた迂闊なことを口走り、そしていつものようにすぐさま謝った。
「まあいいわ。それじゃあおじさま、あなたの知ってること、全部教えてちょうだい」
「しかたねぇ、話すよ」
男は渋々ながら事の顛末について話しだした。
「ニコラ、まずいぜ。馬に乗られたら追い付けなくなる。ここは尾行なんてしてられねぇ」
「あ! ジャン! ちょっと!」
男の様子を見てすぐにジャンは駆けだした。ニコラもその後ろに従った。
「ったく、しょうがないわね……」
シェリーもその後を追いかけた。そのまま三人は男に向かって走って行ったが、ある程度近付いたところで男はジャンたちの存在に気付いた。男は近付いてくる三人の足音を聞きつけて振り返ると、状況を察してすぐさま馬の方へ全力疾走しだした。
「くそ、これじゃあ追い付けねぇ!」
軽装防具とはいえ鎖帷子と鎧を着たジャンの足では、短距離で男に追い付くのは難しい。無論、魔術師であるニコラにとってもそれは困難だった。
「情けないわね」
と、その後ろから追いかけてきたシェリーはあっさり二人を抜き去り、数秒後には男を射程内に捉えた。
「待ちなさいよっ!」
彼女は走る男の腕をしっかりと捕まえ、その場に引き留めることに成功した。
「おお! さっすがシェリー!」
「あったりまえよ! あたしにかかればこれぐらい朝飯前よ!」
得意満面のシェリー。彼女のおかげで三人はなんとか男を捕らえることに成功した。
「くっ! なんなんだおまえらは!? 俺になんの用があるってんだ!?」
「大した用じゃねぇよ。ちょっとその中身を確認したいだけだ」
ジャンがそう言うと、男はすぐさま目を逸らした。
「そんなのおまえらに関係ないだろ!」
「そうでもないんだよな。てゆーかよ、中身は北の森で採れるキノコだろ?」
「う……」
男の顔は袋の中身がなにかを雄弁に物語っていた。もう聞くまでもない。ジャンたちは袋の中身が例のキノコだと確信した。
「聞かせてくれませんか? なんのために価格の高騰したキノコを大量に買い込んだのか? できれば、この件に関してあなたが知っているほかのことについても」
ニコラは尋問を始めた。
「俺はただの行商だ! 俺は中抜きしてるだけなんだ!」
「本当かよ? なんか隠してるんじゃねぇのか?」
「いや、ジャン。この人に嘘をついている様子はない。ただ……あなた、やっぱりただ中抜きしているだけじゃないですよね? キノコを買い入れる以前に、この件に関与したことはないですか?」
「そ、それは……」
男が隠しごとをしているのはほとんど明らかだった。だが人目がないわけではないこの場所で手荒なまねはまずい。さすがのジャンもそれぐらいは理解していた。二人が対応に困っていると、痺れを切らしたシェリーが口を挟んだ。
「じれったいわね。あたしが聞き出してやるわよ」
「え?」
彼女は左手で男の左手首をしっかりと握り、男の手のひらを右手でつまむようにして持った。
「うん、あったあった。ちょっと痛いわよ」
「え? あっ! ちょっ!! 痛い痛い痛い!!」
「大丈夫よ、ツボを押してるだけだから。終わったらむしろ気分よくなるわよ。終わったらだけど」
「痛い! 悪かった! 言うよ! 言うからやめてくれ!」
「うん、素直でよろしい」
男はシェリーの指圧に悶え、ついに折れてしまった。
「かーっ、北の森の魔獣なんかよりシェリーのほうがよっぽど怖いぜ」
「空耳かしら? なにかいますっごく不愉快な発言が聞こえた気がしたんだけど」
「すみません、ごめんなさい」
ジャンはまた迂闊なことを口走り、そしていつものようにすぐさま謝った。
「まあいいわ。それじゃあおじさま、あなたの知ってること、全部教えてちょうだい」
「しかたねぇ、話すよ」
男は渋々ながら事の顛末について話しだした。
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