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第三章 亡国の系譜
第百五十二話 普通の幼馴染
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しかしシェリーの楽しい妄想は、ソフィのひと言であっさり潰えることになる。
「ジャン、やめなさい。ノーマンも挑発するような真似しないの」
「「……はーい」」
ジャンもノーマンも、ソフィに言われたら従うしかない。二人は大人しく引き下がり、また料理を口に運びはじめた。すっかり期待が外れてしまったシェリーは口をへの字にし、肩を落とした。
「あら、どうしたの、シェリー?」
「なんでもない……」
「??」
ソフィが声をかけても反応は薄かった。けっきょくジャンとノーマンの対立は早々に手打ちとなり、その後なにごともなく夕食の時間は過ぎていった。
夕食を終えると、研究員たちは各自解散し、ジャンたちもソフィの部屋へ戻った。部屋に戻ると、四人はそれぞれソファに座って一息ついた。
「はー、食った食った。こんなに腹いっぱい食ったのはじめてだぜ」
「あんたちょっと食べすぎじゃない? よくそんなに入るわね」
シェリーはジャンの隣に座ってそう言った。心なしかいつもより密着して、意味もなく彼の太ももに触れている。ノーマンとの一件がまだ気になっているようだ。
「美味い料理はどんだけでも入るぜ。おまえんちの料理もな」
「あ、当たり前でしょ! 母さんが作った料理なんだから! そ、それに、あたしもちょっと手伝ってるし……」
シェリーはぼそっと、自分も調理に加わっていることをアピールした。しかし声が尻すぼみになったため、ジャンはそれを聞き漏らしてしまった。
「え? 最後のほう聞き取れなかった。もう一回頼むわ」
「ば、バカ! ちゃんと聞いてなさいよ! 二度は言わないわよ」
「なんだそれ」
それからしばらく四人は特に目的もなく雑談を続けた。話題の中心は今日の講義の話だったが、ひと通り話しつくしたころでシェリーが新たな話題を振った。
「そういえば、ソフィさんとジェラールさんってどういう関係だったの?」
「え!? それは……普通の幼馴染よ。ジェラールは皇太子でわたしの父は筆頭執政官だったから、子どものころはよく一緒に遊んだりしてたわ」
「そうなんだ。でもなんか変な感じ。ジェラールさんのこと、ずっと近所のハンサムなおじさまだと思ってのに、実はハンサムな王子様だったなんてねー」
「ジェラールも子どものころはわんぱくだったのよ。でも根は優しくて、それで、いざというとき頼りになって……」
「まるで今の俺だな」
ジャンはソフィの話に割って入り、得意満面にそう言った。シェリーは一瞬彼の顔を見たが無視して話を続けた。
「ねぇソフィさん、もっといろいろ聞きかせてよ」
「うーん……そんなことより、そろそろお風呂にしない? お腹も落ち着いてきたことだし。このホテル、一階に大浴場があるの。地下からくみ上げた天然温泉だから美容にもいいわよ」
ソフィはシェリーの詮索をはぐらかした。たしかにちょうど腹が軽くなる頃合いではあったが、彼女の話運びはいささか強引だった。しかし美容にいいと聞いたシェリーがそんな些細なことに気付くはずもない。
「えー! ほんとにー!」
「ええ、きっと上がるころにはお肌スベスベよ」
ソフィはなにかを隠していた。しかしジャンとニコラもそろそろ汗を流したいと思っていたため、彼女とジェラールの過去の話はそこで流れることとなった。
「ジャン、やめなさい。ノーマンも挑発するような真似しないの」
「「……はーい」」
ジャンもノーマンも、ソフィに言われたら従うしかない。二人は大人しく引き下がり、また料理を口に運びはじめた。すっかり期待が外れてしまったシェリーは口をへの字にし、肩を落とした。
「あら、どうしたの、シェリー?」
「なんでもない……」
「??」
ソフィが声をかけても反応は薄かった。けっきょくジャンとノーマンの対立は早々に手打ちとなり、その後なにごともなく夕食の時間は過ぎていった。
夕食を終えると、研究員たちは各自解散し、ジャンたちもソフィの部屋へ戻った。部屋に戻ると、四人はそれぞれソファに座って一息ついた。
「はー、食った食った。こんなに腹いっぱい食ったのはじめてだぜ」
「あんたちょっと食べすぎじゃない? よくそんなに入るわね」
シェリーはジャンの隣に座ってそう言った。心なしかいつもより密着して、意味もなく彼の太ももに触れている。ノーマンとの一件がまだ気になっているようだ。
「美味い料理はどんだけでも入るぜ。おまえんちの料理もな」
「あ、当たり前でしょ! 母さんが作った料理なんだから! そ、それに、あたしもちょっと手伝ってるし……」
シェリーはぼそっと、自分も調理に加わっていることをアピールした。しかし声が尻すぼみになったため、ジャンはそれを聞き漏らしてしまった。
「え? 最後のほう聞き取れなかった。もう一回頼むわ」
「ば、バカ! ちゃんと聞いてなさいよ! 二度は言わないわよ」
「なんだそれ」
それからしばらく四人は特に目的もなく雑談を続けた。話題の中心は今日の講義の話だったが、ひと通り話しつくしたころでシェリーが新たな話題を振った。
「そういえば、ソフィさんとジェラールさんってどういう関係だったの?」
「え!? それは……普通の幼馴染よ。ジェラールは皇太子でわたしの父は筆頭執政官だったから、子どものころはよく一緒に遊んだりしてたわ」
「そうなんだ。でもなんか変な感じ。ジェラールさんのこと、ずっと近所のハンサムなおじさまだと思ってのに、実はハンサムな王子様だったなんてねー」
「ジェラールも子どものころはわんぱくだったのよ。でも根は優しくて、それで、いざというとき頼りになって……」
「まるで今の俺だな」
ジャンはソフィの話に割って入り、得意満面にそう言った。シェリーは一瞬彼の顔を見たが無視して話を続けた。
「ねぇソフィさん、もっといろいろ聞きかせてよ」
「うーん……そんなことより、そろそろお風呂にしない? お腹も落ち着いてきたことだし。このホテル、一階に大浴場があるの。地下からくみ上げた天然温泉だから美容にもいいわよ」
ソフィはシェリーの詮索をはぐらかした。たしかにちょうど腹が軽くなる頃合いではあったが、彼女の話運びはいささか強引だった。しかし美容にいいと聞いたシェリーがそんな些細なことに気付くはずもない。
「えー! ほんとにー!」
「ええ、きっと上がるころにはお肌スベスベよ」
ソフィはなにかを隠していた。しかしジャンとニコラもそろそろ汗を流したいと思っていたため、彼女とジェラールの過去の話はそこで流れることとなった。
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