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俺はヒーローになりたかった[大人組過去編]

君の優しい笑顔が・・・side太狼

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「全部、壊れちゃったんだぁ…壊れちゃった…」

智也は涙を流しながらそう言って笑った。その笑顔が痛々しくて、悲しくて、俺は思わず智也を抱きしめた。

俺は、本当に辛いはずなのに、笑顔をやめない智也が嫌だったんだ。

ただ、それだけで、他に理由なんて無かった。
俺には、無かったんだ。

少しして、智也は俺から離れた。
そして、なにがあったかを教えてくれた。
「ありがとう。もう、落ち着いた。」

「そうか…でも、無理はするなよ。なんだったら、俺の家に来てもいいし。」

「んー、今日は、大丈夫。“早く返事しなさい”って、言われてるし。もう、怒らせることに、怯えたくないんだ。」

智也はそう、悲しそうに言葉を落とした。

「ま、とりあえず、今日は僕、しばらく屋上にいるよ。この顔じゃ、クラスの奴らも煩いだろうし。」

「あぁ、わかった。でも、昼は、一緒に食べような。」

「うん。一緒に…。」

“一緒に” そう言った智也が、優しく笑った。
(久々に見たな…)

俺は智也のこの笑顔が好きだった。
だから、この笑顔を奪う奴が許せなかった。

大切な心優しい友人を傷付ける奴が許さなかったんだ。


そこに恋愛感情なんてこれっぽっちも無くて、家族愛に似た友情だと、俺は認識していたんだ。

俺が心から望むのは、一緒に不幸になりたいと願うのは、ただ1人、木嶋龍しかいないのだから。

木嶋龍への感情と智也への気持ちは違うものだ。それは、自分の中では当たり前で、当然のことで……。

けれど、その違いを伝えておくことは大切な事だったんだ。

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