俺はヒーローなんかじゃない

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俺はヒーローになりたかった[大人組過去編]

日常side智也

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僕の帰る場所は何処だろう。

僕の居場所は何処だろう。

僕を許してくれる人はいるのだろうか。

体が内側からボロボロに壊されていく感覚に、涙が自然と零れ落ちる。

ただ、愛されたかっただけだ。
幸せが続けばいいと願っただけだ。

それが、いけないことだったのだろうか。
何が悪いのかわからない。何が悪かったのかわからない。
考えても、考えても、わからないから・・・。

あぁ、やっぱりわからない僕が悪いのかもしれない。

そう思って、全てが嫌になって眠りにつく。目が覚めた時に、もしかしたら壊れる前の世界に戻っているかもしれない。そう願いながら。





目が覚めたのは、目覚まし時計のおかげでも、身に付いた習慣でもなく、両親の怒鳴り声のおかげだった。

(今日の朝は何にするかな・・・。)

そう思いながら、とりあえず顔を洗いに向かう。
BGMのように2人の声を聞きながら、苦しそうな面をした鏡の向こうの自分を見る。

(・・・着替えよう。)

自室に戻り、イヤフォンを耳に付ける。2人の声を消すように音楽をかけ、身支度をする。朝食はコンビニで買うことに決めた。ついでに昼食もコンビニで買おう。

「・・・行ってきます。」

玄関の扉を閉めてから、振り返り言葉を残す。イヤフォンを外して、外まで響くBGMにため息を吐く。


コンビニでご飯を買った後、近くの公園で朝食を済ませる。
学校で食べることも考えたが、テンテンこと、幼馴染みの存在を思いそれを止めた。

(テンテン来るの早いからなぁ。心配かけたくないしな・・・。)

ゆっくりと学校までの道を歩き、校門に着く頃には生徒の来るピークの時間になっていた。

教室に入り、木嶋と話すテンテンが目に付いた。

(・・・またあいつか。)

心の中で舌打ちしながら、能天気な笑顔を作って2人の邪魔、もとい、2人に挨拶する。
木嶋は1学期の中盤から急にテンテンと仲良くなり、3学期に入ってからその親密度は目に見えて加速した。
テンテンは自分にとって唯一の安息の地だった。それを急に奪っていきそうで、木嶋のことは正直好きになれなかった。
だが、木嶋の空気が読める点は評価する。

「太狼、俺隣のクラスに用事を思い出したから行ってくるな。伊藤もまた後で」

「うん、バイバイ」
「え、龍、まだ話が・・・行っちゃった。」

このように、毎回僕が来ると木嶋は何かと理由を付けて消えてくれる。もしかしたら、良いやつなのかもしれない。

しばらくテンテンと話をして、授業が始まった。よく態度と見た目のせいで勉強嫌いという設定を付けられているが、勉強するのは好きだった。知識が身につく感覚と、現実を忘れられるような没頭感が勉強を好きにさせた。

僕は学校自体も好きだった。楽しくて、笑っていられる。辛いことを忘れられる。

けれど、学校が終われば現実は迫ってくる。

「ただいま」

そう放ってから、深呼吸をして扉を開ける。靴が無いのを確認して、胸を撫で下ろす。
手洗いうがいを済ませ、部屋着に着替えてから冷蔵庫を確認する。

(夕飯何作ろうかな。)

消費期限を考えながら食材を手にとり、メニューを決める。

(今日はパスタにしよう。)

洗い物をしつつ、料理を作っていく。
完成したら、できる範囲のキッチンの後片付けをして少し冷めたパスタを見る。

(よし、炙ろう。)

最近炙りを覚えたせいか、レンチンをするよりとりあえず炙ることを選んでしまう。
炙る前に乗せたチーズに焦げ目が付いたくらいで、火を切り食事を始める。

「うまっ」

パスタをたいらげ後片付けをして、料理の途中で沸かしておいたお風呂に入る。

15分程お湯の中を楽しみ、時計を確認しつつ、やり残したことを片付ける。

家の扉が開く音がする頃には、家の中ですることは終わっていて、自室にいた。
親の静かな生活音に安堵しながら、授業の復習と予習をする。
勉強が終わる頃にまた扉の開く音がした。後は寝るだけという状態だが、一応イヤフォンを近くに置き布団に入る。

僕は寝付きが悪いので、意識がある状態で1時間ほど布団の中にいなくてはいけない。そうやってゴロゴロしている間に、部屋の外では些細なきっかけが始まる。
自分の寝付きの悪さを恨みながらイヤフォンを付け時間で消えるタイマー付きの音楽を聴きながら眠りにつく。

そしてまた、1日を繰り返す。

壊れた様な家での生活。
それでも、これ以上壊れないと信じ切って僕は生きてたんだ。
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