36 / 68
俺は君のヒーローだ。
32 行かないでside智也[s]
しおりを挟む大切に仕舞おうと思った。
特別だから。
君だけは、特別だから。
「なー、トモ女紹介してくれよ」
はっと、目の前の景色に思う。
(これは夢だ。)
「嫌だよ。自分で探しなよ。」
そう言うと、目の前の景色が変わる。
(あぁ、そうかここには台本があるのか。)
漠然と夢の中でそう感じた。
演じなきゃ。僕を演じなきゃ。
「太狼、お前なんで伊藤みたいな奴と友達やってるんだ?」
教室の中から、声が聞こえた。
(これは、僕の記憶だ)
「なんでって、あいつは良い奴だよ。疑問に思う点がわからない。」
「良い奴なの?」
「あぁ。それに、あいつの隣は安心するんだ。」
心臓が跳ねて、笑みが溢れる。
けれど、その先を思い出して心が凍った。
(あ、そうだ。これは、ダメな記憶だった。)
そう気が付いた時には遅かった。
「なにそれ、妬けるんだけど。僕の隣は安心できないの?」
(やめろ、もう。いいから。)
「あーもう、拗ねるなよ。お前が1番だよ。龍。」
優しくて甘い声。
太狼の隠した指輪の相手。
太狼を壊した唯一の人。
(知ってる。わかってる。お前に言われなくたって。)
また目の前の景色が変わった。
空の見えるどこかの屋上。暁がそいつを照らす。
「なぁ、伊藤。太狼は俺の恋人なんだよ。」
(知ってるよ。だから、なんだって言うんだよ。)
「俺は、これから、たとえ死んでも太狼の隣に居るよ。太狼は、あげないよ。」
それは、警告するというより決意に似た声だった。
(それを、なんであいつに言ってやらなかったんだよ。)
風が吹いて、教室の中になる。
「トモちゃん、女と男ってどっちが気持ちいい?」
「うぇ、男とかなに言ってんだよ。つか、トモ男ともヤッてんの?」
汚い。気持ち悪い。けど、忘れるには気持ちいい。生きてていいって言われるみたいで嬉しい。それだけ。それだけだよ。
周りの会話は僕を抜いてどんどん弾む。
「ならさ、イケそうな男って誰かいる?」
「あー、まぁイケメンは無理だな。そこそこ可愛くて、筋肉質じゃないやつとか?」
「そんなんいるか?」
「んー、いい感じの体なぁ……隣のクラスの佐藤とか、津田は?」
「いやいや、見たことないし男はやっぱり無理だって。」
「まぁ、そうだよなぁw」
「……でも、田中とかなんかいけそうなんだよな……なんでだ?」
「は?田中?なんで?」
はっとした。
(駄目だ。あいつは駄目だ。)
「なんか、着替えの時とかちらっと見えたんだけど」
ガタン
「それより、女の子紹介してあげようか?」
勢いよく机から降りて言う。
「え、まじで?!」「俺、巨乳がいい!」「年上!」
(本当に、悪夢だ。)
そう思えばまた目の前が変わる。
(ここは……倉庫?)
「はっはっ、ちょ、龍やめろって」
「ちょっとだけ、ね?」
「ちょっと、って、んっ、やめっ、人、来たらどうすんの」
「大丈夫。男同士なんて、じゃれてるようにしか見えないから。」
「ん、ばっ、そう言うんじゃ、はっ、んっ、どこ、触って」
逃げ出したいのに、もっとここで聞いていたい。
僕が、絶対に聞けない声だから。
「本当は、キスが良いんだよ?でも、じゃれてるように見えないじゃん。」
「はっ、んっ、これも、みえ、ないっ、てっ、ふっ、はっ、」
「それは、太狼の頑張り次第だよ。」
(あぁ、本当に僕はなにしてるんだろう。)
「むり、も、やらぁ、これ、やら、もっ、と、ちゃんと、さわっ、てっ」
「はは、太狼はもう飛んじゃいたいの?」
「りゅー、りゅー、おね、がい、ちゅーして、ちゅー、なきゃ、やら、りゅー」
「だーめ。家に帰ってからたっぷりしてあげるから我慢して。」
「りゅー、おね、がい、」
「んー、じゃぁ、お家でなんでもする?」
「すりゅ、いっぱい、きもちく、する、から、」
「じゃあ、一回だけね。」
あぁ、本当に……
「なんて、悪夢なんだ。」
今日は、雨らしい。雨の音が響く。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる