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俺は君のヒーローだ。

28 僕の大切な……side虎之助

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誰にもあげない。
誰にも渡さない。

彼は、僕の、僕だけのヒーローだから。

キラキラ輝いて見えるのは僕にだけ。
だって、彼は特別。

けれど、どうして?

パッと光が消えて真っ暗になったんだ。

僕だけのヒーロー。

うんん。

僕だけの光。

ねぇ、助けて真っ暗なんだ。
1人じゃ前に進めない。

どこ?どこにいるの?

暗闇なら、君だけが見えると思ったんだ。
どんな遠くにいても、光は輝いてると思ったんだ。

なのに、どうして……?

『僕と優翔は恋人なんだよ』

真木ちゃんは、一回も僕と目を合わせてくれなかった。ただ、縋り付くようにに抱き付いていた。
僕のヒーローで、光で、すごく強くて優しい真木ちゃんが、弱々しくて脆く見えた。

どうして?どこで、僕は間違えたの?

『ずっと一緒には無理だよ』

そんな事、言って欲しいわけじゃないのに。

どんどん、真木ちゃんは変わってしまう。
いつから?どこから?

どうしたら、また真木ちゃんと一緒にいられるの?
どうやったら、真木ちゃんの隣にいられるの?

『虎、恋人は大切にしないと駄目だ。』

(……もし、僕が恋人だったら……。)

頭に過ぎる悪魔の囁きに首を振る。

(違う。駄目だ。真木ちゃんは駄目だ。)

けれど、囁きは僕の線を千切ろうとする。

(でも……恋人だったら真木ちゃんは僕を大切にしてくれるかもしれない。一緒にいてくれるのかもしれない。隣にいさせてくれるのかもしれない。)

頭の中の辞書にある真っ黒に汚れた場所。真っ黒に汚さないといけなかった場所。

(……駄目だ。真木ちゃんは真っ白なんだ。僕が、汚したら……)

『んっぁ、と、もやさっ、んっ……』

(…………真木ちゃんは、真っ白なんだ。真っ白で綺麗なんだ。そうだよ。そうでしょ?)

涙が出た。

大切に、大切に……壊さないようにしていた僕のヒーロー。

(誰かに壊されるくらいなら……初めから、僕が壊してしまえば、よかったんだ……。)

壊れたものは戻らない。
汚れたものは綺麗にならない。
ねぇ、そうでしょ?

だったら、僕はどうしたらいいの?

光の無くなった世界で僕は自分の居場所さえわからないで、ただ暗闇にいる。
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