28 / 68
俺は君のヒーローだ。
24 重ね[R]
しおりを挟む
「ねぇ、優翔。ほら、もう、トロトロだぁ。」
「ッ、やめっ、っ、くっ。」
押し倒された俺の上に乗って智也さんは楽しそうにソレを見ていた。
(いや、だ。こんなの、俺じゃない。)
俺は、口から出る声を手の甲で抑えた。
「駄目だよ、優翔。手離して。」
首を振ると智也さんは俺に被さるようにして、俺の瞳を覗いた。
「ねぇ、じゃぁ、キスは?キスしたらだめ?ねぇ優翔。あーんてっ、ねぇ、あーん、するだけ、意地悪しないから。キスしたら、もう何もしないから。」
そう言って智也さんは俺の耳に口を近付けた。
「お願い、真木ちゃん。」
『真木ちゃん。』
頭の中で、虎の声が聞こえた。
(っ、ごめん。ごめん虎。俺、ヒーローなのに……。)
数時間前。
「おじゃまします。」
俺は優翔さんに案内されてリビングらしき部屋に入った。
シンプルな壁に濃いブラウンのフローリング。家具に色は少なくスッキリとした印象だった。
「なんか、智也さんっぽい部屋ですね。」
「え、そうかな。初めて言われたよ。」
智也さんはそう言いながら窓を開けていた。俺はどうしていいかわからず智也さんの行動を見ていた。智也さんは部屋に入って真っ先に窓を開けた後、冷蔵庫へ向かう。
「優翔、お茶とジュースどっちが好き?」
「あ、お茶が好きです。」
液体を入れる音がする。静かだ。
智也さんにすすめられてカウンターの椅子に座るとグラスに入ったお茶が目の前に置かれた。それから、同じグラスが俺の隣に置かれる。
「んー、よし。恋バナしよっか!」
ニコッと笑って智也さんは俺をみた。
智也さんは俺の言葉を優しく頷きながら聴いてくれた。
俺は初めは少しずつ落とすようにしかはなせなかった言葉が繋がって感情が溢れて行った。
「わかってるんです。こんなこと思うのは駄目だって。でも、どうしたらいいのか……だからもう、好きなのやめるしか……。」
言葉をそれ以上続けられなくて俯いた俺の頬を智也さんの手が撫でた。
「優翔は良い子だね。優しい。だから、周りのこと考えて自分の心を抑えちゃうんだ。でも、優翔。僕の前ではいいよ。わからないままで。僕は優翔が好きだよ。嫌いにならない。だから、わからないまま、知らないまま、優翔の気持ち教えて。」
「でも…。」
「わかってるけど、思っちゃうことあるんでしょう?優翔のわかってるけど止まらない!みたいな気持ち、言っちゃおうよ。僕は、ちゃんと聞くから。」
智也さんの言葉は、しまい込んでいた俺の心を優しく受け入れてくれるようだった。
「俺は、虎のこと好きです。虎にずっと隣にいて欲しい。でも、虎は俺の事ヒーローにするんです。俺は、虎の中ではきっと隣にいない。ヒーローだって線を引かれて、隣にはいさせてくれない。ヒーローになんて、なりたくないのに。」
「うん。そっか。」
「でも、ヒーローじゃなかったら虎とずっと一緒にいられない。虎はヒーローの俺とずっと一緒に居たいって言うから。」
「うん。」
智也さんの手が頭を撫でる。
「でも、ヒーローにならないといけないのに虎の言葉に期待したくなる。そんなの、虎は望んでないのに。虎はヒーローが好きなのに。だから、だからもう好きを止めるんです。もう、苦しいのは辛いのは疲れた……。」
「うん。いいよ。」
智也さんに抱き寄せられた。頭を撫でられ俺は智也さんにしがみついた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「っ、とも、やさん……俺……。」
溢れた。溢れてしまった。智也さんが優しいから。智也さんが大丈夫と言うから。今まで隠してきた全部が溢れ出た。
「優翔、虎君のこと、忘れさせてあげようか?」
「虎、のこと?」
「うん。ねぇ、僕のこと好きにならない?虎君やめちゃおう。」
「っ、でも」
「ヒーローに、ならないと駄目なんでしょ?好きなの、やめたいんでしょ?でも、それを迷ってる。」
「っ!」
智也さんがいとも簡単に俺を抱き上げた。
「きっかけ、あげるよ。……賭けをしよう。」
「と、智也さ!降ろしてくださ、」
「僕でイケたら虎君のことやめちゃおう。」
「え……?」
智也さんは隣の部屋にある寝室のベッドの上に俺を降ろした。
「あー、僕でって言っても僕の手でってことね。流石にいきなりはキツイだろうし。あ、そうだ優翔は虎君になんて呼ばれてるの?」
「え、あ、真木ちゃんって。」
「そっか、真木ちゃん、ね。」
そう言って智也さんは妖艶に微笑んだ。
「じゃあ、優翔。智也お兄さんと賭けをしようか。僕が勝ったら優翔は僕の恋人になろう。それで、優翔が勝ったら虎君に告白しよう。」
「え……?と、らに?告白?」
「うん。告白してもしOKされたら幸せだし、もしOKされなくても僕はOKするからね。」
「そん、俺はヒーローでいいから隣にいたいだけでっ……!」
「ふふっ、そっか。じゃあ優翔が勝ったらどうする?あと、僕が勝ったら恋人になってもらうけどそれについては反論なし?」
「っ、俺は虎のこと好きなのやめたいだけだから……。」
「んー、それじゃ賭けにならないなぁ。まぁ、でも僕が勝てばいい話だもんね。」
その言葉と共に智也さんは俺の両腕を頭の上で抑え俺の上に跨った。
「え?……智也さん?」
「僕とタノシイことしようね。」
そうして智也さんは楽しそうに笑った。
「ッ、やめっ、っ、くっ。」
押し倒された俺の上に乗って智也さんは楽しそうにソレを見ていた。
(いや、だ。こんなの、俺じゃない。)
俺は、口から出る声を手の甲で抑えた。
「駄目だよ、優翔。手離して。」
首を振ると智也さんは俺に被さるようにして、俺の瞳を覗いた。
「ねぇ、じゃぁ、キスは?キスしたらだめ?ねぇ優翔。あーんてっ、ねぇ、あーん、するだけ、意地悪しないから。キスしたら、もう何もしないから。」
そう言って智也さんは俺の耳に口を近付けた。
「お願い、真木ちゃん。」
『真木ちゃん。』
頭の中で、虎の声が聞こえた。
(っ、ごめん。ごめん虎。俺、ヒーローなのに……。)
数時間前。
「おじゃまします。」
俺は優翔さんに案内されてリビングらしき部屋に入った。
シンプルな壁に濃いブラウンのフローリング。家具に色は少なくスッキリとした印象だった。
「なんか、智也さんっぽい部屋ですね。」
「え、そうかな。初めて言われたよ。」
智也さんはそう言いながら窓を開けていた。俺はどうしていいかわからず智也さんの行動を見ていた。智也さんは部屋に入って真っ先に窓を開けた後、冷蔵庫へ向かう。
「優翔、お茶とジュースどっちが好き?」
「あ、お茶が好きです。」
液体を入れる音がする。静かだ。
智也さんにすすめられてカウンターの椅子に座るとグラスに入ったお茶が目の前に置かれた。それから、同じグラスが俺の隣に置かれる。
「んー、よし。恋バナしよっか!」
ニコッと笑って智也さんは俺をみた。
智也さんは俺の言葉を優しく頷きながら聴いてくれた。
俺は初めは少しずつ落とすようにしかはなせなかった言葉が繋がって感情が溢れて行った。
「わかってるんです。こんなこと思うのは駄目だって。でも、どうしたらいいのか……だからもう、好きなのやめるしか……。」
言葉をそれ以上続けられなくて俯いた俺の頬を智也さんの手が撫でた。
「優翔は良い子だね。優しい。だから、周りのこと考えて自分の心を抑えちゃうんだ。でも、優翔。僕の前ではいいよ。わからないままで。僕は優翔が好きだよ。嫌いにならない。だから、わからないまま、知らないまま、優翔の気持ち教えて。」
「でも…。」
「わかってるけど、思っちゃうことあるんでしょう?優翔のわかってるけど止まらない!みたいな気持ち、言っちゃおうよ。僕は、ちゃんと聞くから。」
智也さんの言葉は、しまい込んでいた俺の心を優しく受け入れてくれるようだった。
「俺は、虎のこと好きです。虎にずっと隣にいて欲しい。でも、虎は俺の事ヒーローにするんです。俺は、虎の中ではきっと隣にいない。ヒーローだって線を引かれて、隣にはいさせてくれない。ヒーローになんて、なりたくないのに。」
「うん。そっか。」
「でも、ヒーローじゃなかったら虎とずっと一緒にいられない。虎はヒーローの俺とずっと一緒に居たいって言うから。」
「うん。」
智也さんの手が頭を撫でる。
「でも、ヒーローにならないといけないのに虎の言葉に期待したくなる。そんなの、虎は望んでないのに。虎はヒーローが好きなのに。だから、だからもう好きを止めるんです。もう、苦しいのは辛いのは疲れた……。」
「うん。いいよ。」
智也さんに抱き寄せられた。頭を撫でられ俺は智也さんにしがみついた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「っ、とも、やさん……俺……。」
溢れた。溢れてしまった。智也さんが優しいから。智也さんが大丈夫と言うから。今まで隠してきた全部が溢れ出た。
「優翔、虎君のこと、忘れさせてあげようか?」
「虎、のこと?」
「うん。ねぇ、僕のこと好きにならない?虎君やめちゃおう。」
「っ、でも」
「ヒーローに、ならないと駄目なんでしょ?好きなの、やめたいんでしょ?でも、それを迷ってる。」
「っ!」
智也さんがいとも簡単に俺を抱き上げた。
「きっかけ、あげるよ。……賭けをしよう。」
「と、智也さ!降ろしてくださ、」
「僕でイケたら虎君のことやめちゃおう。」
「え……?」
智也さんは隣の部屋にある寝室のベッドの上に俺を降ろした。
「あー、僕でって言っても僕の手でってことね。流石にいきなりはキツイだろうし。あ、そうだ優翔は虎君になんて呼ばれてるの?」
「え、あ、真木ちゃんって。」
「そっか、真木ちゃん、ね。」
そう言って智也さんは妖艶に微笑んだ。
「じゃあ、優翔。智也お兄さんと賭けをしようか。僕が勝ったら優翔は僕の恋人になろう。それで、優翔が勝ったら虎君に告白しよう。」
「え……?と、らに?告白?」
「うん。告白してもしOKされたら幸せだし、もしOKされなくても僕はOKするからね。」
「そん、俺はヒーローでいいから隣にいたいだけでっ……!」
「ふふっ、そっか。じゃあ優翔が勝ったらどうする?あと、僕が勝ったら恋人になってもらうけどそれについては反論なし?」
「っ、俺は虎のこと好きなのやめたいだけだから……。」
「んー、それじゃ賭けにならないなぁ。まぁ、でも僕が勝てばいい話だもんね。」
その言葉と共に智也さんは俺の両腕を頭の上で抑え俺の上に跨った。
「え?……智也さん?」
「僕とタノシイことしようね。」
そうして智也さんは楽しそうに笑った。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
小犬の気持ち
はづき惣
BL
ある日の放課後、平凡な高校生の白井那月(しらいなつき)が、美形で人気者の九条龍臣(くじょうたつおみ)に呼び止められ、訳も分からないままに、話がすれ違い、どうにもならなくなる話。話の流れ的に那月はほぼ話しません。その後からは少し話します。今は結構話す様になりました。誤字脱字ごめんなさい。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる