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俺は君のヒーローだ。
24 重ね[R]
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「ねぇ、優翔。ほら、もう、トロトロだぁ。」
「ッ、やめっ、っ、くっ。」
押し倒された俺の上に乗って智也さんは楽しそうにソレを見ていた。
(いや、だ。こんなの、俺じゃない。)
俺は、口から出る声を手の甲で抑えた。
「駄目だよ、優翔。手離して。」
首を振ると智也さんは俺に被さるようにして、俺の瞳を覗いた。
「ねぇ、じゃぁ、キスは?キスしたらだめ?ねぇ優翔。あーんてっ、ねぇ、あーん、するだけ、意地悪しないから。キスしたら、もう何もしないから。」
そう言って智也さんは俺の耳に口を近付けた。
「お願い、真木ちゃん。」
『真木ちゃん。』
頭の中で、虎の声が聞こえた。
(っ、ごめん。ごめん虎。俺、ヒーローなのに……。)
数時間前。
「おじゃまします。」
俺は優翔さんに案内されてリビングらしき部屋に入った。
シンプルな壁に濃いブラウンのフローリング。家具に色は少なくスッキリとした印象だった。
「なんか、智也さんっぽい部屋ですね。」
「え、そうかな。初めて言われたよ。」
智也さんはそう言いながら窓を開けていた。俺はどうしていいかわからず智也さんの行動を見ていた。智也さんは部屋に入って真っ先に窓を開けた後、冷蔵庫へ向かう。
「優翔、お茶とジュースどっちが好き?」
「あ、お茶が好きです。」
液体を入れる音がする。静かだ。
智也さんにすすめられてカウンターの椅子に座るとグラスに入ったお茶が目の前に置かれた。それから、同じグラスが俺の隣に置かれる。
「んー、よし。恋バナしよっか!」
ニコッと笑って智也さんは俺をみた。
智也さんは俺の言葉を優しく頷きながら聴いてくれた。
俺は初めは少しずつ落とすようにしかはなせなかった言葉が繋がって感情が溢れて行った。
「わかってるんです。こんなこと思うのは駄目だって。でも、どうしたらいいのか……だからもう、好きなのやめるしか……。」
言葉をそれ以上続けられなくて俯いた俺の頬を智也さんの手が撫でた。
「優翔は良い子だね。優しい。だから、周りのこと考えて自分の心を抑えちゃうんだ。でも、優翔。僕の前ではいいよ。わからないままで。僕は優翔が好きだよ。嫌いにならない。だから、わからないまま、知らないまま、優翔の気持ち教えて。」
「でも…。」
「わかってるけど、思っちゃうことあるんでしょう?優翔のわかってるけど止まらない!みたいな気持ち、言っちゃおうよ。僕は、ちゃんと聞くから。」
智也さんの言葉は、しまい込んでいた俺の心を優しく受け入れてくれるようだった。
「俺は、虎のこと好きです。虎にずっと隣にいて欲しい。でも、虎は俺の事ヒーローにするんです。俺は、虎の中ではきっと隣にいない。ヒーローだって線を引かれて、隣にはいさせてくれない。ヒーローになんて、なりたくないのに。」
「うん。そっか。」
「でも、ヒーローじゃなかったら虎とずっと一緒にいられない。虎はヒーローの俺とずっと一緒に居たいって言うから。」
「うん。」
智也さんの手が頭を撫でる。
「でも、ヒーローにならないといけないのに虎の言葉に期待したくなる。そんなの、虎は望んでないのに。虎はヒーローが好きなのに。だから、だからもう好きを止めるんです。もう、苦しいのは辛いのは疲れた……。」
「うん。いいよ。」
智也さんに抱き寄せられた。頭を撫でられ俺は智也さんにしがみついた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「っ、とも、やさん……俺……。」
溢れた。溢れてしまった。智也さんが優しいから。智也さんが大丈夫と言うから。今まで隠してきた全部が溢れ出た。
「優翔、虎君のこと、忘れさせてあげようか?」
「虎、のこと?」
「うん。ねぇ、僕のこと好きにならない?虎君やめちゃおう。」
「っ、でも」
「ヒーローに、ならないと駄目なんでしょ?好きなの、やめたいんでしょ?でも、それを迷ってる。」
「っ!」
智也さんがいとも簡単に俺を抱き上げた。
「きっかけ、あげるよ。……賭けをしよう。」
「と、智也さ!降ろしてくださ、」
「僕でイケたら虎君のことやめちゃおう。」
「え……?」
智也さんは隣の部屋にある寝室のベッドの上に俺を降ろした。
「あー、僕でって言っても僕の手でってことね。流石にいきなりはキツイだろうし。あ、そうだ優翔は虎君になんて呼ばれてるの?」
「え、あ、真木ちゃんって。」
「そっか、真木ちゃん、ね。」
そう言って智也さんは妖艶に微笑んだ。
「じゃあ、優翔。智也お兄さんと賭けをしようか。僕が勝ったら優翔は僕の恋人になろう。それで、優翔が勝ったら虎君に告白しよう。」
「え……?と、らに?告白?」
「うん。告白してもしOKされたら幸せだし、もしOKされなくても僕はOKするからね。」
「そん、俺はヒーローでいいから隣にいたいだけでっ……!」
「ふふっ、そっか。じゃあ優翔が勝ったらどうする?あと、僕が勝ったら恋人になってもらうけどそれについては反論なし?」
「っ、俺は虎のこと好きなのやめたいだけだから……。」
「んー、それじゃ賭けにならないなぁ。まぁ、でも僕が勝てばいい話だもんね。」
その言葉と共に智也さんは俺の両腕を頭の上で抑え俺の上に跨った。
「え?……智也さん?」
「僕とタノシイことしようね。」
そうして智也さんは楽しそうに笑った。
「ッ、やめっ、っ、くっ。」
押し倒された俺の上に乗って智也さんは楽しそうにソレを見ていた。
(いや、だ。こんなの、俺じゃない。)
俺は、口から出る声を手の甲で抑えた。
「駄目だよ、優翔。手離して。」
首を振ると智也さんは俺に被さるようにして、俺の瞳を覗いた。
「ねぇ、じゃぁ、キスは?キスしたらだめ?ねぇ優翔。あーんてっ、ねぇ、あーん、するだけ、意地悪しないから。キスしたら、もう何もしないから。」
そう言って智也さんは俺の耳に口を近付けた。
「お願い、真木ちゃん。」
『真木ちゃん。』
頭の中で、虎の声が聞こえた。
(っ、ごめん。ごめん虎。俺、ヒーローなのに……。)
数時間前。
「おじゃまします。」
俺は優翔さんに案内されてリビングらしき部屋に入った。
シンプルな壁に濃いブラウンのフローリング。家具に色は少なくスッキリとした印象だった。
「なんか、智也さんっぽい部屋ですね。」
「え、そうかな。初めて言われたよ。」
智也さんはそう言いながら窓を開けていた。俺はどうしていいかわからず智也さんの行動を見ていた。智也さんは部屋に入って真っ先に窓を開けた後、冷蔵庫へ向かう。
「優翔、お茶とジュースどっちが好き?」
「あ、お茶が好きです。」
液体を入れる音がする。静かだ。
智也さんにすすめられてカウンターの椅子に座るとグラスに入ったお茶が目の前に置かれた。それから、同じグラスが俺の隣に置かれる。
「んー、よし。恋バナしよっか!」
ニコッと笑って智也さんは俺をみた。
智也さんは俺の言葉を優しく頷きながら聴いてくれた。
俺は初めは少しずつ落とすようにしかはなせなかった言葉が繋がって感情が溢れて行った。
「わかってるんです。こんなこと思うのは駄目だって。でも、どうしたらいいのか……だからもう、好きなのやめるしか……。」
言葉をそれ以上続けられなくて俯いた俺の頬を智也さんの手が撫でた。
「優翔は良い子だね。優しい。だから、周りのこと考えて自分の心を抑えちゃうんだ。でも、優翔。僕の前ではいいよ。わからないままで。僕は優翔が好きだよ。嫌いにならない。だから、わからないまま、知らないまま、優翔の気持ち教えて。」
「でも…。」
「わかってるけど、思っちゃうことあるんでしょう?優翔のわかってるけど止まらない!みたいな気持ち、言っちゃおうよ。僕は、ちゃんと聞くから。」
智也さんの言葉は、しまい込んでいた俺の心を優しく受け入れてくれるようだった。
「俺は、虎のこと好きです。虎にずっと隣にいて欲しい。でも、虎は俺の事ヒーローにするんです。俺は、虎の中ではきっと隣にいない。ヒーローだって線を引かれて、隣にはいさせてくれない。ヒーローになんて、なりたくないのに。」
「うん。そっか。」
「でも、ヒーローじゃなかったら虎とずっと一緒にいられない。虎はヒーローの俺とずっと一緒に居たいって言うから。」
「うん。」
智也さんの手が頭を撫でる。
「でも、ヒーローにならないといけないのに虎の言葉に期待したくなる。そんなの、虎は望んでないのに。虎はヒーローが好きなのに。だから、だからもう好きを止めるんです。もう、苦しいのは辛いのは疲れた……。」
「うん。いいよ。」
智也さんに抱き寄せられた。頭を撫でられ俺は智也さんにしがみついた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
「っ、とも、やさん……俺……。」
溢れた。溢れてしまった。智也さんが優しいから。智也さんが大丈夫と言うから。今まで隠してきた全部が溢れ出た。
「優翔、虎君のこと、忘れさせてあげようか?」
「虎、のこと?」
「うん。ねぇ、僕のこと好きにならない?虎君やめちゃおう。」
「っ、でも」
「ヒーローに、ならないと駄目なんでしょ?好きなの、やめたいんでしょ?でも、それを迷ってる。」
「っ!」
智也さんがいとも簡単に俺を抱き上げた。
「きっかけ、あげるよ。……賭けをしよう。」
「と、智也さ!降ろしてくださ、」
「僕でイケたら虎君のことやめちゃおう。」
「え……?」
智也さんは隣の部屋にある寝室のベッドの上に俺を降ろした。
「あー、僕でって言っても僕の手でってことね。流石にいきなりはキツイだろうし。あ、そうだ優翔は虎君になんて呼ばれてるの?」
「え、あ、真木ちゃんって。」
「そっか、真木ちゃん、ね。」
そう言って智也さんは妖艶に微笑んだ。
「じゃあ、優翔。智也お兄さんと賭けをしようか。僕が勝ったら優翔は僕の恋人になろう。それで、優翔が勝ったら虎君に告白しよう。」
「え……?と、らに?告白?」
「うん。告白してもしOKされたら幸せだし、もしOKされなくても僕はOKするからね。」
「そん、俺はヒーローでいいから隣にいたいだけでっ……!」
「ふふっ、そっか。じゃあ優翔が勝ったらどうする?あと、僕が勝ったら恋人になってもらうけどそれについては反論なし?」
「っ、俺は虎のこと好きなのやめたいだけだから……。」
「んー、それじゃ賭けにならないなぁ。まぁ、でも僕が勝てばいい話だもんね。」
その言葉と共に智也さんは俺の両腕を頭の上で抑え俺の上に跨った。
「え?……智也さん?」
「僕とタノシイことしようね。」
そうして智也さんは楽しそうに笑った。
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