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俺は君のヒーローだ。
17 彼女
しおりを挟む「真木、どうだうまいだろう!」
獅子角が、クレープ片手に嬉しそうに俺に聞く。
「あぁ。凄いな。ホイップの甘みと果物の酸味が丁度よく口の中で混じり合って……最高だな。」
俺がそう言うと獅子角はニカッと得意げに笑った。
「……獅子角は笑えばきっと人気者になるな。」
「ん?何か言ったか?」
「あぁ、いや獅子角は色々なものを知っているなと思って。」
クレープ屋に行く道中、獅子角は流行りの歌や人気のスイーツの話をしてくれた。
(……どの話も興味があったな。)
「……そうか?……でも、もしそうなら それはきっと、志野のお陰だ。」
少し照れて獅子角は言った。
「しの?……恋人か何かか?」
呼び捨てにするくらいだからそう言う関係かと思ったら、獅子角は溜め息をついた。
「志野は、クラスメイトだぞ。志野 咲彩。俺の後ろの席の奴だ。確か、松山とよく話していたはずだぞ?」
そう言われて考える。
(しの……さあや……幸太とよく居る女子……。……んー……男ならわかるのに、女子の顔が出てこない……。)
「……そんな女子いたか?」
諦めて聞くと獅子角は目を丸くしてから笑い出した。
「なんだよ。何かおかしかったか?」
「っ、くくっ、志野は、ふはっ、男だ。」
「……???……男?……あ!なんだ、じゃあ知っていたぞ!そうか、彼が志野か!」
自分が想像していた男が志野だとわかり嬉しくなって獅子角を見ると獅子角はまた笑い出した。
「……ふっ、ははっ、真木は良い人間だな。俺が好きな性格をして居る。」
「そ、そうか?えぇと、ありがとう?」
俺がそう言うと獅子角はまた笑い出した。
そんな会話をしながらクレープを完食し、目的のゲームセンターへ向かった。
「っ、やはり難しいな。」
クレーンゲームと睨めっこをしながら呟くと、獅子角がまた笑い出した。
「ふはっ、真木は期待を裏切らないな。」
「どう言う意味だそれ?」
俺が振り返って聞くと、獅子角の手には既に小悪魔モモンガと小悪魔ベアーのぬいぐるみが2体ずついた。
「……獅子角、その手に入るのは……何故?!」
「得意なんだ。」
「……凄いな、俺なんて全然出来なかった。」
俺の言葉を聞いた獅子角は少し考えてから一緒にクレーンゲームをしてアドバイスをすると言う提案をしてくれた。
「……と、れた……!」
「やったな!真木!」
獅子角のアドバイスは的確でさっきまでの苦戦が嘘のようにぬいぐるみたちが手の中に来た。
「……あれ?優翔?」
耳に声が入った。
「ん?真木の知り合いか?」
「あ、やっぱり優翔だ~。嬉しいなぁ、お休みの日に会えるなんて。」
私服の智也さんが俺に近く。
何故だか心臓のあたりがざわついた。
「……獅子角、俺の先輩の伊藤智也さんだ。智也さん、同級生の獅子角玲雅だ。」
とりあえず、簡単に智也さんと獅子角の紹介をした。
(なんだ、嫌な予感がする。)
「そっか、優翔の友達か~。よろしくね、獅子角くん。」
「……あぁ。」
智也さんはニコニコしながら、獅子角は少し警戒しながら挨拶を交わしていた。
「……ん?!真木、悪い今何時だ!?」
獅子角は、急に思い出したように俺の腕を掴んだ。
「ん?……あぁ、17時過ぎくらいだ。」
「っ、誘ったのに悪い。用事があるから帰らないといけないんだ。」
「え、あぁ。平気だ。獅子角のおかげでこいつらが取れたし。用事があるなら仕方ないだろう。」
「あぁ、ありがとう。」
そう言い残して、獅子角は風のように去っていった。
「……面白い子だね~。あ、そういえば、優翔って弟いる?」
「え?いませんけど。」
「ん?そうなの?一緒に帰った時、ベランダにいる子と目があったから弟だと思ったんだけど……。」
そう言われて、少し考える。
(……ベランダ……もしかして、俺の部屋のか?一緒に帰った日ってことは……もしかして……虎か?)
「……多分、それは俺の幼馴染です。それで、そいつがどうかしたんですか?」
「あ、そうなんだ……さっきすれ違ってね、女の子といたから彼女かなぁって。弟だと思ってたからお兄ちゃんが知ってるのか聞いてみよ~って思ったんだけど……違うんだもんね。」
「……女の子と?」
「え、うん。仲よさそうに歩いてたし……女の子の方は少し緊張してたみたいだからデートかなって……。」
心が重たくて、苦しくて……急に時間が止まったみたいだった。
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