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俺は君のヒーローだ。

6 委員会と国語科係

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 次の日になって、俺は虎と、そして途中から乱入してきた幸太と一緒に学校へ向かった。

 昨日の様にたわいもない話をしながら田中先生を待つ。

「真木ちゃん、委員会何するか決めた?」

 虎が首を傾げながら俺をみた。

(くっ、朝から天使っ!)

「…まだ。」

「あ、それなら中学の時みたいに俺と同じのにしょーよ!」

 幸太が俺机から身を乗り出して俺に言う。

 すると、俺の机に頬を置いて居た虎がガタンと音を立てて立ち上がる。

「真木ちゃん、僕と一緒にするよね?」

 ニコッと俺を見る。

(あー、可愛い。答えなんてイエス以外言えるわけないだろう!というか可愛いっ!)

「ん。」

 俺がそう言うと、幸太も立ち上がる。

「えぇーー!!なんで!そこは、俺と一緒にする流れじゃん!」

「中学から一緒なら、高校ではいいんじゃないの?」

「中学から一緒だからこそ、高校でも同じにしたいんじゃん!つか、なんで原が答えるんだよ!」

「なんでって、松山が煩いからだけど?」

「煩くないし、煩いのは関係ないと思うんだけど?」

 上げた口角を2人ともピクピクさせながら俺を挟んで言い争いをする。

(んー、やっぱり合わないんだな。うん。なんか、そう言う事にしておこう。)

 完全に空気と化した俺は教室や窓の外を見る。

(人、集まってきたなぁ…外にも結構いるな…)

 俺たちしか居なかった教室には半分以上の人がいる。
 入学式の次の日だと言うのに、もうクラスではグループができているようで程よい騒がしさがあった。

 しばらくして、先生が教室に入ってきた。

「おー、よし。今日も全員いるなー。そんで、窓側は本当に仲が良いなぁ。」

 まだ、立って言い争って居た2人と挟まれている俺を見て先生が言うと、虎と幸太が同時に
「違います!」
と言って着席した。

先生は
「真木、朝からお疲れ。よくわからんが先生は、お前を応援してるぞ。」
と言ってから号令をかけて挨拶をした。

「よし、今日は昨日も言った通り委員会決めと教科書配布がある。はじめに委員会決めをする。黒板に係委員会等を書いておくので、一限が始まるまでに考えておくように。」

 先生はそう言って、休憩の合図をしてから黒板に向かい合った。

 カツカツとチョークの音が耳に入る。

「真木ちゃん、何しようか。」

「いやいや、優翔は俺と一緒だもんなー?」

(この2人、まだやってたのか……)

 虎と一緒にやりたいとは思うものの…ここで自分の思いを通せば幸太が面倒だし、逆は逆で虎が悲しみそうだった。

(んー、どう転んでも俺が不利だな…。)

 書き終わったのかチョークの音が消えて、先生が近付いてくる。

「…窓側は騒がしいが、やりたいの決まってるのかー?」

「……いえ。」

「じゃあ、国語科係とかやるかー?」

 その言葉に両サイドの気配がギラリと変わった。

「……国語科係?」

「あぁ、やる事は俺の雑よ、コホン、サポートみたいなもんだから1人しか枠はないけどな。」

 1人という言葉に2人が落ち込む気配がした。

(だが、これは1番平和な解決方法では……?)

「…やりたいです。」

「そうか!でも、他の人と被ったら平等に話し合いかじゃんけんできめるんだぞ。」

 そう言うと、先生はニコッと笑って教卓前に戻って行った。

 そうして、俺は無事に国語科係になり…虎は1人枠の図書委員、幸太は男女1名枠の体育祭実行委員になった。


 それから、教科書をもらい帰りのホームルームになった。

「明日は、午前は授業で、数学、理科、英語、国語がある。午後は部活動体験があるぞ。見学は強制じゃないから行かない人は午前だけだ。まぁ、出来るだけ行った方がいいとは思うけどなー。はい、連絡は以上だ。」

 そう言って、先生は号令係に声を掛けた。

「起立、礼。」

「「「さよーなら」」」

 こうして、2日目の学校が終わった。
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