5 / 68
俺は君のヒーローだ。
2 幼馴染の仮面
しおりを挟むまだ、頭の整理が追いつかない俺を置いて虎がどんどん話を続ける。
「中学の時に付き合ってたんだけどね…高校の願書出す時になって、『同じ高校行くんだよね!?』って急に言われてね?…僕、真木ちゃんと高校行くってずっと決めてたからさ、『え、一緒がいいならいいけど、君と同じ偏差値に合わせる気ないよ?』って言ったら、『さいっってー』って、言われて平手喰らったんだよね…。」
(いや、まて…頭が追いつかない。が、とりあえず!とりあえず!)
「それは…虎が、悪いだろ。」
俺がそう言うと、虎が驚いて俺を見た。
「えぇ!!なんで!?」
(えぇ…なんでって…えぇ…虎さ~ん?)
「…付き合ってるなら、志望校くらい教えた方が良かっただろ。それと、言い方が…良くない。…俺が、……か、…彼女の、立場でも…多分、虎に平手する。」
虎は、俺の話を聞いて納得したように頷いてから、でも…と、口を開いた。
「僕…高校は、ずっと真木ちゃんと一緒って決めてたし…真木ちゃん、頭凄くいいから…真木ちゃんの志望校に合わせられるようにって、いっぱい勉強したんだよ…。それなのに、『私と一緒の所に行くのが普通でしょ?』みたいに言われたから…イラッとしちゃって…。」
(…虎、俺の為に…勉強、頑張ったのか…。)
その事が嬉しくて少し顔が緩む。
「確かに、僕だって志望校言わなかったけど…彼女だって、聞かなかったし…願書出す時に言うって、おかしいじゃない?…だから、高校別でもいいんだなぁって、思ってたんだよ…。これって、やっぱり僕が悪いの?!」
少し涙目になった虎が俺を見上げて聞く。
「っ、…ぁー、………2人とも、言葉が…足りなかった、と思う…。」
「じゃあ、両成敗?」
「あぁ。」
そう答えてから、ふと思った事を虎に聞く。
「…虎は…その子が好きだったのか?」
「え?………どう、して?」
「…好きなら、何よりも先に優先すると、思うから…。」
(俺は…何よりも先に…虎を優先する…。)
そう思って、なぜか苦しくなって唇を噛んだ。
「…僕が、1番優先するのは真木ちゃんだよ。…真木ちゃん、だけだよ…。」
虎は小さくなにかを言って俺のワイシャツの裾を掴んで立ち止まった。
「…虎…?」
俺が振り返ると、虎は俯いていて表情が上手く見れなかった。
「………分かんないや」
顔をあげてヘラっと笑って虎は言った。
「え?」
「告白されたから、何となく付き合ってみたんだけど…好きって、難しいねぇ~」
(……虎…?…なんで…泣きそうに、そんな事…言うんだ…?)
虎は、笑顔の仮面をつけながらそう言うけれど俺には、今にも泣き出しそうな顔にしか見えなかった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
小犬の気持ち
はづき惣
BL
ある日の放課後、平凡な高校生の白井那月(しらいなつき)が、美形で人気者の九条龍臣(くじょうたつおみ)に呼び止められ、訳も分からないままに、話がすれ違い、どうにもならなくなる話。話の流れ的に那月はほぼ話しません。その後からは少し話します。今は結構話す様になりました。誤字脱字ごめんなさい。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる