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僕の家族の話

僕の家族の話とそれを書く理由

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僕は、この家の初めての子供として生まれた。

今では、家の住人は4人。

1人は、心が弱い人。
1人は、いじめられた過去を持つ癇癪持ち。
1人は、施設経験のある子供。
1人は、家庭の影響でPTSD気味の人。

僕が、この家が異常で壊れてるって自覚し始めたのはつい最近。

それまでは、それが普通で、当たり前のことだと思っていた。

「悲しくなるのは、僕が弱いから
苦しくなるのは、僕の努力が足りないから
嫌いだと思うのは、僕の心が狭いから
この家のにんげんが消えればいいと思うのは、僕が悪い奴だから
だから、そんな考えをする僕が消えればいい」
これは、中学生の時に、自分が家庭環境によって壊れないように、ボロボロの心で考えたことだ。

「世界を呪うのは、あいつらと一緒だから、それだけにはなりたくないから」
そんな思いも一緒に詰め込んでいた。

高校生の時、本当に耐え切れなくなったのか、無意識にスマートフォンで「自殺」って調べていた。

家への帰り道は、いつも死にたくて

大学生2年生の時に「このまま帰るくらいなら、死んでしまおうか」そう思った。

そうして、2年生の終わりに、この家の子供が自宅から警察に保護されて施設へ行った。

この時に、僕も一緒に警察に行った。
「母親はネグレクトで、父親は怒ると話が通じない」そう、警察のだと判断できる大人がそう言っているのを聞いて、やっと(あぁ、僕はおかしくなかったんだ。やっぱり、この家はおかしかったんだ。僕の、苦しいとか、悲しいとか、怖いって気持ちは、あっていいものなんだ)ってそう、自覚できた。

それでも、僕が我慢したからあの子は施設に行ってしまった。そういう思いが拭えなかった。
僕がもっと早く大人に助けを求めていれば…。けれど、何を助けて貰えばよかったのかも、どう伝えればよかったのかも、僕にはわからなかった。
でも、きっと、僕が助けを求めれば、あの子は今よりもっと早くに助けてもらえたのかもしれない。

そうして、あの子がいない日々が始まった。
始まって早々、「家族力合わせて、あの子が戻ってこれる家にしよう」そんな言葉に、反吐が出そうになった。
そもそも、何年も前に僕の家族はあの子だけだって考えるようにしていた。
それを、今更、何を言っているんだとそう思った。
それに、「長男の時は何も問題がなくて、あいつは普通に育ったのに、なんで、あの子だけ連れていかれるんだ!おかしいだろ!」っていう親の言葉が可笑しくて、可笑しくて、僕が自殺したら、こいつらは何が問題だったのかすらわからないんだろうなって笑いたくなった。

3年生になる前に、あの子が施設から戻ってきた。

あの子は迎えに行った僕を見て泣き出して、僕の手を離さなかった。


そして、今の僕はまだ大学3年生で、絶賛過去の記憶に囚われて、ただ、泣いている。

形容し難い親の放った言葉に対する気持ち悪さと、その思考になってしまうんじゃないかという恐怖とか、色々混ぜ合わされて、自分の心だけじゃ苦しくて、この文を書いている。

友達も恋人もいるのに、こんな話をされたらどう思うんだろうと考えると言葉に出せなかった。それに、過去に囚われてるから助けて、だなんてどうすることもできないことを言えなかった。

それに、その話を聞いて僕を見る目が変わってしまうんじゃないだろうかと思うと、言い難い恐怖が僕の言葉を奪った。

それでも、忘れてしまいたい僕の感情を奪った理由達を、いつか大切な人に話せるように、僕が同じことをしないように、ここに記していこうと思う。
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