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第4章 女装男子とラブラブに
11 三人
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「…俺、喧嘩やめる。」
高2の2学期…冬が突然、俺に言った。でも、その視線の先には俺は居なかった。
高2の2学期。転校生が来た。奏多 絽衣。そいつは、へにゃっと笑うような奴で…いつも笑っていた。真っ白な肌が、女みたいでからかわれた時も困ったように笑っていた。
俺は、そいつが嫌いだった。いや、この際正直に言おう。俺は、そいつが死ぬほど大嫌いだった。
理由は簡単で…冬が、そいつが来てから変わったからだ。俺は、その頃真面目に冬が大好きで…馬鹿みたいに冬以外考えられないくらい好きだった。冬ばかり見てた。
なのに…冬は、突然本物の優等生に変わった。転校生の…おかげで…。喧嘩をやめる宣言の視線の先も俺じゃなくて転校生で…。冬は、高校にいる時に俺をあまり見なくなった。転校生ばかり、見るようになった。それも、今まで見た事ないくらい切なそうな、でも、どこかうっとりした顔をして。
俺は、転校生が大嫌いだった。名前を聞くのすら反吐がでるくらい嫌いだった。
俺から、冬を奪うから。
大嫌いだった。
だけど、冬が仲良くするから。冬が、俺の全てだから…。
だから、無理矢理仲良くしてた。冬を悲しませたくなかったから。全ては、冬の笑顔を守るためだった。
なのに…
「…軌良君…別れよう。」
「………は?」
「…赤じゃなかった…」
「…なに、が?」
「…運命。俺と、軌良君の糸は…赤じゃ、なかった。」
頭が、追いつかなかった。だって、俺は…俺は、冬が好きで、冬の運命だと…。なのに……運命じゃ、ない…?
(じゃあ、俺じゃないなら、冬の赤は?……冬の本物の運命は?)
その時、転校生が頭をよぎった。
(やっぱりあいつ、嫌いだ。…大嫌いだ。)
でも、違った。嫌うのは転校生じゃなかった。悲しいのは、苦しいのは…俺じゃ、なかった。俺より、苦しい人…目の前にいた。
「…軌良君の、糸…赤い糸…絽衣君と、繋がってた。」
「…は?」
「…俺じゃ、なかった…軌良君の、糸じゃなかった…。俺じゃ、無い…俺じゃ、俺じゃない!俺じゃ、ないんだよ!」
冬は、そう叫ぶように言って泣き崩れた。
「…はい、軌良くん…コーヒー。」
冬が、ニコッと笑ってカップをくれた。
「あぁ、サンキュ…。そういや、お前…高2の時2週間くらい休んでた時あったよな。」
「…ん?どうしたの?急に…」
「いや、思い出したんだけどよ…すげぇ、その、落ち込んだ時、あったじゃん?」
「あー、僕が運命の糸に弄ばれていた時ねー」
「…まぁ、そういう時期だな…。あと、僕ってやめろよ気持ち悪い。」
「ええー?やだよー…まーくんにボロ出すかもしれないじゃん。」
本当に、細心の注意を払って弟に接してたんだろう。冬は、へらっとしながらだけど…割と真面目に、俺を見た。それだけ、弟を…大事にしてるんだろう。
「…そう、か。まぁ、ならそれはいい。で、2週間くらい休んで復活したら…滅茶苦茶元気になってたじゃん?あれって、なんでだったの?」
冬は俺をふった日、今まで見た事ないくらい涙を流して居た。それから2週間くらい休んで復活した冬はあの涙は何処へやら…小学校の頃に戻ったみたいに俺へのイタズラを再開して、付き合って居た頃が嘘のように冬は、また変わった。
「あぁ、最初の1週間は死のうかなって思って…9日目に運命を恨んで、10日目に赤い糸を憎んで、13日目に、赤い糸を引きちぎったりしたんだよねー、たぶん。」
「え、そんな?」
「うん、そんな。んで、赤い糸に解放されたーと思って、吹っ切れて学校に行った、みたいな」
冬はそう言って笑って、自分の左手の薬指を見た。
「僕のね、この指に…まだあるんだ。真っ赤な千切れた糸が。それで…もう1人、薬指に千切れた赤い糸を持っている人を見つけたんだけど…」
からんからん
冬の言葉を遮る様にしてドアが開いた。
「まーくん、お帰り。」
「…あ、ただいまです。冬也さん。」
冬が、弟を見て優しい顔をした。その顔は、兄貴の顔にも見えたけど…でも…。
(…もしかして…)
千切れた赤い糸は…もう、繋がらないのだろうか。
もう、元には戻せないのだろうか…。
狂った運命は、歯車を正すために…新たな運命を、入れたのだろうか…。
もし、もし…まだ、望みがあるのなら。
まだ、新たな運命が、歯車を正しきれていないなら…。
(冬…俺は、おまえが…幸せになってほしいよ。)
大好きだった。
…そんな言葉、言いたくない。
気持ちを過去にしたくない。
でも、運命は絶対だから。
俺は、お前とは繋がらない。
心で叫んでも届かない。
俺には、見えていない未来へ続く糸。
君が、見ている運命の世界。
運命は、絶対。だけど、俺は…
お前が…。
(…お前には、幸せになってもらわねぇと…困るんだよ。)
高2の2学期…冬が突然、俺に言った。でも、その視線の先には俺は居なかった。
高2の2学期。転校生が来た。奏多 絽衣。そいつは、へにゃっと笑うような奴で…いつも笑っていた。真っ白な肌が、女みたいでからかわれた時も困ったように笑っていた。
俺は、そいつが嫌いだった。いや、この際正直に言おう。俺は、そいつが死ぬほど大嫌いだった。
理由は簡単で…冬が、そいつが来てから変わったからだ。俺は、その頃真面目に冬が大好きで…馬鹿みたいに冬以外考えられないくらい好きだった。冬ばかり見てた。
なのに…冬は、突然本物の優等生に変わった。転校生の…おかげで…。喧嘩をやめる宣言の視線の先も俺じゃなくて転校生で…。冬は、高校にいる時に俺をあまり見なくなった。転校生ばかり、見るようになった。それも、今まで見た事ないくらい切なそうな、でも、どこかうっとりした顔をして。
俺は、転校生が大嫌いだった。名前を聞くのすら反吐がでるくらい嫌いだった。
俺から、冬を奪うから。
大嫌いだった。
だけど、冬が仲良くするから。冬が、俺の全てだから…。
だから、無理矢理仲良くしてた。冬を悲しませたくなかったから。全ては、冬の笑顔を守るためだった。
なのに…
「…軌良君…別れよう。」
「………は?」
「…赤じゃなかった…」
「…なに、が?」
「…運命。俺と、軌良君の糸は…赤じゃ、なかった。」
頭が、追いつかなかった。だって、俺は…俺は、冬が好きで、冬の運命だと…。なのに……運命じゃ、ない…?
(じゃあ、俺じゃないなら、冬の赤は?……冬の本物の運命は?)
その時、転校生が頭をよぎった。
(やっぱりあいつ、嫌いだ。…大嫌いだ。)
でも、違った。嫌うのは転校生じゃなかった。悲しいのは、苦しいのは…俺じゃ、なかった。俺より、苦しい人…目の前にいた。
「…軌良君の、糸…赤い糸…絽衣君と、繋がってた。」
「…は?」
「…俺じゃ、なかった…軌良君の、糸じゃなかった…。俺じゃ、無い…俺じゃ、俺じゃない!俺じゃ、ないんだよ!」
冬は、そう叫ぶように言って泣き崩れた。
「…はい、軌良くん…コーヒー。」
冬が、ニコッと笑ってカップをくれた。
「あぁ、サンキュ…。そういや、お前…高2の時2週間くらい休んでた時あったよな。」
「…ん?どうしたの?急に…」
「いや、思い出したんだけどよ…すげぇ、その、落ち込んだ時、あったじゃん?」
「あー、僕が運命の糸に弄ばれていた時ねー」
「…まぁ、そういう時期だな…。あと、僕ってやめろよ気持ち悪い。」
「ええー?やだよー…まーくんにボロ出すかもしれないじゃん。」
本当に、細心の注意を払って弟に接してたんだろう。冬は、へらっとしながらだけど…割と真面目に、俺を見た。それだけ、弟を…大事にしてるんだろう。
「…そう、か。まぁ、ならそれはいい。で、2週間くらい休んで復活したら…滅茶苦茶元気になってたじゃん?あれって、なんでだったの?」
冬は俺をふった日、今まで見た事ないくらい涙を流して居た。それから2週間くらい休んで復活した冬はあの涙は何処へやら…小学校の頃に戻ったみたいに俺へのイタズラを再開して、付き合って居た頃が嘘のように冬は、また変わった。
「あぁ、最初の1週間は死のうかなって思って…9日目に運命を恨んで、10日目に赤い糸を憎んで、13日目に、赤い糸を引きちぎったりしたんだよねー、たぶん。」
「え、そんな?」
「うん、そんな。んで、赤い糸に解放されたーと思って、吹っ切れて学校に行った、みたいな」
冬はそう言って笑って、自分の左手の薬指を見た。
「僕のね、この指に…まだあるんだ。真っ赤な千切れた糸が。それで…もう1人、薬指に千切れた赤い糸を持っている人を見つけたんだけど…」
からんからん
冬の言葉を遮る様にしてドアが開いた。
「まーくん、お帰り。」
「…あ、ただいまです。冬也さん。」
冬が、弟を見て優しい顔をした。その顔は、兄貴の顔にも見えたけど…でも…。
(…もしかして…)
千切れた赤い糸は…もう、繋がらないのだろうか。
もう、元には戻せないのだろうか…。
狂った運命は、歯車を正すために…新たな運命を、入れたのだろうか…。
もし、もし…まだ、望みがあるのなら。
まだ、新たな運命が、歯車を正しきれていないなら…。
(冬…俺は、おまえが…幸せになってほしいよ。)
大好きだった。
…そんな言葉、言いたくない。
気持ちを過去にしたくない。
でも、運命は絶対だから。
俺は、お前とは繋がらない。
心で叫んでも届かない。
俺には、見えていない未来へ続く糸。
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運命は、絶対。だけど、俺は…
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