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第2章 女装をしない女装男子にはラブラブなんて程遠い【真琴編】
偽りの光
しおりを挟む(怖い。裏切られる。独りになる。)
(俺は…気持ち悪いんだ。普通じゃないんだ。)
「真琴…?」
その声は、俺にとっての心から救い出してくれる光に近かった。
「だ…れ…?」
でも、それは朔弥でも、もちろん秋桐でもなく、絽紀だった。
「俺だよ。絽紀。」
絽紀の声は暖かく優しかった。
「…絽…紀。」
俺は、馬鹿だった。
ただ、独りになりたくなかったから。異常じゃなくなりたかったから。
絽紀なら平気だ、同じなんだから。
"絽紀も同じなんだから"
そう思ってしまった。
絽紀と自分の共通点。でも、本当は違う事、わかってたのに。
本当は絽紀は、自分を殺してる。女装なんか、したくないって思ってる。
でも、俺は…。俺は、可愛いのが好きなだけ。俺は、可愛くないのが…嫌いなだけ。
絽紀とは違うのに…。
独りが怖くて、逃げ道を無理矢理 絽紀に押し付けた。
「真琴、どうしたの……泣いてるの?」
絽紀はそう言って心配そうに俺を見ていた。
「…は……できる?」
「え…真琴?もう一回、言って?」
俺は、絽紀の顔をみて涙が溢れるのも気にせずに言った。
「絽紀は、友達にキスできる?」
俺の言葉を聞いて絽紀は目を丸くした。それから、俺の手首を優しく掴んで歩き出した。
「…その、キスって…口にって事、だよな。」
歩きながら俺に聞く。でも、俺は何も答えなかった。
絽紀は、俺の無言に何かを察したみたいだった。
「…口になんだな…。それって、キスしたやつが…友達だって思ってなかったって事じゃない?だから、友達にはキスはできないよ。友達だと思ってないんだから。」
「…やっぱり…そぅ…だよね…。」
俺が弱々しくそういうと、絽紀は歩くのを一旦止めて俺の方を振り返った。
「…それで、されたの?それとも、されてたの?」
「……。」
俺が無言を貫いていると「ふぅ」と息を吐いてまた歩き出した。
「とりあえず、俺が前向いてる間に涙枯らしとけ。」
絽紀の掴んだ手首はあったかくて、俺は独りじゃないんだって思えた。
たとえ、それが俺が無理矢理作った偽りの光だとしても。
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