女装男子だけどね?

ここクマ

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第1章 女装男子と天然ボーイは恋をする

君が好きだから。

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俺は、男だよ。そう告げて秋桐を解放してやりたい。でも、まだ俺はこいつと一緒に居たい。嫌われたくない。

男だって言ったら…秋桐は、俺を嫌って騙された事に傷付いて、もう2度と俺と関わろうとしてくれないだろう。

それくらい、秋桐は純粋で可愛くて優しくていい奴の塊で…。

俺は、秋桐を失いたくない。


でも、でも…

「応援するよ」

朔弥の言葉を思い出す。

秋桐の事…好きでもいいんだよな…。
あの時朔弥に撫でられた頭に自分の手を置きながら考える。

まずは、俺が男だって言わないと…。

秋桐からの映画の誘いのメールを思い出す。
(まだ、返信してないんだよな…。)
俺が秋桐を好きだと気付いてから女装とかしてないし…2回目のデート…。
正直、もっと会いたいし…デートもしたい。でも、秋桐が望んでいるのは“花宮 琴”だから…。秋桐に申し訳ない。嘘をついたまま秋桐と付き合いたくない。秋桐が可哀想だ。

それに…華宮真琴が片岡秋桐を好きなんだ。


「…2回目のデートは、もう来ないな…。」





















*   *   *    *    



「ごめんな、呼び出しちゃって」

俺が秋桐に言う。

「いえ、いいんです。僕、嬉しかったんですから。」

照れながら本当に嬉しそうに秋桐が言う。

「秋桐…俺の事…好き?」

真剣に、俺が言う。
秋桐は、それを感じ取ったのか俺の方を真っ直ぐ見て

「僕は、花宮琴さん。あなたが好きです。」 

そう言う。

「…そっか…。」

「でも、急にどうしたんですか?」

秋桐は、首をかしげる。

「秋桐、俺は…お前の好きを受け取れない。」

秋桐から目を逸らして俺が言う。

「ぇ…?」

「俺は、お前が望むような人間じゃない。」

秋桐は、呆然と、でも何かを言おうと、言葉を繋げようと口を動かす。

(ダメだ、秋桐に何か言われたら心折れる。)

そう思って反論の隙を与えないように言葉を続ける。

「俺は」














*   *   *   *



暗い部屋の中、携帯を見つめる1人の男。

「俺は…好き…でも…お前は…」

メールが来た。

“行ってくる。”
“頑張る。”
“ありがとう。”


好きな人からメールが来た。

「俺が、初めからお前が男だって言ってたら…。お前は、こんな思いしなかったのに。お前は、あいつに恋なんてしなかったのに。」

自分で、自分の首を絞めた。

そんな気分だった。

でも…。

『応援するよ。』

お前が好きだから。

“頑張れ”

一言、それでお前が幸せになれるなら。お前が、前に進める手助けをできるなら。

例えそれが自分の幸せと正反対の事でも。


メールの送信ボタンを押す。


頑張れ。俺の分まで。

「だから…諦めるなんて…言うなよな。」

君が、幸せであったなら。


朔弥は、1人。暗い部屋で幸せを願った。

1人の大好きな友人のために。






「俺は…真琴が好きだよ…。」



居ない彼に向けて朔弥は言った。

届かない想いを今だけは解放した。










君が…好きだから。
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