9 / 155
第1章 女装男子と天然ボーイは恋をする
君が好きだから。
しおりを挟む
俺は、男だよ。そう告げて秋桐を解放してやりたい。でも、まだ俺はこいつと一緒に居たい。嫌われたくない。
男だって言ったら…秋桐は、俺を嫌って騙された事に傷付いて、もう2度と俺と関わろうとしてくれないだろう。
それくらい、秋桐は純粋で可愛くて優しくていい奴の塊で…。
俺は、秋桐を失いたくない。
でも、でも…
「応援するよ」
朔弥の言葉を思い出す。
秋桐の事…好きでもいいんだよな…。
あの時朔弥に撫でられた頭に自分の手を置きながら考える。
まずは、俺が男だって言わないと…。
秋桐からの映画の誘いのメールを思い出す。
(まだ、返信してないんだよな…。)
俺が秋桐を好きだと気付いてから女装とかしてないし…2回目のデート…。
正直、もっと会いたいし…デートもしたい。でも、秋桐が望んでいるのは“花宮 琴”だから…。秋桐に申し訳ない。嘘をついたまま秋桐と付き合いたくない。秋桐が可哀想だ。
それに…華宮真琴が片岡秋桐を好きなんだ。
「…2回目のデートは、もう来ないな…。」
* * * *
「ごめんな、呼び出しちゃって」
俺が秋桐に言う。
「いえ、いいんです。僕、嬉しかったんですから。」
照れながら本当に嬉しそうに秋桐が言う。
「秋桐…俺の事…好き?」
真剣に、俺が言う。
秋桐は、それを感じ取ったのか俺の方を真っ直ぐ見て
「僕は、花宮琴さん。あなたが好きです。」
そう言う。
「…そっか…。」
「でも、急にどうしたんですか?」
秋桐は、首をかしげる。
「秋桐、俺は…お前の好きを受け取れない。」
秋桐から目を逸らして俺が言う。
「ぇ…?」
「俺は、お前が望むような人間じゃない。」
秋桐は、呆然と、でも何かを言おうと、言葉を繋げようと口を動かす。
(ダメだ、秋桐に何か言われたら心折れる。)
そう思って反論の隙を与えないように言葉を続ける。
「俺は」
* * * *
暗い部屋の中、携帯を見つめる1人の男。
「俺は…好き…でも…お前は…」
メールが来た。
“行ってくる。”
“頑張る。”
“ありがとう。”
好きな人からメールが来た。
「俺が、初めからお前が男だって言ってたら…。お前は、こんな思いしなかったのに。お前は、あいつに恋なんてしなかったのに。」
自分で、自分の首を絞めた。
そんな気分だった。
でも…。
『応援するよ。』
お前が好きだから。
“頑張れ”
一言、それでお前が幸せになれるなら。お前が、前に進める手助けをできるなら。
例えそれが自分の幸せと正反対の事でも。
メールの送信ボタンを押す。
頑張れ。俺の分まで。
「だから…諦めるなんて…言うなよな。」
君が、幸せであったなら。
朔弥は、1人。暗い部屋で幸せを願った。
1人の大好きな友人のために。
「俺は…真琴が好きだよ…。」
居ない彼に向けて朔弥は言った。
届かない想いを今だけは解放した。
君が…好きだから。
男だって言ったら…秋桐は、俺を嫌って騙された事に傷付いて、もう2度と俺と関わろうとしてくれないだろう。
それくらい、秋桐は純粋で可愛くて優しくていい奴の塊で…。
俺は、秋桐を失いたくない。
でも、でも…
「応援するよ」
朔弥の言葉を思い出す。
秋桐の事…好きでもいいんだよな…。
あの時朔弥に撫でられた頭に自分の手を置きながら考える。
まずは、俺が男だって言わないと…。
秋桐からの映画の誘いのメールを思い出す。
(まだ、返信してないんだよな…。)
俺が秋桐を好きだと気付いてから女装とかしてないし…2回目のデート…。
正直、もっと会いたいし…デートもしたい。でも、秋桐が望んでいるのは“花宮 琴”だから…。秋桐に申し訳ない。嘘をついたまま秋桐と付き合いたくない。秋桐が可哀想だ。
それに…華宮真琴が片岡秋桐を好きなんだ。
「…2回目のデートは、もう来ないな…。」
* * * *
「ごめんな、呼び出しちゃって」
俺が秋桐に言う。
「いえ、いいんです。僕、嬉しかったんですから。」
照れながら本当に嬉しそうに秋桐が言う。
「秋桐…俺の事…好き?」
真剣に、俺が言う。
秋桐は、それを感じ取ったのか俺の方を真っ直ぐ見て
「僕は、花宮琴さん。あなたが好きです。」
そう言う。
「…そっか…。」
「でも、急にどうしたんですか?」
秋桐は、首をかしげる。
「秋桐、俺は…お前の好きを受け取れない。」
秋桐から目を逸らして俺が言う。
「ぇ…?」
「俺は、お前が望むような人間じゃない。」
秋桐は、呆然と、でも何かを言おうと、言葉を繋げようと口を動かす。
(ダメだ、秋桐に何か言われたら心折れる。)
そう思って反論の隙を与えないように言葉を続ける。
「俺は」
* * * *
暗い部屋の中、携帯を見つめる1人の男。
「俺は…好き…でも…お前は…」
メールが来た。
“行ってくる。”
“頑張る。”
“ありがとう。”
好きな人からメールが来た。
「俺が、初めからお前が男だって言ってたら…。お前は、こんな思いしなかったのに。お前は、あいつに恋なんてしなかったのに。」
自分で、自分の首を絞めた。
そんな気分だった。
でも…。
『応援するよ。』
お前が好きだから。
“頑張れ”
一言、それでお前が幸せになれるなら。お前が、前に進める手助けをできるなら。
例えそれが自分の幸せと正反対の事でも。
メールの送信ボタンを押す。
頑張れ。俺の分まで。
「だから…諦めるなんて…言うなよな。」
君が、幸せであったなら。
朔弥は、1人。暗い部屋で幸せを願った。
1人の大好きな友人のために。
「俺は…真琴が好きだよ…。」
居ない彼に向けて朔弥は言った。
届かない想いを今だけは解放した。
君が…好きだから。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる