136 / 155
第5章 女装男子と永遠に
19 蒼い炎side秋桐
しおりを挟む僕は、知らない。
真琴がどうして彼女に執着するのか。
僕には、わからない。
殺されかけてまで、彼女の気持ちを知りたいと言う真琴の事が。
頭では、きっとわかっている……彼女に合って話を聞くことが、真琴にとって大切な事なんだって…。
それでも、どこか置いていかれてしまうような感覚と、分からないままの真琴の気持ちに胸がざわついた。
真琴から離れるように歩き出した彼女の目に溜まる涙を見て分かった。
(あの子は…真琴が好きなんだ…。)
彼女をそのまま行かせれば、きっと真琴は彼女の気持ちに触れないまま…
けれど、進めないまま僕の隣に居るんだろう。
心が揺らぐ、僕の欲と真琴の心。
「待ってよ!」
真琴の悲しい叫びに、僕は歩き出していた。
「美緒ちゃん…?」
泣いている彼女を見て、真琴は不安な顔をした。きっと、どうして泣いて居るのか理解できていないんだろう。
「……いっそ、死んでくれればよかったのに……」
彼女が、唇を噛みながら涙とともに言葉を落とす。
僕は、その言葉に拳を握りしめた。
「……そうすれば、私も一緒に居なくなれたのに……」
歪んでる。黒くて、暗くてドロドロした彼女の言葉。
僕は、真琴の耳を塞いで、彼女を突き飛ばしてここから離れたかった。
けれど、真琴は彼女に手を伸ばした。
「俺は…君と一緒には死なないよ。」
真琴と一瞬目があった気がした。
「俺には、ずっと一緒にいるって決めた人が居るから……それに、俺が君に殺されたら、そいつは凄い形相で君を恨みに行くと思うし…そんな事、大事な人にさせられない。」
「じゃあ!私はどうすればよかったのよ!」
彼女が真琴の手を払って叫ぶ。
「一緒には、死なない。けど、一緒に生きようよ。それじゃ、ダメなの?」
真琴の言葉は残酷だ。きっと、まだ分かってないんだろう。本当の、彼女の気持ちを…。
「…ダメに、決まってんでしょ…!あんたの隣には、いつだって誰かが居るんだから!私の居場所なんて、あんたの中にはどこにも無いんだから!」
「っ、そんなこと!だって、前みたいに居れば……」
「前見たいって…あんたの友達として、一緒にいること?……あぁ、そうね、あんた私と友達に戻りたいとか言ってたわね。答えは、ノー。あんたとなんて、友達にはなれない。」
「っ……どうして…」
きっと、今種明かしを僕がするのは野暮なんだろう。でも、僕が言わないと真琴はまた落ち込んでグダグダして……彼女のことを考えるんだろう。
(それだったら…)
「真琴、僕もその子と友達に戻るのは難しいと思うよ。」
「っ、秋桐…なんで、そんな事」
「だって、僕と真琴が友達に戻る事だってできないでしょ?」
「それはそうだし、そんなの嫌だけ…ど…」
僕の言葉に流石の真琴も気が付いた様だった。
「……美緒ちゃんは…俺が…好き、なの?」
遠慮がちに聞いた真琴に彼女の頬が赤くなった。
僕は、この場所から早く逃げ出したかった。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる