女装男子だけどね?

ここクマ

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第5章 女装男子と永遠に

13 いじめside真琴

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 秋桐に病室で俺がどんな状態だったのかを聞いた。

(記憶喪失……女の子からの電話……俺を突き落とした女の子)

 正直、記憶喪失だった時の記憶が全く無いので、突然時間が進んだ感覚だった。

 けれど、携帯に登録されていた身に覚えのない[美緒ちゃん]の文字に記憶喪失が事実だとわかる。

(美緒ちゃん…って、もしかしなくても…あの美緒ちゃんだよね…。)

 嫌な記憶。

 ハイヒールの音。

 雨嫌いの根源。

 痛みに慣れてしまった原因。

 そして、美緒ちゃんに突然裏切られる辛さを始めて教えてもらった。

 どうしても、嫌いになれなくて…何かの間違いだと、なんども心で唱えた。

(…君の存在を忘れたことなんて、無かったよ…。)

 忘れたくても、忘れられないんだから。


「真琴……あと、お兄さんに聞いたんだ。その…真琴の事。待つ、って言ったのに…ごめん。」

 秋桐がベットの上の俺に頭を下げた。

(そうか……知られたのか……。)

「そーなんだ…ははは、冬也さん酷いなぁ…。でも、しょーがないか……」

「真琴、僕……なんて言ったらいいか…あの…」

「いいよ、秋桐。冬也さんにどう聞いたか知らないけど、俺は、信じてた友達…うん…俺を突き落とした女の子に裏切られて、それでも、俺はそれを信じられなくて…でもそれがきっかけで、中学の時にいじめられてた。」

 今でもたまに、夢に見る。

鉄の匂いと、生暖かい液体が体外にでる感覚。

そこにはいつもあの子が居た。


初めは、無視から始まった。

その後意味もなく笑われて、教科書やノートには落書きが沢山あった。

体育着は捨てられたり切られたり、上履きや革靴もそう。

鞄は、真冬のプールに捨てられたこともあった。


「どうしてだろうって、何がダメだったんだろうって、思ったよ。でも、理由なんて、初めから無かったんだ。」


ひと通りの物を滅茶苦茶にされた時、あの子に呼び出された。

待って居たのは男が2人。


「あの人等は、ストレス発散って言ってたかな。」

制服もボロボロになって、意識が飛びかけた時、あの子が大笑いしながら俺の前に現れた。

『こっちの方が、楽しいのね。』

そう呟いて。

それから、俺の髪を引っ張って無理矢理目線を合わせて言うんだ。

『また明日♡』


「まぁ、そんなこんなで身体中に傷があるんだよね。でも、そっか……俺、また美緒ちゃんに会っちゃったんだ……。」

 俺が窓の外を意味もなく見ると、秋桐は俺の手を握った。

「……僕は、真琴の側にいるから。今度は絶対に、離さないから。」
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