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第5章 女装男子と永遠に
6 告白side朔弥
しおりを挟む俺は何故だか、朝から絽紀に呼び出されて近所の公園にいた。
「それで、話って?」
平日の朝だからか、公園には俺と絽紀の2人だけだった。
「……僕ね、好きな人がいるんです。」
久し振りの絽紀の敬語に真面目な話なんだと分かった。
「………そ、うか。」
「はい。それで……それは……朔弥さんなんですけど、お願いがあって。」
「……はっ?!、お、俺?!」
さらっとした、告白に驚きを隠せないでいると絽紀は、「はい。」って言って笑った。
「は、はいって……」
「ははは、だって、本当の事だから。」
そう言った絽紀の顔は、少し悲しそうだった。
「なっ…んー………まぁ、いい……それで、お願いってなに?」
「……幸せに、なってください。」
「は?」
「……朔弥さん、嘘ついてるでしょ?だから、その嘘を辞めて、欲しいんです。素直に、なって欲しいんです。」
絽紀の言葉で反射的に笠谷の事が頭を掠めて、首を振る。
「俺は、嘘なんて付いてないよ?」
「……今、考えた人が居るでしょう?」
「べ、つに……誰も、考えてなんか……」
「……嘘を付いても苦しいだけだよ。それが、自分の心への嘘なら、尚更。」
「っでも!……嘘をつかなくても、苦しいままだった!」
「…………うん。そうだね。でも、自分の心に嘘を付いたままじゃ、幸せにはなれないよ。」
絽紀は、そう言って寂しそうに俯いた。
「……だけど、俺は、決めたんだ……。やめるって……終わりにするって……。」
「終わりにする前に、ちゃんと気持ちを伝えたの?ちゃんと、好きだって言った?」
「……言って、無いけど……でも、言ったって……」
「終わりにするなら、言わないとダメだよ。終わりするなら、嫌われたって……どう思われたっていいでしょ?」
絽紀の言葉に気持ちが揺らぐ。
「っ、で、でも……」
「朔弥さんの『終わり』は逃げだよ。自分の気持ちから逃げてるだけ……。だって、終わり終わり言ったって、まだ好きなんでしょ?」
風が吹いた。
「僕ね、しばらく日本から離れるんだ。だから、最後に自分の気持ちを言いに来たの。言わないで終わりにしても良かったけど、それじゃ駄目だなって、そう思ったから。」
絽紀は、拳を握りしめて俺を見た。
「それに……好きな人には、幸せになって欲しいから。あなたの幸せを望んでる人がいるって、知って欲しかったから。」
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