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第4章 女装男子とラブラブに
40 進む月には追いつけないのだろうかside梓暮
しおりを挟む「……」
ピッ
「さく!」
『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないためかかりません』
電話を切って溜息をつく。
(着拒…されてんだろうな…)
自業自得の言葉が頭を回る。自分のしてきた事…自分が傷付けてきた事。
それでも、好きだと認めてしまった。その事実は、もう2度と変えられない。
(きっと、俺は朔弥だけなんだ…好きになるのも…ずっと、隣に居たいと思うのも…逢いたいと涙を流すのも…全部、朔弥だけだったんだ…)
今更な考えで頭が埋め尽くされそうだった。
(俺が、素直に自分の気持ちを受け入れてれば…絶対…こんな事には…ならなかったのに…。朔弥を、傷付けずに済んだのに…)
大きな溜息の後、前髪を搔き上げて考える。
どこに行けば、朔弥に会えるのか。
大学は、夏休みだから居ないだろうしそもそも学生じゃないから勝手に入れないだろう。
となると、家か?
一番確率が高いけれど、もしいなかったら?
そうだ、毎日行けばいつかは会えるかもしれない…。
でもそれだとただのストーカーになってしまう。
(…というより、もし会えたとして…俺は、なんて言おう。いや…考えるのは、後だな…とりあえず家に行くだけ行ってみよう…。)
そう考えがまとまりとりあえず、朔弥の家に急いだ。
ピンポーン
家に着きベルを鳴らすが反応がない。
数回ベルを鳴らしてもそれは変わらなかった。
(………居ないのか…)
少しの安堵と悲しみが混ざる。
(次は…どこに行こう…。)
そう思いながら足を適当に動かした。
しばらくあてもなく歩いているといつの間にか公園の前にいた。
(ここは……)
朔弥と…みんなと最後に別れた場所だった。
自分のした行為に反吐が出そうになり唇を噛む。
正直、入りたくなかった。
だけど、入らないといけない気がした。
「…お前も悲しいのか…?」
罪悪感を押し切り公園に入ると、ベンチに座って猫を撫でている朔弥がいた。
「…俺はね、心に穴が空いたみたいに寂しいんだ…でも、なんでかな…これで、良かった気もするんだ…」
「にゃあ」
「あはは、お前もそう思う?…だって、こんなに空が綺麗なのとか全然気が付かなかったんだよ?…俺って、馬鹿だよなぁ…楽しい事…探せばいっぱいあったのに…。」
「にゃぁ?」
「なんで…悲しい事ばっか…辛い事ばっか、選んじゃったんだろうなぁ…」
猫の額に、雨が降る。ポロポロと、色々な感情が混ざった涙が。
(朔弥…お前は、もう…進んだのか…?……俺は、また、お前の邪魔にしか…なれないのか…?)
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