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璃悠
友達と恋人
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璃翔に友達でいいと言われてその場で呆然とする。
(…違う…そうじゃ、ないんだ…。俺は、俺は…そういう意味で友達に戻ろうって言ったわけじゃないんだ。)
ただ、少し距離を置きたかっただけ…。
だって、璃翔は知らないから。なにも、分かってないから。
高校の入学式で璃翔一目惚れして、でも叶わないだろうなと思って1年間ずっと片想いして…2年になって告白されて、俺がどんなに嬉しかったか…。
大学だって、璃翔が好きそうな学科がある所ばっか探して、一緒に行けるように考えて…。
それなのに、璃翔は女子にモテるから…不安がいっぱいあって…。
ただでさえ、俺が男だって事で不安なのに。
大学のサークルの後輩は、俺に璃翔の情報を貰うために休日平日御構い無しに近づいてくる。
「璃翔先輩って……彼女とか、いるんですかね……。」
「彼女?…居ないと思うよ……」
(彼女なんて、居てたまるかよ。)
ムカムカしながらもそれを抑えて、その場を終えたのに…。
「今日何してた?」
その質問に、咄嗟に嘘をついてしまった。
(だって…後輩といたなんて言ったら、何してたんだって聞かれる…。俺の口からそんな事言いたくない。)
その嘘が、恋人という関係を壊すなんて…。
(璃翔……)
どうしてだろう。
こんなに好きなのに、好きだって気持ちは変わらないのに……。
不安が沢山あって、怖いことが増えて行く。
(駄目じゃん、俺……)
何よりも怖いのは、君を失う事なのに。
君を失うのが怖くて、不安で…。
なのに、怖さと不安に押しつぶされて、自分だけ好きみたいなのが悲しくて……。
少し、離れてちゃんとみて欲しかっただけなのに…。
水が地面と出会った。
俺の顔に落ちた雫は、涙だったのか雨だったのかわからない。
自己嫌悪だけが自分の中に溢れていた。
ポツポツと落ちる雫は大粒の涙に変わり、周りの音をかき消して居た。
「っ!に、してんだよ!」
遠くで、聞き慣れた声がした。
「悠…ずぶ濡れじゃん…。」
傘に弾かれた雨の音。
俺は、重くなった体で璃翔に抱きついた。
「…ごめん。ごめん。お願い。璃翔。行かないで。俺の隣に、ずっと、居て…璃翔……」
「悠…?悠!悠!!」
気がつくと見慣れた天井があった。
そして、直ぐそばに温もりを感じた。
スースーと、寝息を立てる璃翔の目の周りは少し赤みを帯びていた。
「璃翔、大好きだよ…」
目を閉じてもう一眠りしようとすると、隣で微かな音がした。
「……俺も、大好き。」
目を開けると、顔を赤くした璃翔が俺をみた。
「でも、もう嘘はやだからな。」
「起きてたのかよ。」
「まぁ…それで、なんで嘘付いたんだよ。」
「っ、言わないと駄目?」
「だめ!」
俺は、璃翔の目に手を当てた。
「ちょ、なにすんの!」
「お前を好きだっていう後輩から相談受けてたの!」
「……へ?俺?」
「お前以外誰がいんだよ…」
「悠だって、モテるじゃん…俺、てっきり…」
「俺なわけないだろ…。まぁ、お前はそうだと思ったよ…。だから、少し距離を置こうって意味で友達に戻ろうって言ったのに突っ走るし。……このまま、戻ってこないかと思った。」
璃翔は、目を覆っていた俺の手を握ってずらした。それから、俺の目をみた。
「悠は、言葉が足りないんだよ。……でも、俺そんなお前も好きだったって、いっぱい思い出して。そしたら、雨が降ってきて…。」
「……迎えにきてくれたの?」
「っ、そうだよ!感謝しろよな!」
「うん。ありがとう。…璃翔、俺の恋人になってくれる?」
「っ、たり前だろ!つか、言われなくたって…俺は、お前が好きなんだよ!誰から告白したと思ってんだ!」
「あは、璃翔からだったね。」
それから、俺たちはベッドの中でアラームが鳴るまで話し続けた。
友達としてじゃなく、恋人として君の隣にいられる幸せを感じながら。
終
(…違う…そうじゃ、ないんだ…。俺は、俺は…そういう意味で友達に戻ろうって言ったわけじゃないんだ。)
ただ、少し距離を置きたかっただけ…。
だって、璃翔は知らないから。なにも、分かってないから。
高校の入学式で璃翔一目惚れして、でも叶わないだろうなと思って1年間ずっと片想いして…2年になって告白されて、俺がどんなに嬉しかったか…。
大学だって、璃翔が好きそうな学科がある所ばっか探して、一緒に行けるように考えて…。
それなのに、璃翔は女子にモテるから…不安がいっぱいあって…。
ただでさえ、俺が男だって事で不安なのに。
大学のサークルの後輩は、俺に璃翔の情報を貰うために休日平日御構い無しに近づいてくる。
「璃翔先輩って……彼女とか、いるんですかね……。」
「彼女?…居ないと思うよ……」
(彼女なんて、居てたまるかよ。)
ムカムカしながらもそれを抑えて、その場を終えたのに…。
「今日何してた?」
その質問に、咄嗟に嘘をついてしまった。
(だって…後輩といたなんて言ったら、何してたんだって聞かれる…。俺の口からそんな事言いたくない。)
その嘘が、恋人という関係を壊すなんて…。
(璃翔……)
どうしてだろう。
こんなに好きなのに、好きだって気持ちは変わらないのに……。
不安が沢山あって、怖いことが増えて行く。
(駄目じゃん、俺……)
何よりも怖いのは、君を失う事なのに。
君を失うのが怖くて、不安で…。
なのに、怖さと不安に押しつぶされて、自分だけ好きみたいなのが悲しくて……。
少し、離れてちゃんとみて欲しかっただけなのに…。
水が地面と出会った。
俺の顔に落ちた雫は、涙だったのか雨だったのかわからない。
自己嫌悪だけが自分の中に溢れていた。
ポツポツと落ちる雫は大粒の涙に変わり、周りの音をかき消して居た。
「っ!に、してんだよ!」
遠くで、聞き慣れた声がした。
「悠…ずぶ濡れじゃん…。」
傘に弾かれた雨の音。
俺は、重くなった体で璃翔に抱きついた。
「…ごめん。ごめん。お願い。璃翔。行かないで。俺の隣に、ずっと、居て…璃翔……」
「悠…?悠!悠!!」
気がつくと見慣れた天井があった。
そして、直ぐそばに温もりを感じた。
スースーと、寝息を立てる璃翔の目の周りは少し赤みを帯びていた。
「璃翔、大好きだよ…」
目を閉じてもう一眠りしようとすると、隣で微かな音がした。
「……俺も、大好き。」
目を開けると、顔を赤くした璃翔が俺をみた。
「でも、もう嘘はやだからな。」
「起きてたのかよ。」
「まぁ…それで、なんで嘘付いたんだよ。」
「っ、言わないと駄目?」
「だめ!」
俺は、璃翔の目に手を当てた。
「ちょ、なにすんの!」
「お前を好きだっていう後輩から相談受けてたの!」
「……へ?俺?」
「お前以外誰がいんだよ…」
「悠だって、モテるじゃん…俺、てっきり…」
「俺なわけないだろ…。まぁ、お前はそうだと思ったよ…。だから、少し距離を置こうって意味で友達に戻ろうって言ったのに突っ走るし。……このまま、戻ってこないかと思った。」
璃翔は、目を覆っていた俺の手を握ってずらした。それから、俺の目をみた。
「悠は、言葉が足りないんだよ。……でも、俺そんなお前も好きだったって、いっぱい思い出して。そしたら、雨が降ってきて…。」
「……迎えにきてくれたの?」
「っ、そうだよ!感謝しろよな!」
「うん。ありがとう。…璃翔、俺の恋人になってくれる?」
「っ、たり前だろ!つか、言われなくたって…俺は、お前が好きなんだよ!誰から告白したと思ってんだ!」
「あは、璃翔からだったね。」
それから、俺たちはベッドの中でアラームが鳴るまで話し続けた。
友達としてじゃなく、恋人として君の隣にいられる幸せを感じながら。
終
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