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後ろの熊君

後ろの熊君 中

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 1学期が過ぎ2学期になった。

 熊谷君と過ごしていて、気が付いたことがある。

「小崎、さっきの体育で怪我してただろ…大丈夫か?保健室行くか?連れてくか?」
「あ、ありがとう。大丈夫だよ。」

 熊谷君は、よく僕を見ている。それから、心配性。あと、滅茶苦茶優しい。

「そうか、なら…いいんだ。一応、絆創膏を渡しておくから貼っておけ。」
「あ、ありがとう。」

 それから、女子力も高い。
 そして、何より…。

「…小崎、きょ、今日も…昼を…その…」
「一緒に食べるんでしょ?」
「あぁ!!ありがとう、小崎」

 笑顔の破壊力がやばい。

(このキャップの塊め!!)

「僕、熊谷君と友達になれて良かったなぁ…」
「っ…お、俺も…小崎とその…と、友達に、なれて嬉しい。」
 熊谷君は、顔を赤らめながらはにかみ笑いを繰り出した!!
 小崎のHPは100パーセント回復!!
「っっんんんん…熊谷君、いつもそんな感じなら他にも友達できると思うよ?」
「そ、そうか!…そうか…」
 熊谷君は、喜んだかと思ったら少し考えて俯いた。
「熊谷君?どうかした?」
「ぃゃ、なんでもない。でも、そうだな…小崎とばかりいたら小崎に他の友人ができなくなってしまうな…」
「え?いやいやいや、僕は熊谷君がいれば…いいし…」

(あれ?でも…僕って、リア充を目指してたから…熊谷君以外にも友達を作らなきゃ駄目じゃない?!)

「その気持ちはありがたいが…俺も、このままだと…」

 そこで言葉を止めた熊谷君が僕を見た。

「ぇと…あ、そっか!熊谷君は僕以外にも友達欲しいもん、ね…」
「ぁ、ぃや、そぅでは、なくて…いや、もうこの話はやめよう。」
「う、うん。そうだね。」

(…なんだろう…モヤモヤする。)

 熊谷君の隣に自分以外の人間がいる。そう考えて、悲しくなった。

(僕以外の…友達…)

 その時、熊谷君の笑顔が頭によぎった。

(あの笑顔は、僕だけが…)

 自分だけが知っている笑顔。自分だけが知っている熊谷君の事。

 兎に角、モヤモヤした。




 それから放課後になって、学校を出た。

(熊谷君は、用事があるって言ってたし…久し振りの1人か…。)

 そう思いながら、駅に向かう。

(このモヤモヤは…なんなんだろう。)

 考えていると、他校の女子の会話が耳に入った。

「えぇ!!カナって図書委員だったの?!」
「うん。それで、九条先輩と当番が一緒でね」
「えぇー、九条先輩って怖くない?カナ大丈夫なの?」
「こ、怖くないよ!!先輩は、少し心配性だけど優しいし、あと…」
「あとぉ?」
「…笑顔が、とっても可愛いの。」
「ほぅ…なら、来期の図書委員立候補しようかなぁ~」
「だ、だめ!あの笑顔は…その…」
「あはは、うそうそ。でも、カナ様はその先輩の笑顔を独占したいくらいなのねぇ~」
「え、ち、ちが!!」
「だって、誰にもみせたくないんでしょぉ?てことは、好きなんでしょ~」

 (…好き?いや、たしかに、たしかに…誰にもあの笑顔は見せたくない。だけど、え?僕が、熊谷君を…好き?…え?!)


 そう思って、熊谷君の今日の態度が頭を過る。

(熊谷君は、友達が…欲しいんだよ…な。)

 頭の中を色々な感情が混ざって回る。

(友達が欲しい熊谷君…僕は、その熊谷君の友達で…だから…好きって気持ちは…駄目だろ、僕。)




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