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ただの平和な世界
ルッタ、早く朝食食べに行けよ。
しおりを挟むぷかぷか浮かぶ闇の中。僕は、光に手を伸ばす。
(綺麗だなぁ)
呑気な僕はそう思って闇に沈んだ。
「ルッタ!いつまで寝てるんだよ。もう朝食の時間だぞ?」
「アーシャ、君はまた変装して人の部屋に勝手に入ってきたのかい?」
視力はいい癖に丸眼鏡をかけて、本当は金の髪を魔法で黒に変えて、本来ならお洒落な刺繍が入った襟シャツを着ているはずの彼はぼったりとした地味なシャツを着ていた。
「良いだろう。今日は夜に憂鬱なパーティがあるんだ。朝くらいはゆっくりしたいよ。」
「その朝に大事な準備があるはずなんだがなぁ?」
「あーもう!せっかく来たのにルッタは意地悪ばかり言うじゃないか。僕は悲しいよ!」
大袈裟に溜息をついて、アーシャは僕の布団を少し引っ張った。
(くっ、可愛い……)
「……はぁ、君はどこでそんないじらしいこと覚えてくるんだよ。」
「ん?お姫様とか?」
僕は、意地悪でその答えには何も触れずベッドを出た。
「あー!嘘だよ、ルッタ!お姫様には教わるほど会話をしないよ!」
案の定、アーシャは戸惑って弁明をする。
(そんなアーシャも可愛いなぁ!)
「……でも、そのお姫様達に今日の夜、お前は会うわけだ。そんで、楽しくくっついて踊っちゃったりするわけだ。」
可愛いアーシャがもっと見たくて意地悪っぽく言うと、アーシャは焦ったみたいに僕のそばに来た。
「そ、そうかもしれないけど!でも!それは、あくまで礼儀としてだから!僕が1番一緒にいたいのはルッタだけだから!……じゃなきゃ、怒られるリスク背負ってまで、こんな格好しないよ。」
しょぼんと肩を落とし、アーシャは声をしぼませた。
(流石に、意地悪すぎたかな……)
「嘘だよ、アーシャ。全部わかってる。僕に会うことだって、君がどれ程リスクを背負ってるか。僕から会いにいけないから、わざわざ忙しい合間を縫ってきてくれたんだろう?」
「ルッタ、全部お見通しだったんだね……。恥ずかしいな。」
困ったように照れるアーシャは、やっぱり最高に可愛かった。
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