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強者の祭典
アリアVS.ガルシオ
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『おぉっとォ! 突如黒煙に覆われたアリア! しかし現れたのは黄金の炎を纏った姿だ! 燃え盛る炎刀も携え、ここからが本領発揮かァ!?』
オルガンの実況が響き、観客の熱狂が最高潮に達する。しかしその声もアリアの耳には入らず、ただ目の前のガルシオを見据えていた。
装擬の焔。借り物の焔を自分のものにし、操る魔法。
状態としては開闢の焔との違いはないが、焔の色が黒紅から白金に変わり熱さもアリア本人は感じなくなった。翼の形にすれば飛行可能となり、髪も炎の色と変わったかのように赤色に変わっている。これだけなら全くデメリットのない魔法だが……恐ろしいほどに魔力を消費する。ドラグニールの憑依で増加したアリアの魔力総容量だが、それでも恐ろしいほどに消費していってるのが体感でわかるほどだ。
一旦解除するのが賢い選択なのだろうが、残り魔力じゃどの道大技どころか牽制で尽きる可能性すらある。そしてアリアの取った選択は。
「速攻で決めます!」
全力で地を蹴り、羽ばたきによってさらに加速。彼が見慣れているかもしれないレイの速度にはまだ及ばないが、それでも十分脅威となる速度だった。
「遅ぇ」
ただ一言、吐き捨てるように呟く。アリアの振り下ろした刀を右手の手甲で受けるとそのまま右腹部に蹴りを入れ叩きつけた。
「ガッ……!」
「そりゃあよ、素手よか得物持ってる方が強ぇだろうよ。使い慣れたものならなおさらな。しかも炎っつう防具までありやがる。そりゃ強ぇ、そりゃあ厄介だ」
さらに蹴り飛ばされたアリアは体を捻り着地し、再び飛び掛かり刀を繰り出す。しかしいくら繰り出そうとも、フェイントを織り交ぜようとも、悉くを受け止められ、受け流される。
「だがな、そんなもんこっちからすりゃあ日常だ。いつだって俺らは何も持ってなくて、無い物ねだりする暇も無ぇ。だからいつだって持ってるもんでやりくりするしかなかったんだ」
「なんの話ですか!」
振り下ろしからの足元への横薙ぎの刀。ガルシオは軽く後ろへ飛びさらにバック転で躱す。
「気にすんな、独り言だ。つーかテメェ、予選の時よかキレ落ちてるぞ。さっきまで何してたんだよ」
「別に何にも!」
まともに答える余裕もないのか、ただ一言だけいい絶え間なく斬撃を繰り出す。しかしガルシオはそのすべてを受け、躱す。しかし防戦一方という様子でもなかった。
「おいガキ、聞くだけでもいい。何がお前をそこまで駆り立てる。どんな経緯であの邪竜と同化したのかは興味無ぇ。だがその先だ。いろいろ聞いてあるが、クソ鬼にクソピエロ、イカレた教団にその他も。どれも一端の冒険者には手に余る。全部に対応できる力を持ってるかどうかは関係無ぇ。全部に耐え、そのまま続けられる精神面だ。なんでテメェみてぇなガキがそうまでして続けられる」
「……聞くだけでいいなら、答えなくていいことを言ってくださいよ」
止まることなく続いていた刀が止まる。煌々と煌めいていた焔も徐々に弱まる。
「そりゃあどれも怖いことだらけでしたよ。そこで足を止めてしまってもおかしくない……昔の私なら止めていたでしょう。けれど私が必至でやった結果、救われた人がいる。そのことを知ってから私の中で止まるってことはなくなりました」
「……ああ、そうか」
アリアの言葉を聞き、ガルシオは俯く。そして上げた表情は、侮蔑ともとれる表情だった。
「それは呪いだ。そんなもん、テメェみたいなガキが……いや、本来人間が背負っていいもんですら無ぇんだ。だから――俺が終わらせてやる」
右半身を下げ腰を落とす。これ以上なく右拳を突き出す構えだ。わかっているのならわざわざ当たる危険のある正面から行く必票はないが、下手に搦め手をし消耗する必要もない。
相手も決めにかかるつもりだ。ならこちらもいっそ、この一撃に全てを注ぎ込もうと決めた瞬間、ガルシオの姿は既に目の前にあった。
「――は」
疑問を挟む余地も、ましてや防ぐ時間もない。知覚できたのは到底ただの拳によるものだとは思えない腹部への衝撃と、視界を一瞬覆った鮮血だった。
オルガンの実況が響き、観客の熱狂が最高潮に達する。しかしその声もアリアの耳には入らず、ただ目の前のガルシオを見据えていた。
装擬の焔。借り物の焔を自分のものにし、操る魔法。
状態としては開闢の焔との違いはないが、焔の色が黒紅から白金に変わり熱さもアリア本人は感じなくなった。翼の形にすれば飛行可能となり、髪も炎の色と変わったかのように赤色に変わっている。これだけなら全くデメリットのない魔法だが……恐ろしいほどに魔力を消費する。ドラグニールの憑依で増加したアリアの魔力総容量だが、それでも恐ろしいほどに消費していってるのが体感でわかるほどだ。
一旦解除するのが賢い選択なのだろうが、残り魔力じゃどの道大技どころか牽制で尽きる可能性すらある。そしてアリアの取った選択は。
「速攻で決めます!」
全力で地を蹴り、羽ばたきによってさらに加速。彼が見慣れているかもしれないレイの速度にはまだ及ばないが、それでも十分脅威となる速度だった。
「遅ぇ」
ただ一言、吐き捨てるように呟く。アリアの振り下ろした刀を右手の手甲で受けるとそのまま右腹部に蹴りを入れ叩きつけた。
「ガッ……!」
「そりゃあよ、素手よか得物持ってる方が強ぇだろうよ。使い慣れたものならなおさらな。しかも炎っつう防具までありやがる。そりゃ強ぇ、そりゃあ厄介だ」
さらに蹴り飛ばされたアリアは体を捻り着地し、再び飛び掛かり刀を繰り出す。しかしいくら繰り出そうとも、フェイントを織り交ぜようとも、悉くを受け止められ、受け流される。
「だがな、そんなもんこっちからすりゃあ日常だ。いつだって俺らは何も持ってなくて、無い物ねだりする暇も無ぇ。だからいつだって持ってるもんでやりくりするしかなかったんだ」
「なんの話ですか!」
振り下ろしからの足元への横薙ぎの刀。ガルシオは軽く後ろへ飛びさらにバック転で躱す。
「気にすんな、独り言だ。つーかテメェ、予選の時よかキレ落ちてるぞ。さっきまで何してたんだよ」
「別に何にも!」
まともに答える余裕もないのか、ただ一言だけいい絶え間なく斬撃を繰り出す。しかしガルシオはそのすべてを受け、躱す。しかし防戦一方という様子でもなかった。
「おいガキ、聞くだけでもいい。何がお前をそこまで駆り立てる。どんな経緯であの邪竜と同化したのかは興味無ぇ。だがその先だ。いろいろ聞いてあるが、クソ鬼にクソピエロ、イカレた教団にその他も。どれも一端の冒険者には手に余る。全部に対応できる力を持ってるかどうかは関係無ぇ。全部に耐え、そのまま続けられる精神面だ。なんでテメェみてぇなガキがそうまでして続けられる」
「……聞くだけでいいなら、答えなくていいことを言ってくださいよ」
止まることなく続いていた刀が止まる。煌々と煌めいていた焔も徐々に弱まる。
「そりゃあどれも怖いことだらけでしたよ。そこで足を止めてしまってもおかしくない……昔の私なら止めていたでしょう。けれど私が必至でやった結果、救われた人がいる。そのことを知ってから私の中で止まるってことはなくなりました」
「……ああ、そうか」
アリアの言葉を聞き、ガルシオは俯く。そして上げた表情は、侮蔑ともとれる表情だった。
「それは呪いだ。そんなもん、テメェみたいなガキが……いや、本来人間が背負っていいもんですら無ぇんだ。だから――俺が終わらせてやる」
右半身を下げ腰を落とす。これ以上なく右拳を突き出す構えだ。わかっているのならわざわざ当たる危険のある正面から行く必票はないが、下手に搦め手をし消耗する必要もない。
相手も決めにかかるつもりだ。ならこちらもいっそ、この一撃に全てを注ぎ込もうと決めた瞬間、ガルシオの姿は既に目の前にあった。
「――は」
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