竜神に転生失敗されて女体化して不死身にされた件

一 葵

文字の大きさ
上 下
63 / 126
強者の祭典

小休止・たき火の側で

しおりを挟む
 夜。運行馬車の補給所に着いた俺達は、荷物を宿泊部屋に置き思い思いに過ごしていた。

 周囲を木製の柵で囲われたここには何頭も馬を休ませられそうな大きな馬小屋と倉庫。関係者用の宿泊小屋とそれよりも少し大きい乗客用の宿泊小屋があった。道中のように魔物に襲われたらと思うと心許ない設備ではあるが、各地の補給所には国から派遣された兵士が常駐しているし、そもそも魔物の住処から離れた場所に作られているから、襲われることは滅多に無いそうだ。
 ……まあ最も、今回に限っては例え襲われたとしても安心だろうけど。
 そんなことを思いながら、隣に座って一緒にたき火を眺めているレイに話しかけた。

「それにしれも、レイさんや園の皆が一緒にいたなんて驚きましたよ。やっぱりアルプロンタのお祭りですか?」
「うん。あんなことがあったから、皆にも気分転換が必要だと思って」

 レイはそう言い、たき火から目線を外す。エリシアと楽しそうに話す女の子やクラガと遊ぶ男の子達を見て、彼女は安心したような笑みを浮かべた。

「ちゃんと楽しめるか不安だったんだけど、これなら大丈夫みたい」
「子供って私達が思ってるよりずっと強いですよね」
「うん。……?」

 しまった。俺も全然子供じゃん。レイが同意したものの微妙な違和感に首を傾げてしまっている。

「あっ、そうだ! 私達統合武道祭典コンバートル・フェスティバルに出るんですけど、レイさんも出るんですか?」

 なんとか誤魔化そうと、統合武道祭典コンバートル・フェスティバルについてレイに聞いてみた。
 なんだかんだまだ詳しくは知らないし、レイなら出たこともあるだろう。

「どうしようかな。出たいって訳じゃないし、何より今回は皆と一緒にいたいから」

 正直ちょっとほっとした。目的は腕試しで試合形式も知らないけど、レイさんが相手だともう負けが確定したようなもんだからな。

「そうなんですね。良かったらどんな内容か教えてくれませんか?」
「どんな……。結構毎年違うんだよね」
「そうなんですか?」
「うん。実戦で戦うっていうことは変わらないんだけどね。一対一のトーナメントだったり即席のチーム戦だったり、調教師テイマーの手なずけた魔物と戦ったり。いつも開会式と同時に形式を知らされるの」
「なるほど……どんな形式であっても順応出来る能力が必要って感じですかね」
「そうだね。でも君なら良いところまで行けると思うよ」
「そっ、そうですかね?」

 俺の中ではレイは師匠的な立ち位置になっていて、しかも美人ってことも相まってこう正面から褒められるとどうにも恥ずかしくなってしまう。

「えへへ……っと、ニーア?」

 恥ずかしさに頭をかいているといきなり後ろから抱きつかれ、振り向くと相変わらず無表情のニーアがいた。

「久しぶり。どうしたの?」
「…………」
「えっと……」
「…………」
「レイさんも何両手広げてるんですか」
「抱きつかれ待ち」

 正直か。

「前から思ってたけど、ニーアがこんなに懐いてるなんて珍しいね。他の女の子とは一緒にいることもあるけど、それ以外の人とは全然だもん」
「そうなの?」

 無表情というか仏頂面とも言えそうな顔を俺の肩に乗せてぼうっとたき火を眺めているニーアに問いかけると、きょとんとした顔に変わって首を傾げた。
 いや可愛いな。

 それからまた他愛の無い話をしたり他の子供達と混じって遊んだりと、楽しい声を夜に響かせて過ごした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...