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パーティ結成
再会
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「右から来ます! あと十秒!」
薄暗い森の中。魔力感知に反応したこちらに向かってくる物体の存在を、後方のクラガとエリシアに端的に伝える。
「おう! エリシア、氷だ!」
「ええ!」
クラガの指示に、エリシアは素早く反応し氷魔法強化の補助魔法をクラガに放つ。クラガは籠手を装備した右手を振り上げ地面に叩き付ける。
その時、木々を押し倒し黒い強大な蜘蛛が魔力感知通りに現れ、正面のクラガ達に襲い掛かる。しかし青の鉱石が輝いた籠手は正面に厚い氷の壁を地面から作り上げ、蜘蛛を下から突き上げた。俺は体勢を崩した蜘蛛に素早く近づき、如月でその頭部を切り落とす。青緑色の粘液を切断面から一度勢いよく吹き出しびくりと脚を震わせると、やがてだらりと力をなくした。
「うっし。これで何体目だ?」
「四匹目ですわね。後一匹、順調ですわね……あら、アリア。どうしました?」
ぐっと伸びをするクラガとほっと一息つくエリシア。しかし俺の様子がどこかおかしいことに気づいたのか、エリシアが問いかけてきた。
「いや、えっと……」
エリシアの問いに俺は歯切れ悪く返し、目の前の巨大な蜘蛛をみる。
甲殻剣脚蜘蛛。剛健な鎧のような甲殻に覆われ、その脚は加工せずともそのまま片手剣に利用できるほどの鋭い剣になっている。――そう。片手剣にだ。
生物だから大きさに個体差はあるのだが、俺が今まで狩ってきた個体、話に聞いた個体、ギルドの情報も含め、大きい個体でも少し小さめの両手剣の脚がいいところだ。しかしこの個体……いや、さっきまで襲ってきた三体もすこし小さいどころか立派な両手剣として利用できる脚を持っていた。それに甲殻だって、如月だから斬れたが、前までの刀なら歯が立たない可能性があった。
一体位ならよく育った珍しい個体と割り切るが、三体連続でとなると……うぅん……。
――それ程気にするようなことか? 大差無いではないか。
そりゃあお前サイズなら見ればそうだろうよ。……まあ元の世界でも十メートル超えの蛇が発見とか何回も見たし、無いことはないの……かなぁ?
俺がどうにも飲み込めずに唸っていると、魔力感知に引っかかった個体がいた。反応の大きさからして今までのと同じ巨大な甲殻剣脚蜘蛛。しかしその反応を塗りつぶす程の巨大過ぎる反応がその後ろから余りにも速い速度で近づいてきた。
「エリシアさん、熱防御お願いします!」
俺はエリシアさんに指示を出し不知火を取り出す。後ろで熱防御の障壁を確認し、不知火を引き抜くと、俺の体が炎に覆われる。
甲殻剣脚蜘蛛だけなら如月でいいが、その後ろ。方法は分からないが超重量の巨大な甲殻剣脚蜘蛛をこの速度で動かす存在。警戒するに越したことはない。
木々を薙ぎ倒す音が近づき、黒い影が見えると俺も駆け出す。
「開闢の焔!」
体を覆っていた紅黒い炎を白い炎に変え、こちらへ向かってくる、正確には吹き飛ばされてくる甲殻剣脚蜘蛛を切りつける。如月ほどの斬れ味は無いためその堅い甲殻に阻まれたが、炎によって容易に斬り裂いた。俺はそのまま更に踏み込み、背後の存在に向かう。寸止めするつもりで振り下ろした不知火。しかしその存在は容易くその刀身を掴んだ。
「あっづぁ! んだこれ熱すぎんだろ!」
ほぼ速度と威力を抑えていたとはいえ、開闢の焔を素手で掴んで熱いで済ませたその男。
「お? お前アリアちゃんじゃねぇか! 何してんだこんなとこで!」
右手を冷まそうと息を吹き付け、俺の姿を見ると驚いたように声を上げる黒い男。俺はその男を覚えているし、直に見たことがないクラガとエリシアでさえ、信じられないという風に目の前の光景を見ていた。
「……オーガ?」
銀の髪を押しのけ突き出す二対の捻れた角。黒い羽織。忘れようがない。
「おうよ」
快活に笑うその男。魔物の頂点に立つ四大魔王の一柱。この世界で初めて死闘を繰り広げた、冒険をした相手が目の前に立っていた。
薄暗い森の中。魔力感知に反応したこちらに向かってくる物体の存在を、後方のクラガとエリシアに端的に伝える。
「おう! エリシア、氷だ!」
「ええ!」
クラガの指示に、エリシアは素早く反応し氷魔法強化の補助魔法をクラガに放つ。クラガは籠手を装備した右手を振り上げ地面に叩き付ける。
その時、木々を押し倒し黒い強大な蜘蛛が魔力感知通りに現れ、正面のクラガ達に襲い掛かる。しかし青の鉱石が輝いた籠手は正面に厚い氷の壁を地面から作り上げ、蜘蛛を下から突き上げた。俺は体勢を崩した蜘蛛に素早く近づき、如月でその頭部を切り落とす。青緑色の粘液を切断面から一度勢いよく吹き出しびくりと脚を震わせると、やがてだらりと力をなくした。
「うっし。これで何体目だ?」
「四匹目ですわね。後一匹、順調ですわね……あら、アリア。どうしました?」
ぐっと伸びをするクラガとほっと一息つくエリシア。しかし俺の様子がどこかおかしいことに気づいたのか、エリシアが問いかけてきた。
「いや、えっと……」
エリシアの問いに俺は歯切れ悪く返し、目の前の巨大な蜘蛛をみる。
甲殻剣脚蜘蛛。剛健な鎧のような甲殻に覆われ、その脚は加工せずともそのまま片手剣に利用できるほどの鋭い剣になっている。――そう。片手剣にだ。
生物だから大きさに個体差はあるのだが、俺が今まで狩ってきた個体、話に聞いた個体、ギルドの情報も含め、大きい個体でも少し小さめの両手剣の脚がいいところだ。しかしこの個体……いや、さっきまで襲ってきた三体もすこし小さいどころか立派な両手剣として利用できる脚を持っていた。それに甲殻だって、如月だから斬れたが、前までの刀なら歯が立たない可能性があった。
一体位ならよく育った珍しい個体と割り切るが、三体連続でとなると……うぅん……。
――それ程気にするようなことか? 大差無いではないか。
そりゃあお前サイズなら見ればそうだろうよ。……まあ元の世界でも十メートル超えの蛇が発見とか何回も見たし、無いことはないの……かなぁ?
俺がどうにも飲み込めずに唸っていると、魔力感知に引っかかった個体がいた。反応の大きさからして今までのと同じ巨大な甲殻剣脚蜘蛛。しかしその反応を塗りつぶす程の巨大過ぎる反応がその後ろから余りにも速い速度で近づいてきた。
「エリシアさん、熱防御お願いします!」
俺はエリシアさんに指示を出し不知火を取り出す。後ろで熱防御の障壁を確認し、不知火を引き抜くと、俺の体が炎に覆われる。
甲殻剣脚蜘蛛だけなら如月でいいが、その後ろ。方法は分からないが超重量の巨大な甲殻剣脚蜘蛛をこの速度で動かす存在。警戒するに越したことはない。
木々を薙ぎ倒す音が近づき、黒い影が見えると俺も駆け出す。
「開闢の焔!」
体を覆っていた紅黒い炎を白い炎に変え、こちらへ向かってくる、正確には吹き飛ばされてくる甲殻剣脚蜘蛛を切りつける。如月ほどの斬れ味は無いためその堅い甲殻に阻まれたが、炎によって容易に斬り裂いた。俺はそのまま更に踏み込み、背後の存在に向かう。寸止めするつもりで振り下ろした不知火。しかしその存在は容易くその刀身を掴んだ。
「あっづぁ! んだこれ熱すぎんだろ!」
ほぼ速度と威力を抑えていたとはいえ、開闢の焔を素手で掴んで熱いで済ませたその男。
「お? お前アリアちゃんじゃねぇか! 何してんだこんなとこで!」
右手を冷まそうと息を吹き付け、俺の姿を見ると驚いたように声を上げる黒い男。俺はその男を覚えているし、直に見たことがないクラガとエリシアでさえ、信じられないという風に目の前の光景を見ていた。
「……オーガ?」
銀の髪を押しのけ突き出す二対の捻れた角。黒い羽織。忘れようがない。
「おうよ」
快活に笑うその男。魔物の頂点に立つ四大魔王の一柱。この世界で初めて死闘を繰り広げた、冒険をした相手が目の前に立っていた。
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