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パーティ結成
これから
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外から窓越しにエリシアとクラガの試験を見ていた俺は、訓練棟の廊下に移動していた。「エリシアさん!」
既に部屋から出ていてセリアと何か話しているエリシアを見かけ、俺は駆け寄った。
「アリア! やりましたわ、私冒険者になれますの!」
「おめでとう!」
俺とエリシアは手を取り合って喜んだ。
「クラガさんはまだなんですね」
「ええ。私も今出てきたところなんですけれど」
俺もエリシアが出て行ったのを見てこっちに来たから、クラガの方は最後まで見られてないんだよな。あの様子だと多分大丈夫だと思うけど……。
しばらくするとクラガが試験をしていた部屋の扉が開いて、グロームが出てきた。
「あ、エリシアさん。出てきました……よ?」
「クラガさん。どうでし……た?」
「ちょっとグローム! どうしたのよ!」
俺とエリシアがその光景に困惑し、セリアが詰め寄った。
部屋から出てきたグロームは、左腕にクラガの籠手を抱え右肩にぐったりとしたクラガを担いでいた。
「おうセリア。そっちの方が早く終わったのか。その様子だと、そっちの嬢ちゃんは受かったようだな。こいつの条件小難しくて有名なのにやるじゃねぇか」
グロームは俺たちの様子を見ると、エリシアに笑いかけた。
「あ、ありがとうございます……ではなくて! クラガさんはどうしましたの!?」
「貴方、まーた馬鹿みたいな脳筋試験したの? それにさっきの言いようだと、その彼は落ちたのかしら?」
セリアは心底呆れたように溜息をついてクラガを指さした。
さっきそっちの嬢ちゃん『は』って言ってたし、もしかして……。
俺とエリシアは不安げな表情を浮かべたが、グロームは首を横に振った。
「いんや? まあギリギリってとこだな。俺が膝をついたらって試験でよ、最後に力振り絞って俺の顎を殴ったんだが、そのまま勢いよく倒れやがってな。突然のことでとっさにしゃがもうとしたら膝掴まれてそのまま無理矢理つかされちまった。ガハハ!」
事の顛末を話し豪快に話すグローム。っていうか最後、そんな終わりだったのかよ。
「それ……貴方的には合格でいいの? 多分意図はそうでは無いでしょ……意図があるのかも分からないけれど」
「あ? 俺はそんな細けぇ事気にしてねぇよ。つぅか俺がそこいらのやつに膝つく訳ねぇだろ。俺が見てんのはそいつが漢を見せるかどうかだよ。その点、こいつは中々だったぜ。だまし討ちみたいになっても勝ちを取りに行く諦めの悪さ。何より意地を通すためにテメェの事を考えねえ向こう見ずさ。馬鹿すぎて惚れちまったぜ。んじゃ、俺はこの馬鹿を医務室に突っ込んでくらぁ」
そう言って去ろうとしたグロームだったが、途中思い出したように一度こちらに振り返った。
「ああそうだ。アリア、前聞かれてたあれだけどよ、やっぱうちの教官連中にはいねぇみてぇだわ」
「あー、やっぱりそうでしたか。ありがとうございます」
「まっ、俺だったらいつでも相手してやっからよ」
そう言い残しグロームは去って行った。
「アリアさん、さっきのは何でしたの?」
「冒険者になると、ここの訓練室を使って教官に戦闘訓練をして貰えるんです。それで刀を使う人に訓練して貰おうとしたんですけど、さっきの返事通りいないみたいで……」
「そういえばそうね。剣を使う人は何人もいるけど、刀をメインにって人はいなかったような……。確か冒険者でも少ないわよね」
造る難しさ故、質のいい刀があまり出回っていない。武器を持つ人の中で刀を持つ人の割合が少ない。教官となれるほどの実力を持てる人はより少ない。刀の訓練を出来る教官がいないから刀を選ぶ冒険者は少ない。
多分そんな感じで負のサイクル的な物が出来上がっているのだろう。まあ、その内いい人が見つかるかもしれないし、実践や模擬戦とかの中で自分なりの型が出来るかもしれないし。
「じゃあ私たちは冒険者登録の事務処理してくるわね。アリアさん、私も魔法の訓練ならいつでも相手してあげるからね」
そう言って、セリアはエリシアを連れて去って行った。
取り敢えず二人とも無事冒険者に受かったようで安心した。これで明日パーティ登録して……流石に直ぐ任務って訳にはいかないな。連携とか練習して……。
――ふん。随分とバランスの悪いパーティになりそうだな。
明日からの予定を考えていると、唐突にドラグニールが口を開いた。
そうか? そこまで悪い感じはしないけど。
――あの木剣の女は魔法も上手く剣も使える。しかし剣は前衛でやってける程では無く後衛での自衛並みだ。しかし魔法も攻撃魔法が主で後衛での支援魔法というわけでも無い。あの小僧はあの腕の機動力なら中衛でも前衛でも行けるだろうが、そもそもあやつは戦う人間では無い。練度とかの話では無く在り方としてだ。事実あやつのスキルは生み出す者の力だろう? そして貴様だ。貴様は勿論この三人の中で、いやこのギルドの中でも上位の実力を持つ。それは事実だが、使い方は愚を極めている。自覚はあるだろう。
まあ確かに……。ドラグニールの力とか不死身のスキルありきで今まで無茶してたからなあ。じゃあどうすればいいと思う?
――木剣女は補助魔法を習得し後衛。腕小僧はあの筋肉達磨に付き拳での戦いを学び中衛、木剣女の護衛。そして貴様が前衛……だが、欲を言えばあと一人前衛が欲しいな。敵が少なければ問題ないが、多ければ取りこぼす可能性が出る。
あと一人か……まあ無い物ねだりしても仕方ないな。取り敢えずその方向で訓練していくか。
――そうしておけ。我はしばらく寝る。
お前、最近静かなとき多いけどずっと寝てんのか?
――…………。
え、寝付き良すぎない?
既に部屋から出ていてセリアと何か話しているエリシアを見かけ、俺は駆け寄った。
「アリア! やりましたわ、私冒険者になれますの!」
「おめでとう!」
俺とエリシアは手を取り合って喜んだ。
「クラガさんはまだなんですね」
「ええ。私も今出てきたところなんですけれど」
俺もエリシアが出て行ったのを見てこっちに来たから、クラガの方は最後まで見られてないんだよな。あの様子だと多分大丈夫だと思うけど……。
しばらくするとクラガが試験をしていた部屋の扉が開いて、グロームが出てきた。
「あ、エリシアさん。出てきました……よ?」
「クラガさん。どうでし……た?」
「ちょっとグローム! どうしたのよ!」
俺とエリシアがその光景に困惑し、セリアが詰め寄った。
部屋から出てきたグロームは、左腕にクラガの籠手を抱え右肩にぐったりとしたクラガを担いでいた。
「おうセリア。そっちの方が早く終わったのか。その様子だと、そっちの嬢ちゃんは受かったようだな。こいつの条件小難しくて有名なのにやるじゃねぇか」
グロームは俺たちの様子を見ると、エリシアに笑いかけた。
「あ、ありがとうございます……ではなくて! クラガさんはどうしましたの!?」
「貴方、まーた馬鹿みたいな脳筋試験したの? それにさっきの言いようだと、その彼は落ちたのかしら?」
セリアは心底呆れたように溜息をついてクラガを指さした。
さっきそっちの嬢ちゃん『は』って言ってたし、もしかして……。
俺とエリシアは不安げな表情を浮かべたが、グロームは首を横に振った。
「いんや? まあギリギリってとこだな。俺が膝をついたらって試験でよ、最後に力振り絞って俺の顎を殴ったんだが、そのまま勢いよく倒れやがってな。突然のことでとっさにしゃがもうとしたら膝掴まれてそのまま無理矢理つかされちまった。ガハハ!」
事の顛末を話し豪快に話すグローム。っていうか最後、そんな終わりだったのかよ。
「それ……貴方的には合格でいいの? 多分意図はそうでは無いでしょ……意図があるのかも分からないけれど」
「あ? 俺はそんな細けぇ事気にしてねぇよ。つぅか俺がそこいらのやつに膝つく訳ねぇだろ。俺が見てんのはそいつが漢を見せるかどうかだよ。その点、こいつは中々だったぜ。だまし討ちみたいになっても勝ちを取りに行く諦めの悪さ。何より意地を通すためにテメェの事を考えねえ向こう見ずさ。馬鹿すぎて惚れちまったぜ。んじゃ、俺はこの馬鹿を医務室に突っ込んでくらぁ」
そう言って去ろうとしたグロームだったが、途中思い出したように一度こちらに振り返った。
「ああそうだ。アリア、前聞かれてたあれだけどよ、やっぱうちの教官連中にはいねぇみてぇだわ」
「あー、やっぱりそうでしたか。ありがとうございます」
「まっ、俺だったらいつでも相手してやっからよ」
そう言い残しグロームは去って行った。
「アリアさん、さっきのは何でしたの?」
「冒険者になると、ここの訓練室を使って教官に戦闘訓練をして貰えるんです。それで刀を使う人に訓練して貰おうとしたんですけど、さっきの返事通りいないみたいで……」
「そういえばそうね。剣を使う人は何人もいるけど、刀をメインにって人はいなかったような……。確か冒険者でも少ないわよね」
造る難しさ故、質のいい刀があまり出回っていない。武器を持つ人の中で刀を持つ人の割合が少ない。教官となれるほどの実力を持てる人はより少ない。刀の訓練を出来る教官がいないから刀を選ぶ冒険者は少ない。
多分そんな感じで負のサイクル的な物が出来上がっているのだろう。まあ、その内いい人が見つかるかもしれないし、実践や模擬戦とかの中で自分なりの型が出来るかもしれないし。
「じゃあ私たちは冒険者登録の事務処理してくるわね。アリアさん、私も魔法の訓練ならいつでも相手してあげるからね」
そう言って、セリアはエリシアを連れて去って行った。
取り敢えず二人とも無事冒険者に受かったようで安心した。これで明日パーティ登録して……流石に直ぐ任務って訳にはいかないな。連携とか練習して……。
――ふん。随分とバランスの悪いパーティになりそうだな。
明日からの予定を考えていると、唐突にドラグニールが口を開いた。
そうか? そこまで悪い感じはしないけど。
――あの木剣の女は魔法も上手く剣も使える。しかし剣は前衛でやってける程では無く後衛での自衛並みだ。しかし魔法も攻撃魔法が主で後衛での支援魔法というわけでも無い。あの小僧はあの腕の機動力なら中衛でも前衛でも行けるだろうが、そもそもあやつは戦う人間では無い。練度とかの話では無く在り方としてだ。事実あやつのスキルは生み出す者の力だろう? そして貴様だ。貴様は勿論この三人の中で、いやこのギルドの中でも上位の実力を持つ。それは事実だが、使い方は愚を極めている。自覚はあるだろう。
まあ確かに……。ドラグニールの力とか不死身のスキルありきで今まで無茶してたからなあ。じゃあどうすればいいと思う?
――木剣女は補助魔法を習得し後衛。腕小僧はあの筋肉達磨に付き拳での戦いを学び中衛、木剣女の護衛。そして貴様が前衛……だが、欲を言えばあと一人前衛が欲しいな。敵が少なければ問題ないが、多ければ取りこぼす可能性が出る。
あと一人か……まあ無い物ねだりしても仕方ないな。取り敢えずその方向で訓練していくか。
――そうしておけ。我はしばらく寝る。
お前、最近静かなとき多いけどずっと寝てんのか?
――…………。
え、寝付き良すぎない?
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