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冒険者と鍛冶師
ルーキー卒業
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その日俺はいつもより早く起きて身支度と食事を済ませると、ギルドの受付に行ってある申請をすると酒場でジュースを飲みながら出入りする人々を眺めていた。
どうでもいいけどこの世界って果汁百パーセントが普通だし、しかもめっちゃ美味しいんだよな。
顔見知りの冒険者と雑談をしながらしばらく過ごし、やがて目当ての人物がギルドに入ってくのを見つけると俺はその人物に向かって声をかけて駆け寄った。
「クラガさーん!」
「あ? おお、いたのか」
クラガは俺を見つけると、どこか含みのある笑みを浮かべて軽く手を上げた。
「他の人にクラガさんの任務受けられたくないですしね。一緒に行きましょ?」
「別にいいけど……なんか変な殺気みたいなの感じるんだが」
「あー……何でしょうかね? ほらほら行きましょっ」
俺はクラガの背中を押しながら苦笑いを浮かべ話題を反らした。
この前はらしい程度の認識だった俺とケーデさんのファンクラブなるものは、どうやらマジで存在するらしい。……やっぱ冒険者とギルド職員って案外暇なんじゃ……。
謎の殺気を主にクラガが全身に浴びながら歩き、俺たちは受付に着いた。
「あら、アリアちゃん。さっきぶりね」
「うん。このお兄さん案内してたんだ」
「誰がお兄さんだ……あー、任務の依頼をしたいんだが」
「依頼ですね。少々お待ちください」
受付のエルフのお姉さんはカウンターの下から任務依頼書を取り出し、記入の準備をすると任務内容をクラガに問いかけた。
「依頼者はクラガ。内容は結晶洞窟のオリハルコンの採取の護衛。報酬はそのオリハルコンで作る武器で」
「護衛ですか? 冒険者の採取ではなく」
「自分で採らないと信用できないんで」
「そうですか……護衛となると任務のランクは上がりますし、失礼ですが名のある方ならともかく無名の方の武器が報酬となるとオリハルコン製とはいえ見合っているとは……」
「あ、その任務私が受けるから大丈夫です」
俺が手を上げてそう言うと、受付のお姉さんは少し困っていた表情を安堵のものへと一変させた。
「あらそうなの。なら大丈夫ね。報酬もこれでいいの?」
「はいっ」
「いやいやいやちょっと待て!」
俺とお姉さんとの間で勝手に話が進み、慌ててクラガが間に入ってきた。
「お前さっき任務のランク上がるって言ってたよな!?」
「はい。結晶洞窟は通常Bランクエリアですが、今回は冒険者単体ではなく貴方の護衛ですのでAランクの任務ですね」
「だったらなおさらだわ! このガキのランクFだろ!?」
「いえ。アリアちゃ――アリアさんは本日で冒険者となって二週目ですので本日から昇級が可能となり――今日からAランクとなっています」
「……は?」
ぽかんと間の抜けた表情になったクラガはギギギと錆びついた金属のような音が鳴りそうな速度でこちらを振り向き、俺はどや顔を浮かべて自分の冒険者カードを突き出した。
今日発行してもらったばかりのそれにはしっかりとAランク冒険者と示す文字が刻まれていた。
ケーデさんたちのオーガ戦での評価は奴と対峙して逃げなかったこと、死ななかったこと。能力というよりはその精神を称えての一ランクアップだったが、俺は直接戦って引き分けにまでもっていったことがかなり高く評価され、異例も異例なランクアップを果たしたのだ。
「へへーんだ!」
「はぁぁああああああああああああ!?」
クラガの叫びがギルド中に響き渡った。
どうでもいいけどこの世界って果汁百パーセントが普通だし、しかもめっちゃ美味しいんだよな。
顔見知りの冒険者と雑談をしながらしばらく過ごし、やがて目当ての人物がギルドに入ってくのを見つけると俺はその人物に向かって声をかけて駆け寄った。
「クラガさーん!」
「あ? おお、いたのか」
クラガは俺を見つけると、どこか含みのある笑みを浮かべて軽く手を上げた。
「他の人にクラガさんの任務受けられたくないですしね。一緒に行きましょ?」
「別にいいけど……なんか変な殺気みたいなの感じるんだが」
「あー……何でしょうかね? ほらほら行きましょっ」
俺はクラガの背中を押しながら苦笑いを浮かべ話題を反らした。
この前はらしい程度の認識だった俺とケーデさんのファンクラブなるものは、どうやらマジで存在するらしい。……やっぱ冒険者とギルド職員って案外暇なんじゃ……。
謎の殺気を主にクラガが全身に浴びながら歩き、俺たちは受付に着いた。
「あら、アリアちゃん。さっきぶりね」
「うん。このお兄さん案内してたんだ」
「誰がお兄さんだ……あー、任務の依頼をしたいんだが」
「依頼ですね。少々お待ちください」
受付のエルフのお姉さんはカウンターの下から任務依頼書を取り出し、記入の準備をすると任務内容をクラガに問いかけた。
「依頼者はクラガ。内容は結晶洞窟のオリハルコンの採取の護衛。報酬はそのオリハルコンで作る武器で」
「護衛ですか? 冒険者の採取ではなく」
「自分で採らないと信用できないんで」
「そうですか……護衛となると任務のランクは上がりますし、失礼ですが名のある方ならともかく無名の方の武器が報酬となるとオリハルコン製とはいえ見合っているとは……」
「あ、その任務私が受けるから大丈夫です」
俺が手を上げてそう言うと、受付のお姉さんは少し困っていた表情を安堵のものへと一変させた。
「あらそうなの。なら大丈夫ね。報酬もこれでいいの?」
「はいっ」
「いやいやいやちょっと待て!」
俺とお姉さんとの間で勝手に話が進み、慌ててクラガが間に入ってきた。
「お前さっき任務のランク上がるって言ってたよな!?」
「はい。結晶洞窟は通常Bランクエリアですが、今回は冒険者単体ではなく貴方の護衛ですのでAランクの任務ですね」
「だったらなおさらだわ! このガキのランクFだろ!?」
「いえ。アリアちゃ――アリアさんは本日で冒険者となって二週目ですので本日から昇級が可能となり――今日からAランクとなっています」
「……は?」
ぽかんと間の抜けた表情になったクラガはギギギと錆びついた金属のような音が鳴りそうな速度でこちらを振り向き、俺はどや顔を浮かべて自分の冒険者カードを突き出した。
今日発行してもらったばかりのそれにはしっかりとAランク冒険者と示す文字が刻まれていた。
ケーデさんたちのオーガ戦での評価は奴と対峙して逃げなかったこと、死ななかったこと。能力というよりはその精神を称えての一ランクアップだったが、俺は直接戦って引き分けにまでもっていったことがかなり高く評価され、異例も異例なランクアップを果たしたのだ。
「へへーんだ!」
「はぁぁああああああああああああ!?」
クラガの叫びがギルド中に響き渡った。
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