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12話 エリオの苦悩(1)
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アンリを選ぶと決意した日から、2日が過ぎていた。
私は疲れの蓄積から本格的に体調を崩しており、アンリの計らいで私は数日ベッドに篭らせてもらっていた。リュカとも夕食は共にしないと告げてあり、あれ以来彼にも会っていない。
そして今日。ゆっくり休ませてもらったおかげで体調も良く、エリオがそろそろパーティーについて色々指導したいという話があった。だから私は久しぶりに起き上がって白いワンピースから普段着に着替えている。
「顔色がだいぶ良くなりましたね」
お茶を入れてくれに来たエリオは、すました顔でそう言う。アンリとリュカとの間に何があったかは、全て知っているのだろうけれど、特にそれを話題にはしない。
「おかげさまで、もうすっかり元気」
「そうですか。でしたら今日1日で急場しのぎのお嬢様を仕立てますので、しっかり覚えてください」
やや厳しめにそう言われると、まずは煌びやかなドレスを見せられた。
派手ではないが、上品なデザインで、地味な自分が着るのは躊躇われるようなものだ。
「これを着て、歩く、踊る。全ての動作を優雅に行ってもらいます」
「踊るって、まさかダンスをするの?」
「パーティーの基本です。裾を踏むなどという失態は犯さないようお願いします」
(それが一番心配だよ……)
パーティーは3日後で、私はアンリの婚約者として隣接する国の要人たちと会うことになるらしい。
「今は平和ですが、隣国とは常に緊張状態です。アンリ様が隣の国の姫を受け入れてくださったらこんなに苦労はしないのですが、どうしてもそれは嫌だと拒否されますので……それでジュリを呼ぶことになったのです」
「結婚の話は出ていたの?」
王子なのだから許嫁ぐらいいるだろうと思うものの、アンリを好きだと自覚したせいか心の中にもやっとしたものが広がる。
「そうですね。フローラ様はアンリ様を幼い頃から慕っていましたから、今でもパーティーで顔を合わせるとダンスをせがむくらいです」
「……そうなんだ」
胸がずきずきするのを感じ、自分でも驚く。
アンリに迫られている時は迷惑なくらいに感じていたのに、こんな話を聞かされると変な嫉妬心が湧いてくる。
(でもアンリはその女性を拒否しているんだから、心配することないよね)
そう言い聞かせると、少し落ち着いた。
「それで……」
着替えようとしている私の側に立ち、エリオはじっと腕を見つめた。
「何?」
「アンリ様とも、リュカ様とも通じたんですよね」
「……っ」
真顔でこんなことを聞かれると、かなりぎくっとなる。
エリオが発する言葉には色気めいたものはなく、本当にただの事実確認がしたいという雰囲気だから余計変な気分だ。
「だったら、どうなの?」
あえて平静を装って答えると、エリオは「失礼」と言って私の両腕の袖をグッとまくった。
「何するの!」
「……懐妊はしていないようですね」
ふっとため息をついて、腕を話す。
私は焦って袖を下ろしながら、エリオを見た。
私は疲れの蓄積から本格的に体調を崩しており、アンリの計らいで私は数日ベッドに篭らせてもらっていた。リュカとも夕食は共にしないと告げてあり、あれ以来彼にも会っていない。
そして今日。ゆっくり休ませてもらったおかげで体調も良く、エリオがそろそろパーティーについて色々指導したいという話があった。だから私は久しぶりに起き上がって白いワンピースから普段着に着替えている。
「顔色がだいぶ良くなりましたね」
お茶を入れてくれに来たエリオは、すました顔でそう言う。アンリとリュカとの間に何があったかは、全て知っているのだろうけれど、特にそれを話題にはしない。
「おかげさまで、もうすっかり元気」
「そうですか。でしたら今日1日で急場しのぎのお嬢様を仕立てますので、しっかり覚えてください」
やや厳しめにそう言われると、まずは煌びやかなドレスを見せられた。
派手ではないが、上品なデザインで、地味な自分が着るのは躊躇われるようなものだ。
「これを着て、歩く、踊る。全ての動作を優雅に行ってもらいます」
「踊るって、まさかダンスをするの?」
「パーティーの基本です。裾を踏むなどという失態は犯さないようお願いします」
(それが一番心配だよ……)
パーティーは3日後で、私はアンリの婚約者として隣接する国の要人たちと会うことになるらしい。
「今は平和ですが、隣国とは常に緊張状態です。アンリ様が隣の国の姫を受け入れてくださったらこんなに苦労はしないのですが、どうしてもそれは嫌だと拒否されますので……それでジュリを呼ぶことになったのです」
「結婚の話は出ていたの?」
王子なのだから許嫁ぐらいいるだろうと思うものの、アンリを好きだと自覚したせいか心の中にもやっとしたものが広がる。
「そうですね。フローラ様はアンリ様を幼い頃から慕っていましたから、今でもパーティーで顔を合わせるとダンスをせがむくらいです」
「……そうなんだ」
胸がずきずきするのを感じ、自分でも驚く。
アンリに迫られている時は迷惑なくらいに感じていたのに、こんな話を聞かされると変な嫉妬心が湧いてくる。
(でもアンリはその女性を拒否しているんだから、心配することないよね)
そう言い聞かせると、少し落ち着いた。
「それで……」
着替えようとしている私の側に立ち、エリオはじっと腕を見つめた。
「何?」
「アンリ様とも、リュカ様とも通じたんですよね」
「……っ」
真顔でこんなことを聞かれると、かなりぎくっとなる。
エリオが発する言葉には色気めいたものはなく、本当にただの事実確認がしたいという雰囲気だから余計変な気分だ。
「だったら、どうなの?」
あえて平静を装って答えると、エリオは「失礼」と言って私の両腕の袖をグッとまくった。
「何するの!」
「……懐妊はしていないようですね」
ふっとため息をついて、腕を話す。
私は焦って袖を下ろしながら、エリオを見た。
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