上 下
27 / 61

11話 嫉妬(4)

しおりを挟む
「駄目、無理だよ……それは絶対にやめて」
 怖くなった私は、必死に抵抗する。でもアンリの腕の力は強くて、逃げる
ことは叶わない。
「昨日、ここで僕を何度も飲み込んだんだ。リュカのまで……だから平気でしょ」
 そう言ったアンリの声色は冷ややかで、私への憎しみが感じられた。
(いくらリュカとのことに嫉妬しているからって、この冷酷さはちょっと異常だよ……私をどうしたいの)
 アンリの抱える闇は、リュカよりずっと深いような感じがする。
 表面上明るく眩しい笑顔を見せている彼だからこその、深くて暗い闇。アンリの光も闇も、全て理解しているのはきっとリュカだけ……そんな気がした。
「ジュリ。僕が君を欲してるのは本当だし、多分愛したいとも思ってる。でも、裏切りはどうしても許せない……だから君がリュカと関係を持ち続ける限り何度でもこうしてお仕置きをするよ」
 言うなり、彼は私の中を思いきり後ろから突いた。
「っ!」
 息が止まるほどの勢いに、体が前にのめる。中はさっきのコーヒーに入れられた媚薬のせいで勝手に濡れてしまっていたようで、あっさりアンリのものを受け入れていた。
(痛くはないけど……全然気持ちよくないし、苦しいよ)
「気持ちよくならないようにしてあるんだから、当然だよ」
(え……)
 私を後ろから突きながら、アンリは薄く笑った。
「さっき飲ませた媚薬は、体だけ受け入れるようになる薬。達することはできるけど、心は満たされないから。……ごめんね?」
「なにそれ……んっ、あっ」
 一方的なアンリの挿入が繰り返され、私は何も感じないロボットのようにただ体を震えさせながら何度も支配された。
 
 しばらくして、アンリは気が済んだのか私から離れると無言でベッドを降りた。シャワーを浴びに行く後ろ姿を見ながら、涙が止まらない。
(少しは私を愛してくれてるのかと思ったけど。こんなの、愛も優しさもない……お仕置きって言ったってひどすぎる)
 ベッドで丸くなって泣いていると、シャワーに行きかけたアンリが戻ってきて私の頬に唇を触れさせた。
「反省した?」
「……わからない」
(アンリの気持ちが……何もわからないし、見えない)
「僕のこと嫌いになった?」
 甘い声で私の耳にキスをするアンリに苛立ちを我慢できず、私は思いきり彼の頬をぶった。ぱしんと音が響いて、手がじんわりと痺れる。
 アンリは自分の頬を押さえながらクスクスと笑った。
「これって嫌いってことなの?口で言ってよ」
「……嫌いだよ。私のこと、おもちゃか何かだと思ってるの?感情を無視して、支配だけしようなんて……絶対許さないから」
 本気で言っているのに、アンリは理解できないようで私を抱きかかえて立ち上がった。
「な、何するの」
「一緒にシャワー浴びよう。丁寧に洗ってあげる……痛いところも全部癒してあげるし、今度は気持ち良くなるようにしてあげるから」
(急に優しくなるなんて……ずるいよ)
 私はアンリの腕の中で力を入れることができなくて、ぐったりとなった。
 昨日からの疲れで、もう失神寸前だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜

和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`) https://twitter.com/tobari_kaoru ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに…… なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。 なぜ、私だけにこんなに執着するのか。 私は間も無く死んでしまう。 どうか、私のことは忘れて……。 だから私は、あえて言うの。 バイバイって。 死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。 <登場人物> 矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望 悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司 山田:清に仕えるスーパー執事

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...