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5 本能の疼き

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「…っ、ま…っ」

 指先がショーツに触れた途端、羞恥心で顔が耳まで熱くなっていく。

「俺のキスで感じてくれたんですね」
「言わないで…」

 どんな顔をしていいか分からなくなって首を横に向けると、深瀬くんはくすっと笑って私の耳元に唇を寄せて囁いた。

「その反応だけで俺、十分に嬉しいです」
「…っ」

 耳元にかかる熱い息が、さらに下腹部をじんわりと濡らしていく。
 それが分かったようで、深瀬くんはショーツ越しに指で敏感な場所を愛撫していった。

 長らくセクシーなこととは縁がなく、感度なんて鈍りきっていると思っていたのに。
 好きな人から触れられるというのは不思議なくらい心地良くて、自然に腰が動いてしまう。
 快感が上り詰めるほどに、自分はやっぱり女だったのだと改めて認識させられていく。

「や…か、海斗……それ以上は」

(これ以上されたら、あっさり達してしまう)

「いいんですよ。俺、今日はあなたが気持ち良くなってくれたら満足なんで」
「え?」

 視線を深瀬くんに戻すと、彼は余裕ある優しい目で私を見ている。

「正直言うと、ゴムがないんです」

(あ……流されない人なんだ)

 20代半ばの男性が、こんなにも余裕があるなんておかしい…そう思う自分もいたけれど、そういう人で良かったと思う部分もあった。

「だから遠慮しないで気持ち良くなってください」

 そう言うや否や、ショーツ越しに動かされていた指が私の中へ入ってくる。
 窮屈な苦しさと、痺れるような心地よさがせめぎ合うように私を追い込んできた。

(こ…んな、感じるとか……今までなかった)

 波のように押し寄せる快感は、少しずつ私から羞恥心すら奪っていく。

「や…怖い」
「何がですか。いっちゃうのが? それとも俺の前で恥ずかしい姿になるのが?」
「言わないで……っ」

 深瀬くんは意地悪な笑みを浮かべたまま私の中で指を自由に動かした。
 敏感な場所を探り出すと、そこを軽く押し上げていく。

「……っ」

 声も出せないほどの快感に襲われたかと思うと、私は彼の背中にぎゅっと抱きつきながら背を逸らしていた。

(……こんな……の、知らない)

 達した私は呼吸を乱してシーツの上で放心状態のまま脱力した。

「瑠璃さん、可愛い」

 深瀬くんは私を下の名で呼ぶと、頰に軽くキスをして上半身裸になった。

「な…にするの?」
「心配しないで、もう何もしないですよ。ただ、肌を合わせるくらいは許して?」
「あ……」

 私を抱きしめる温もりは驚くほど熱くて、私を涙が出そうなほどの優しさで包んだ。
 これまでの自分がどれだけ寂しかったか。
 年齢と比較して耐えてきたものが、一気に溢れ出す。

「海斗……海斗…私……っ」
「ん…何?」

 彼の体にしがみつく私を抱きしめ返し、彼は髪を優しく撫でてくれた。

「俺のこと好き?」
「す……き。好き……大好き」
(年齢も条件も今は関係ない。私は彼が好きなんだ……誤魔化せない)

 涙ぐみながら告白すると、海斗は嬉しそうに微笑んで額にキスしてくれる。

「それが聞けただけで俺、最高に幸せ」
「……海斗って、本当に26歳なの?」

 年下に完全に甘やかしてもらっている感じの自分が、すごく不思議だ。
 でも肌は水を弾くほど滑らかで張りがあって、彼は年齢を疑う要素もないほどに完璧な体をしていた

(こんな若い子と付き合うとか、想像もしたことないんだけどな)

「瑠璃さん……」

 海斗は私を覗き込みながら確認するように言う。

「俺も瑠璃さんが好きです。その、俺の……恋人になってくれませんか。1ヶ月待つって言いましたけど、もう……待たなくていいですよね」

 言葉が滑らかじゃないのが少しだけ初心な部分を感じさせ、微笑ましくなる。
 経験値は高いし恋愛馴れもしているのだろうけど、その一途な部分はきっと彼の性格なんだろう。
 私は彼の視線を真っ直ぐ受け止め、頷いた。

「うん。私で良ければ、恋人にして」
「…っ、やった」

 小さくそう呟くと、海斗は呼吸が苦しくなるほどに抱きしめていた腕を強める。
 でもその苦しさすら嬉しくて、私も彼の背中に手を回した。

(簡単な未来じゃないかもしれないけど。今は……この幸せに酔っていたい)

 久しぶりに感じた女としての喜びと、好きな人に愛されるという安心感。
 その両方を一気に手にし、私は自分の人生でこれ以上の幸せな瞬間はないんじゃないかと感じていた。
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