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2章
4話 新しい契約
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「結婚前提? 快諾って?」
急な話に頭も心もついていかない。
「言葉どおり、陽毬には俺と結婚してもらうってこと。それを久我先生には喜んでもらったってわけ」
「ええっ!?」
(いつの間に!)
という思いと、それを聞いたら確かに父は喜ぶだろうなという思いが同時に心に浮かぶ。
いい相手はいないのかと心配している父のことだ。
大出世して信頼を置いている瑞樹さんがお相手なら、願ったり叶ったりだろう。
(でも! お付き合いする以前の問題でしょう?)
「あのっ、それは流石に困ります」
私だって時間をかけてゆっくり瑞樹さんを知れば、自分の心がどうなるかなんて保証はできない。
でも、今のところそういう関係性は考えられない。
瑞樹さんがあまりに自分とは立場が違うというのもあるけど、それより何より
(私にはタカちゃんがいる)
微妙な関係とはいえ、別れるというところまでは気持ちが冷めているわけでもない。
だいたい、タカちゃんと微妙だから瑞樹さんと……なんていうのも嫌だ。
「残念。もっと喜んでくれると思ったのに」
瑞樹さんは自分の申し出を断られて多少がっかりしたというジェスチャーを見せる。その表情からは特別な失望という感じは受けない。
本気なのか冗談なのか、区別がつかなくて戸惑う。
「私に付き合っている人がいるのは知ってますよね」
「うん。でも、もう別れるんでしょ?」
「そんなの決めてませんよ!」
「へえ。まさかその彼氏と付き合ってるから、俺とは無理ってこと?」
「と、当然でしょう」
何を言っているんだろうと怯んでいると、瑞樹さんは少し考えるそぶりをして私に視線を戻した。
「わかったよ」
「な、にを、ですか」
「久我先生に俺との関係がダメになったことは陽毬が伝えて」
「え……」
背中がヒヤリとするほどの冷たい声音に、思わず肩がすくむ。
「それで今の彼氏と“とりあえず“続いてれば、陽毬にとってはいいんでしょ?」
「……嫌な言い方ですね」
「真実だよ」
(不貞腐れてる? まさかだよね)
私が自分の申し出を快諾しないから、意地悪な言い方をして煽っているように見える。
地位もあってルックスも申し分なくて、私なんかとそんなに本気で結婚しようとするなんてあり得ない。
そうは思うものの、彼の言動を見ていると子どもじみた欲求が隠れているような気がしてしょうがない。
(どっちにしても瑞樹さんは自分勝手だ。お父さんに結婚の話をして。まるで、私をコントロールしようとしてるみたい)
あまり自意識がはっきりしていない私には、こういう強引さは好きな場合もある。
でも、何だか瑞樹さんと話していると自分が自由になる人形のような感じですっきりしない。
すると瑞樹さんはふうと息を吐いてベッドの上にポンと腰を下ろした。
「わっ」
彼の重みでスプリングが弾み、私の体も少し揺れる。
その衝撃で、急に瑞稀さんの体温が近づいて心臓が跳ねた。ふんわりローズのような芳しい香りがして、余計にドキドキしてくる。
(いやいや、今はそういう場面じゃないってば)
言い聞かせている私に瑞樹さんは、私の方を見てもう一度提案をしなおした。
「君が俺と結婚していいと言うまで待つことにする」
「瑞樹さんが私を待つ理由がわからないです」
「俺のことは俺が決める。理由なんて俺にしか分からないことだよ。そうじゃない?」
「う……」
(そう言われても、からかわれてるとしか思えない)
こんな言葉を本気にして傷つくのは嫌だ。
タカちゃんのことを別にしても、瑞樹さんと結婚なんて想像もできない。
人は、イメージできないことは現実化させづらいと聞いた。
だからきっと無理だと思う。
私はこんなにも不可能だと思っているのに、瑞樹さんは時間の問題だと思っているみたいだ。
証拠に、否定的な言葉が出ないのを確信した視線を私に向けている。
「そんなわけで。アシスタントは続けてもらうし、恋人も継続してもらう。それでいいよね?」
「そ、そんな強引な……え……っ」
突然肩に衝撃があって、ぐるんと視点が変わる。
天井が見えたかと思うと、視界を遮るように瑞樹さんの麗しい整った顔が映った。
「恋人ってことは、こういうこともするってことだからね」
(え……)
「嫌なら抵抗して」
真剣な声と視線が言葉も体も封じ込め、そのまま唇をゆっくり塞がれた。
「ふ……」
温かくて柔らかな感触が甘い痺れとなって後頭部にまで響いてくる。
瑞樹さんのキスは、強引なのに、優しくて泣きそうなほどに甘美だった。
(抵抗すべきなのに。顔を背けることすらできない)
頬に指先が触れて、さらに深いキスを息継ぎもさせないで続いた。
かと思えば、不意に唇は離れて、ぎゅっと体を抱きしめられた。
「瑞樹……さん?」
「きっと……俺は陽毬を傷つける。優しくするのは性に合わないんだ」
(声が……震えてる)
「お願いだから抵抗して。嫌ってくれていい、憎まれた方が安心する」
(なら、どうしてそんな強く私を抱きしめてるの)
あまりに切ない声に、私はつい瑞樹さんの髪をおそるおそる撫でていた。
なぜか、この人を突き放してはいけない、そんな気がしてしまったのだ。
「ごめんなさい。憎んだりできないです」
「……じゃあ、俺と結婚してくれるの?」
「今はできないです……でも、嫌ったりもできないです」
「何それ」
私の肩に顔を埋めながら、彼はくぐもった声でそう言う。
わずかに怒りすら感じるような言葉に、私は首を振った。
「わからないです。でも、瑞樹さん……行かないでって言ってるように思えて」
「っ!」
瑞樹さんは今までになく焦った表情で私を見ると、咄嗟に体から離れた。
「は? 何言ってるの? 俺が君を求めて懇願してるとでも?」
「そんなことは言ってないです。そんな気がしただけで……」
「……」
瑞樹さんはふっと息を吐くと、私を冷たい瞳で見下ろした。
「君ほどのお人よしは初めてだよ。きっと、後悔するよ?」
「そうかもしれないですけど。今は……瑞樹さんの側でお仕事をさせていただきたいです」
「……分かった」
冷静さを取り戻したのか、瑞樹さんはベッドから降りて身だしなみを整えた。
この人がこんな姿を見せるのはそんな頻繁じゃないんだろう。
それは、彼のさっきの動揺した表情からも窺えた。
(でもそれを指摘したら、また怒るんだろうな)
彼は私の方を振り返ると、ひとつ呼吸を置いて微笑んだ。
いつもの、余裕ある紳士な彼だった。
「じゃあ契約のし直し。陽毬は俺の“アシスタント“兼“恋人“であること。それは君が俺と結婚する気になるまで続ける。契約の破棄は、お互いの同意がなくちゃできない。それでいい?」
「……わかりました」
(なんか無茶な契約を結ばされされた気がするけど…今は他の答えが見つからない)
私は自分でも驚くほど冷静な気持ちで彼の申し出を受け入れていた。
瑞樹さんと離れることで父をがっかりさせるのが嫌だという気持ちもあった。
けれど、それよりもっと、私自身も離れがたい何かがあったんだと思う。
この時は、自分の気持ちにそこまで深く気づけてはいなかったけれど。
急な話に頭も心もついていかない。
「言葉どおり、陽毬には俺と結婚してもらうってこと。それを久我先生には喜んでもらったってわけ」
「ええっ!?」
(いつの間に!)
という思いと、それを聞いたら確かに父は喜ぶだろうなという思いが同時に心に浮かぶ。
いい相手はいないのかと心配している父のことだ。
大出世して信頼を置いている瑞樹さんがお相手なら、願ったり叶ったりだろう。
(でも! お付き合いする以前の問題でしょう?)
「あのっ、それは流石に困ります」
私だって時間をかけてゆっくり瑞樹さんを知れば、自分の心がどうなるかなんて保証はできない。
でも、今のところそういう関係性は考えられない。
瑞樹さんがあまりに自分とは立場が違うというのもあるけど、それより何より
(私にはタカちゃんがいる)
微妙な関係とはいえ、別れるというところまでは気持ちが冷めているわけでもない。
だいたい、タカちゃんと微妙だから瑞樹さんと……なんていうのも嫌だ。
「残念。もっと喜んでくれると思ったのに」
瑞樹さんは自分の申し出を断られて多少がっかりしたというジェスチャーを見せる。その表情からは特別な失望という感じは受けない。
本気なのか冗談なのか、区別がつかなくて戸惑う。
「私に付き合っている人がいるのは知ってますよね」
「うん。でも、もう別れるんでしょ?」
「そんなの決めてませんよ!」
「へえ。まさかその彼氏と付き合ってるから、俺とは無理ってこと?」
「と、当然でしょう」
何を言っているんだろうと怯んでいると、瑞樹さんは少し考えるそぶりをして私に視線を戻した。
「わかったよ」
「な、にを、ですか」
「久我先生に俺との関係がダメになったことは陽毬が伝えて」
「え……」
背中がヒヤリとするほどの冷たい声音に、思わず肩がすくむ。
「それで今の彼氏と“とりあえず“続いてれば、陽毬にとってはいいんでしょ?」
「……嫌な言い方ですね」
「真実だよ」
(不貞腐れてる? まさかだよね)
私が自分の申し出を快諾しないから、意地悪な言い方をして煽っているように見える。
地位もあってルックスも申し分なくて、私なんかとそんなに本気で結婚しようとするなんてあり得ない。
そうは思うものの、彼の言動を見ていると子どもじみた欲求が隠れているような気がしてしょうがない。
(どっちにしても瑞樹さんは自分勝手だ。お父さんに結婚の話をして。まるで、私をコントロールしようとしてるみたい)
あまり自意識がはっきりしていない私には、こういう強引さは好きな場合もある。
でも、何だか瑞樹さんと話していると自分が自由になる人形のような感じですっきりしない。
すると瑞樹さんはふうと息を吐いてベッドの上にポンと腰を下ろした。
「わっ」
彼の重みでスプリングが弾み、私の体も少し揺れる。
その衝撃で、急に瑞稀さんの体温が近づいて心臓が跳ねた。ふんわりローズのような芳しい香りがして、余計にドキドキしてくる。
(いやいや、今はそういう場面じゃないってば)
言い聞かせている私に瑞樹さんは、私の方を見てもう一度提案をしなおした。
「君が俺と結婚していいと言うまで待つことにする」
「瑞樹さんが私を待つ理由がわからないです」
「俺のことは俺が決める。理由なんて俺にしか分からないことだよ。そうじゃない?」
「う……」
(そう言われても、からかわれてるとしか思えない)
こんな言葉を本気にして傷つくのは嫌だ。
タカちゃんのことを別にしても、瑞樹さんと結婚なんて想像もできない。
人は、イメージできないことは現実化させづらいと聞いた。
だからきっと無理だと思う。
私はこんなにも不可能だと思っているのに、瑞樹さんは時間の問題だと思っているみたいだ。
証拠に、否定的な言葉が出ないのを確信した視線を私に向けている。
「そんなわけで。アシスタントは続けてもらうし、恋人も継続してもらう。それでいいよね?」
「そ、そんな強引な……え……っ」
突然肩に衝撃があって、ぐるんと視点が変わる。
天井が見えたかと思うと、視界を遮るように瑞樹さんの麗しい整った顔が映った。
「恋人ってことは、こういうこともするってことだからね」
(え……)
「嫌なら抵抗して」
真剣な声と視線が言葉も体も封じ込め、そのまま唇をゆっくり塞がれた。
「ふ……」
温かくて柔らかな感触が甘い痺れとなって後頭部にまで響いてくる。
瑞樹さんのキスは、強引なのに、優しくて泣きそうなほどに甘美だった。
(抵抗すべきなのに。顔を背けることすらできない)
頬に指先が触れて、さらに深いキスを息継ぎもさせないで続いた。
かと思えば、不意に唇は離れて、ぎゅっと体を抱きしめられた。
「瑞樹……さん?」
「きっと……俺は陽毬を傷つける。優しくするのは性に合わないんだ」
(声が……震えてる)
「お願いだから抵抗して。嫌ってくれていい、憎まれた方が安心する」
(なら、どうしてそんな強く私を抱きしめてるの)
あまりに切ない声に、私はつい瑞樹さんの髪をおそるおそる撫でていた。
なぜか、この人を突き放してはいけない、そんな気がしてしまったのだ。
「ごめんなさい。憎んだりできないです」
「……じゃあ、俺と結婚してくれるの?」
「今はできないです……でも、嫌ったりもできないです」
「何それ」
私の肩に顔を埋めながら、彼はくぐもった声でそう言う。
わずかに怒りすら感じるような言葉に、私は首を振った。
「わからないです。でも、瑞樹さん……行かないでって言ってるように思えて」
「っ!」
瑞樹さんは今までになく焦った表情で私を見ると、咄嗟に体から離れた。
「は? 何言ってるの? 俺が君を求めて懇願してるとでも?」
「そんなことは言ってないです。そんな気がしただけで……」
「……」
瑞樹さんはふっと息を吐くと、私を冷たい瞳で見下ろした。
「君ほどのお人よしは初めてだよ。きっと、後悔するよ?」
「そうかもしれないですけど。今は……瑞樹さんの側でお仕事をさせていただきたいです」
「……分かった」
冷静さを取り戻したのか、瑞樹さんはベッドから降りて身だしなみを整えた。
この人がこんな姿を見せるのはそんな頻繁じゃないんだろう。
それは、彼のさっきの動揺した表情からも窺えた。
(でもそれを指摘したら、また怒るんだろうな)
彼は私の方を振り返ると、ひとつ呼吸を置いて微笑んだ。
いつもの、余裕ある紳士な彼だった。
「じゃあ契約のし直し。陽毬は俺の“アシスタント“兼“恋人“であること。それは君が俺と結婚する気になるまで続ける。契約の破棄は、お互いの同意がなくちゃできない。それでいい?」
「……わかりました」
(なんか無茶な契約を結ばされされた気がするけど…今は他の答えが見つからない)
私は自分でも驚くほど冷静な気持ちで彼の申し出を受け入れていた。
瑞樹さんと離れることで父をがっかりさせるのが嫌だという気持ちもあった。
けれど、それよりもっと、私自身も離れがたい何かがあったんだと思う。
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