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2章

3話 ひょんなことからお持ち帰りされました2

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 車に揺られること約二十分。
 着いた先はアトランテが入っていたビルと同じくらいの高層ビルがいくつも立ち並ぶオフィス街だった。

(わ、圧倒される)
 
 場違いなところを歩いてる気がしていると、瑞樹さんがそっと背中に手を添えてくれた。

「こっちだよ」
「はい」 

(瑞樹さんが隣にいてくれると思うとちょっと安心だな)

 連れられた先のビルの入口にはスーツ姿の男性が立っていた。
 すると男性の方も私たちに気づいて近寄ってきた。

「お待ちしておりました、瑞樹様」
「うん、今日はよろしく」

(顔パス? 瑞樹さんってやっぱりすごいな)

 瑞樹さんは慣れた様子で受付を済ませると、そのまま案内されて応接室へと通された。
 ソファに座り待っていると、ほどなくして扉が開き男性が入ってくる。

「お待たせいたしました、本日は弊社にお越しいただきありがとうございます」

 立ち上がって挨拶をしようとすると、瑞樹さんはそれを制止してソファに座らせた。それから名刺交換をして、私たちは席に着く。

(う……なんだか緊張するなあ)

 初めて訪れた会社で初対面の方と会うのだから、当然といえば当然だけれど。

(しかも相手の方は取締役だし……)

 ドキドキしながら成り行きを見守っていると、さっそく商談が始まった。
 内容は主に新作のバッグについてのようだけれど、専門用語が多くてさっぱりわからない。
 とりあえず二人の会話をメモしていくのが精一杯だ。

(私にわかるのは、このブランドのロゴが入った鞄を瑞樹さんが取り扱っていて、今回はその売り上げを伸ばしたいってことくらいかな)

 少し余裕が出てきたので周りを見回してみると、壁際に等身大の人形が飾られていた。

(わあ、可愛い)

 思わず見入っていると、その横にある時計が目に入った。

(あ、もう4時か)

 お昼があまり食べられず、こんな時間なのに空腹を感じた。
 集中力が途切れてしまったようだ。
 ふと隣の瑞樹さんを盗み見ると、彼もまた真剣な表情で話をしている。

(こんな大事な場面でお腹鳴らしたら大変)

 気を引き締めて背筋を伸ばすと、私の様子に気づいた彼がこちらを向いた。

「……陽毬、あと少し待てる?」
「う、あ、はい」
(やだ、これじゃあ私がまるで我慢のできない子どもみたい)
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