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1章

2話 再会(4)

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 恐れ多くも瑞樹さんにエスコートされ、別室に用意されていた休憩室に移動した。
 ここは気分が悪くなった人用に用意されているだけで、基本パーティー出席者が入ることはないみたいだ。
 華々しいパーティーの賑わいが、この静かな個室では遠い世界のように感じる。

(こういう場所の方が落ち着く私って、つくづく華やかな世界には縁がないんだな)

 そんなことを思いながら、手渡されていた水を飲む。
 すぐに頭がクリアになるわけでもなかったけれど、頭は少しクールダウンした気がした。

「ご心配をおかけしました」
「いや。久我先生に任されちゃったからね。気にかけないわけにいかない」
「父に?」

 瑞樹さんは隣に腰掛けながら私を見た。
 触れそうな肩が不意に鼓動を高鳴らせる。
 そして、以前も私をクラリとさせた香水の香りが鼻腔をくすぐる。

(あの瑞樹さんが隣にいるんだ。なんか信じられないな)

 ふわふわした気分でいると、彼は涼しげな切れ長の目をこちらに向けた。
 カラーコンタクトが入っているのか、薄いグレーの瞳がエキゾチックだ。

「俺のアシスタントに応募したいんだって聞いた」
「あ、そうなんです。でも……」
「先生の娘さんだしね。即オッケーしといたよ。来週から来社してくれる?」
「えっ」

 まさかもうその話がされていて、承諾までされていたなんて。
 視界がクリアになって、頭の一気に冴えていく。

「ええと。あの、私、実務経験ないですけど」
「かまわないよ。スケジュール管理、簡単な計算、それと俺の身の回りを多少世話してもらうくらいだから」
「瑞樹さんの身の回りを……」

(それができるのかも心配)

 相当に不安な顔をしていたのか、瑞樹さんは整った唇の端を少し上げた。

「固くならなくていいよ。俺は身近に危険の少ない人間を置きたかっただけだから」
「危険?」
「立場上、機密情報をたくさん扱ってるからね。素性が分かってる人に雑用を頼みたかった。だから君は適任だ」
「な、なるほど……」

 大切なデザインのデータなんかを盗まれる可能性なんかも警戒してるんだろうか。
 だとしたら彼の言う通り、確実に信頼のできる素性の人間がいいということだ。
 私は父が大学の教授で、瑞樹さんにとって信頼のできる恩師の娘だ。

(だから安心してアシスタントにできる、ということなんだ)

 ただそれだけの理由だ。
 そう思うと納得する反面、瑞樹さんの言葉や態度には仕事以上の付き合いはする気はないと釘を刺されたような気がした。
 それで当然だし、いいのだけど……少しだけ寂しい気がしてしまった。
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