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1章
2話 再会
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それから十日ほど経ったある日。
父に呼ばれて実家に顔を出すと、テーブルの上にパーティーの招待状が来ているのが目に入った。
「お父さん、またパーティ?」
「そうなんだよ」
淹れてくれたコーヒーをテーブルに並べながら、父は嬉しそうに目を細める。
年齢を重ねる毎に、有名になった教え子たちが父をいろんなパーティーに呼んでくれるのだ。
おかげで70歳を目前にした今でも、父は若々しく輝いている。
「今度のパーティーは柏木の招待だ。彼の立ち上げたDiosaというブランドが5周年を迎えるようでね、その記念パーティだそうだ」
「えっ、Diosa?」
(ってことは……)
驚いて招待状をよく見てみると、差出人は確かに“柏木瑞樹“になっていた。
会社名、本名を考えても、間違いなく先日会ったあの瑞樹さんに間違いない。
「瑞樹さんて、教え子なの?」
「ああ。学生時代、何度かうちに遊びに来てたんだが、覚えてないか」
「ぜ、全然……」
(そうなんだ。あの瑞樹さんがうちに遊びに来てたんだ)
当時はおそらく普通に男性の姿だったろうけれど、きっと目を引くイケメンだっただろうことは容易に想像できる。
(会ってたのかな……)
自信がないばかりに、あまりお客様の顔もしっかり見ていなかった過去を振り返る。
(あの頃の私じゃ、もし瑞樹さんに会っててもうまく会話できなかっただろうな)
社会人になる前の私は今より引っ込み思案で、父には本当に心配をかけていた。
私も今は一人暮らしもできているし、まだまだだけど、少しだけ以前よりは自信が持てている。
「陽毬、もしよかったら一緒にパーティーに行かないか?」
突然父が妙案を思いついたとでも言いたげな顔でそう言った。
「そうだ。ちょうど柏木からアシスタントを紹介して欲しいと頼まれてるんだが。お前、どうだ?」
「み、瑞樹さんのアシスタントに?」
「服飾関係の学校に行ってたんだ。十分資格はあるだろ」
無理!
お仕事経験ゼロだし!!
と、咄嗟に思ったけれど、こんなチャンスは二度とないのではと思い直す。
(お店では失礼をしてしまったし……もう一度会えるなら)
「アシスタントになれるかどうかは別として。パーテイーには出てみたいかな」
「そうか」
私が珍しく華やかな場所に出ることに積極的になったのを聞いて、父の顔も綻ぶ。
「よし、じゃあ柏木には娘と出席すると伝えておこう」
またもや父からの恩恵を受けることになってしまったのは多少心苦しくもあったけれど、このチャンスは逃したくないと直感で感じていた。
(また瑞樹さんと会えるっていうだけで嬉しい)
この決意が、自分の人生を大きく変えてくれることになるとまでは思っていなかったけれど。
父に呼ばれて実家に顔を出すと、テーブルの上にパーティーの招待状が来ているのが目に入った。
「お父さん、またパーティ?」
「そうなんだよ」
淹れてくれたコーヒーをテーブルに並べながら、父は嬉しそうに目を細める。
年齢を重ねる毎に、有名になった教え子たちが父をいろんなパーティーに呼んでくれるのだ。
おかげで70歳を目前にした今でも、父は若々しく輝いている。
「今度のパーティーは柏木の招待だ。彼の立ち上げたDiosaというブランドが5周年を迎えるようでね、その記念パーティだそうだ」
「えっ、Diosa?」
(ってことは……)
驚いて招待状をよく見てみると、差出人は確かに“柏木瑞樹“になっていた。
会社名、本名を考えても、間違いなく先日会ったあの瑞樹さんに間違いない。
「瑞樹さんて、教え子なの?」
「ああ。学生時代、何度かうちに遊びに来てたんだが、覚えてないか」
「ぜ、全然……」
(そうなんだ。あの瑞樹さんがうちに遊びに来てたんだ)
当時はおそらく普通に男性の姿だったろうけれど、きっと目を引くイケメンだっただろうことは容易に想像できる。
(会ってたのかな……)
自信がないばかりに、あまりお客様の顔もしっかり見ていなかった過去を振り返る。
(あの頃の私じゃ、もし瑞樹さんに会っててもうまく会話できなかっただろうな)
社会人になる前の私は今より引っ込み思案で、父には本当に心配をかけていた。
私も今は一人暮らしもできているし、まだまだだけど、少しだけ以前よりは自信が持てている。
「陽毬、もしよかったら一緒にパーティーに行かないか?」
突然父が妙案を思いついたとでも言いたげな顔でそう言った。
「そうだ。ちょうど柏木からアシスタントを紹介して欲しいと頼まれてるんだが。お前、どうだ?」
「み、瑞樹さんのアシスタントに?」
「服飾関係の学校に行ってたんだ。十分資格はあるだろ」
無理!
お仕事経験ゼロだし!!
と、咄嗟に思ったけれど、こんなチャンスは二度とないのではと思い直す。
(お店では失礼をしてしまったし……もう一度会えるなら)
「アシスタントになれるかどうかは別として。パーテイーには出てみたいかな」
「そうか」
私が珍しく華やかな場所に出ることに積極的になったのを聞いて、父の顔も綻ぶ。
「よし、じゃあ柏木には娘と出席すると伝えておこう」
またもや父からの恩恵を受けることになってしまったのは多少心苦しくもあったけれど、このチャンスは逃したくないと直感で感じていた。
(また瑞樹さんと会えるっていうだけで嬉しい)
この決意が、自分の人生を大きく変えてくれることになるとまでは思っていなかったけれど。
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