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ケース2 ティムレート魔法子爵家の御令嬢セシル様の場合

第9話

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「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 おいおいおいおいおいおいぃぃぃぃぃぃぃ!?

 うっそだろっ!?

 正体不明の襲撃犯に食堂前で襲われた直後にカリトリム魔法侯爵家から事務所に襲撃かまされるとかマジかよぉぉぉぉっ!?

「カムイ!どういう事よっ!?」
「わかりませんねっ!俺が知りたいくらいっすよ!!」

 クソ貴族め。婚約破棄して追い出したセシル嬢を追っかけて、俺に襲撃かますとはいい度胸だなぁっ!?

 前回のセリスと言い、今回のカリトリム家の馬鹿どもと言いっ行動力のある貴族の皆様でございますねぇっ!!

「この屋敷の仕掛けは単純ですが、それなりの効果を持ちますっ!ですがその数は多くない!さっきの雄叫びの人数を捌き切るのは無理ですねっ!」

 そう言って俺は近くにあった棚を開き、その中に垂れていた赤い糸を引く。

 その直後

「ギャァァァァァァァァァァ!!!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 3、4人の男の悲鳴が響く。

「な、何よそれ!?」
「このボロ屋敷は多少の迎撃機能はあるんですよ!それよりアンナがいない今、俺たちは無力です!」

 アンナが居ないのを見計らって襲ってきたのか?

 いや、それはない。

 アンナの戦闘能力は一見しただけじゃ絶対に分からないはずだ。

「でもさっきの仕掛けを使えば!」
「先程も言いましたが数が足りません!敵は30はいるはずです!!」

 30というのはさっき聞こえた雄叫びから推定した数だ。

 わざわざ俺達を捕らえるために・・・・・・・・・ん?

 アイツはさっきなんて言った?

 俺はセシル嬢を見る。

「ん?何よ?」
「いえ、今襲撃してきてる奴らはセシル嬢がここにいるのを知らないのでは?」
「どうして?まさか彼らはカムイだけを狙いに来たとでも言いたい訳?」
「えぇ、そうです。最初に声を張り上げた男はカムイに後悔させろ、そう言っていました。セシル嬢の奪還ではなく、俺への報復でしょう。実際、俺は数日前に襲撃宣言を受けていますからね」

 カリトリム家の使いのオッサンが言っていた。

「な・・・あなた、何をしたのよ」

 俺はセシル嬢の質問に答えず、さっき開いた棚の中に垂れている青い糸を引く。

「くせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!う゛っ!?」
「がはっ!」

 ・・・・・・もうそんなところにまで来ていやがったか。

「・・・ここはもうダメです。今の仕掛けが発動したのはこの部屋からそう遠くないところ・・・・・・。セシル嬢」
「何よ?」
「逃げましょう」
「どこに?」
「私の知り合いの場所に」
「良いの?今度はその知り合いのところが襲われるわよ?」

 まぁ普通はそう心配するだろうな。

 だが安心してくれセシル嬢よ。

「大丈夫です」
「どういう事よ?」
「あそこなら絶対に襲われません。むしろ襲えるものなら襲ってみてほしいですね」

 これは本心だ。

 もしも襲撃かまして来るヤツがいるのなら是非とも会ってみたい。

 ・・・・・・・・・敵国なら沢山いそう。

「だから、どこよ?」

 知りたがってるセシル嬢をこれ以上焦らすのは意地悪だな。

 それじゃ、好奇心豊かなご令嬢に教えて差し上げよう。

 俺たちが今から逃げ込む、この国の最高の防衛能力を誇る場所の名を。

「この国の第二王子であるカインの家。つまりはーーー」

 セシル嬢は目を見開いて俺の言葉の続きを待つ。

「ーーー王城です」

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