23 / 23
全て忘れてしまえるものならば、
全て忘れてしまえるものならば、#04
しおりを挟む――周防邸 執務室
「早かったな」
驚くでもなく恐怖するでもなく、余裕さえ携えて創は二人を出迎える。創の横には二人の護衛。
「……あの程度の奴らで、俺を足止め出来るわけねーだろ」
相手との間合いを図る様に一歩前に出ながら、真澄を庇う様に一瞬彼らから目線を外して見せる。
――キィィンッ!!
好機と見たのか、片方が勢いよく斬り込んで来るが、それを身体半分で避け、そのまま背中に刀を突き立てる。そしてその刀を引き抜きつつ、凝りもせず突っ込んで来ているもう一人の刀を弾き、そのまま腹に刀身を突き立てる。二人とも声を上げる間もなく一瞬にして息絶える。
流石の創も、ほぼ一撃で倒されるとは思っていなかったのだろう。彼の顔から余裕が消えていた。恐怖、焦燥、怒り。様々な感情を含み、絞り出すように発せられた叫びにも似た怒号。
「……なぜだ!? こいつらは……!」
手練れだったのだろう。それなりの。
ただそれよりも遥かに伊吹の方が強かった、それだけの事だ。
「伊吹くんっ、血が……!」
創と対峙すると、あの時の恐怖が鮮明に蘇って来る。けれど、今はあの時とは違う。見届けると約束したのだ。震える足に何とか力を込めて、伊吹の隣へ一歩踏み出す。
「返り血だよ。俺は何ともねーよ」
伊吹が血で汚れた手を着物の端で拭ってから、そっと真澄の頬に触れる。そして真澄を自分の方に引き寄せると、創に向き直る。
「周防創――最期に遺言聞いてやるよ」
「貴様ッ!? 俺を馬鹿にするのも大概しろ! 俺は……俺は、こんなとこで死ぬわけにはっ――うぐあああッ!!」
そう言って創が刀を構えるが、それを意図も簡単に叩き落して、身体に一太刀。そのまま動かなくなる。
「…………」
「行こう、まーちゃん」
去り際、真澄は一度だけ創の方を振り返った。本当は少しだけ期待していたのだ。この結末にならない事を。
「さよなら……創くん」
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

余四郎さまの言うことにゃ
かずえ
BL
太平の世。国を治める将軍家の、初代様の孫にあたる香山藩の藩主には四人の息子がいた。ある日、藩主の座を狙う弟とのやり取りに疲れた藩主、玉乃川時成は宣言する。「これ以上の種はいらぬ。梅千代と余四郎は男を娶れ」と。
これは、そんなこんなで藩主の四男、余四郎の許婚となった伊之助の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる