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全て忘れてしまえるものならば、
全て忘れてしまえるものならば、#03
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翌日の夕刻。
「伊吹くん、あの……昨日はごめんなさい」
「まーちゃんが悪いわけじゃないんだから、謝ることねーって」
昨夜気を失った真澄を客間に運んだあと、奏と雅にはしばらくからかいのネタにされ、ルイスからは真澄との事を根掘り葉掘り聞かれ、それはそれは大変な夜だったが、自分達が〝運命〟とやらにも認められているというのは、悪い気はしなかった。
それから程なくして、周防家の屋敷に到着する。初めて来た時から物々しい雰囲気だったが、今日は一段と静かだった。
「……これは伊吹の予想が当たったみたいね」
奏が刀の柄に指を掛けながら可笑しそうに言う。そこら中から殺気が駄々洩れている。自分らが門を一歩くぐれば一斉に襲い掛かって来るんだろう。
「雑魚は俺達で引き受けてあげるから、伊吹と真澄くんは周防創を頼んだよ」
余裕な笑みを浮かべて、奏と雅の二人は護衛を引き連れて門をくぐっていく。程なくして争う音が聞こえてくる。
「伊吹くん……やっぱり僕らも」
「大丈夫だよ。そんじょそこらの浪人に負けるような人らじゃねーよ」
心配する真澄を余所に伊吹は真澄の手を取って、屋敷の隠し通路から敷地内へ入る。屋敷内にも浪人がうろうろしていたが、物陰に隠れてやり過ごし、背後から近付いて確実に仕留めて行く。
「まーちゃん、大丈夫?」
「う、うん」
本当は全身の血の気が引いて、今にも倒れてしまいそうだった。それでも目を背けるわけにはいかない。ここで起きた事、そしてこれから起こる事は見届けなくてはならないのだから。
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