【更新中】暗香浮動 第三章

澪汰

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全て忘れてしまえるものならば、

全て忘れてしまえるものならば、#03

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◇◆◇


 翌日の夕刻。

「伊吹くん、あの……昨日はごめんなさい」
「まーちゃんが悪いわけじゃないんだから、謝ることねーって」

 昨夜気を失った真澄を客間に運んだあと、奏と雅にはしばらくからかいのネタにされ、ルイスからは真澄との事を根掘り葉掘り聞かれ、それはそれは大変な夜だったが、自分達が〝運命〟とやらにも認められているというのは、悪い気はしなかった。
 それから程なくして、周防家の屋敷に到着する。初めて来た時から物々しい雰囲気だったが、今日は一段と静かだった。

「……これは伊吹の予想が当たったみたいね」

 奏が刀の柄に指を掛けながら可笑しそうに言う。そこら中から殺気が駄々洩れている。自分らが門を一歩くぐれば一斉に襲い掛かって来るんだろう。

「雑魚は俺達で引き受けてあげるから、伊吹と真澄くんは周防創を頼んだよ」

 余裕な笑みを浮かべて、奏と雅の二人は護衛を引き連れて門をくぐっていく。程なくして争う音が聞こえてくる。

「伊吹くん……やっぱり僕らも」
「大丈夫だよ。そんじょそこらの浪人に負けるような人らじゃねーよ」

 心配する真澄を余所に伊吹は真澄の手を取って、屋敷の隠し通路から敷地内へ入る。屋敷内にも浪人がうろうろしていたが、物陰に隠れてやり過ごし、背後から近付いて確実に仕留めて行く。

「まーちゃん、大丈夫?」
「う、うん」

 本当は全身の血の気が引いて、今にも倒れてしまいそうだった。それでも目を背けるわけにはいかない。ここで起きた事、そしてこれから起こる事は見届けなくてはならないのだから。

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