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鮮やかと見間違える程に美しく、
鮮やかと見間違える程に美しく、#10
しおりを挟むその日から伊吹は度々、昼夜問わず真澄を町に連れ出してくれるようになった。創の許可が下りているのかは、伊吹に聞いてみても『大丈夫だから』という返事しか返ってこなかった。
「湯川……貴様、最近真澄を僕の許可なしに連れ出しているな。貴様を雇った時に交わした契約を忘れたか? 一体どういう事か、説明してもらおうか」
ある日の昼間。伊吹を自室に呼び寄せた創は、開口一番そう問うた。本当は約束通り、すぐにでも一色家に送り返してやりたいところだが相手があの一色家である以上、そうもいかないのである。
「アンタ、許可出す気ねーじゃん。それに、まーちゃんを外に連れ出してんのは、お偉いさんの意思だよ。俺が仕えてるのは、アンタじゃないからな」
「……あの書状か」
確かに数日前、一色家から書状が届いていた。どうせ碌な要件ではないだろうと、目を通してはいなかったが。
「そーいう事だから、もう良いだろ」
そう言って、伊吹は部屋を後にする。
(……ふざけるな)
いくら一色家が偉かろうと、これ以上好き勝手されては困る。何か早急に手を打たねばならない。そう……例えば、真澄の近侍が急死するような、何かが起こらねばならないかもしれない。
◇◆◇
「まーちゃん、発情期もうすぐだろ。終わった頃に、何か買って来てやるよ。何がいい?」
花火を見た日から数週間後。真澄と共に昼餉を取りながら、伊吹は真澄に問うた。
「えっ……何で、もうすぐって分かるの?」
「……匂い。段々濃くなってきてる。でも、まだ耐えらんねー程じゃねーから、まーちゃんは何も心配しなくていーから」
伊吹には助けられてばかりだ。僕の方がいくらか年上なのだから、これじゃいけないと思うのに、今の自分には伊吹に何もしてやれない。
「……ごめんね。僕がこんな体質なばっかりに、君に迷惑ばかりかけて……」
「別にそれは、アンタのせいじゃねーじゃん。すぐ謝るの、まーちゃんの悪い癖だよ。まーちゃんは、もっと俺に頼ればいーの」
「……ごめ、違う……ありがとう、かな。じゃ、じゃぁ……」
それから数日後、真澄に発情期がやってきたが、それはそれはもう大変だった。今まで不定期に来ていた濃い匂いが比ではない。最初に真澄に会った時も発情期中であったはずだが、発情期初日だからなのか、とてもじゃないが真澄の部屋には近付けなかった。お互いに一日中部屋に籠り、何度も射精を繰り返す。それでも熱が治まらなくて、我を忘れ匂いに釣られ、真澄の部屋へ向かいそうになる度に伊吹は自分自身を傷付けた。真澄に知られたら悲しまれてしまうかもしれない、と伊吹は傷跡を見ながら一人苦笑いを浮かべる。
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