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歪んだように廻り出した歯車は、
歪んだように廻り出した歯車は、#04
しおりを挟む◇◆◇
「……母上と父上が亡くなった? そんな……どうして!?」
それから半年経った、ある日の事だった。両親と共に、商談に同行していた使用人が血相を変えて屋敷に戻って来たかと思うと、両親の訃報を報告したのだった。
商談中の事だった。突然浪人達が数人押し入り、両親に斬りかかったらしい。浪人達は、両親を斬り殺すとその場を後にしたという。
金品を盗んだりする事もなく、両親だけを狙った事から、最初から目的は両親の殺害だったのだろうと思われるとの事だった。
屋敷の中が一気に慌ただしくなる。使用人が去り、部屋には真澄と創の二人きり。
両親の死を哀惜し涙を零す真澄に対し、創はというと、暗い瞳に薄っすら笑みさえ浮かべている。
「……はじめ、くん?」
その表情は、僅かに恐怖さえ感じさせる。
「これで邪魔者はいなくなった」
小さく創がそう呟いたのが聞こえた。『まさか』と耳を疑う。
「なんだよ、真澄。その目は? 僕に、二人を殺せるわけないだろ? まあでも、その辺の浪人に少し金をやれば、人間二人くらいなら簡単に殺してくれるかもしれないけど」
「……なんで、そんな事!?」
「なんで? そんなの、兄さんのせいに決まってるじゃないか。誰も、僕を見ちゃいない。小さい時から、兄さんを守っていたのは僕だったのに、みんな兄さんばかりを贔屓する。ねえ……頭の良い兄さんなら、この事を誰かに漏らしたりしないよね。今まで世話になった使用人の人数が減るのは、兄さんも嫌でしょう?」
真澄の妊娠が分かったのは、それからすぐの事だった。不自然に張り出てきた真澄のお腹に気付いた使用人の一人が、医者を呼んだのだった。
「……兄さんは……兄さんは、男ですよ!? しかも、妊娠してから半年は経ってるって……」
間違いなく、創と真澄の子だろう。当人達を含め、屋敷の人間に激震が走る。ようやく両親の葬式が終わったばかりだと言うのに、次から次へと――。
(いや、待てよ……、これは使えるかもしれないな)
苛々した様子で眉間に皺を寄せ、医者の話を聞いていた創だったが、ある妙案が浮かぶ。
医者を一旦返し、創は屋敷の人間を集めると、昔の様な柔らかい笑みと涙を交え、真澄を犯した事に対する謝罪と、真澄のお腹の子を育てたいという決意と、真澄の身体を第一にという思いから、しばらくの間だけ周防家の事は自分に任せてほしいと話をした。
「どうかな、兄さん? (断ったら、どうなるか分かってるよね)」
隣に立つ兄に、伺いを立てるようにしおらしい態度を見せながら、そっと耳打ちする。
「……っ! う、うん……僕もそれで良いよ」
創が何を考えているのかは分からない。けれど……創がどんな事をしていようと、自分達は双子で、創が『兄さんのせいだ』というのなら、きっとそうなのだろう。現に、創が今の様な性格になってしまった原因は、自分にあるのだから。
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