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冒険者はじめました

29.トラブルは納品時でした

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ザイルさんに連れられて、納品倉庫にやってきた。
大きな倉庫で、解体場所もある様子。
慌ただしく人が行き来している。


「ドーツ主任いますかー?」

「おぅ。どうした?」


奥から出てきたのは、ずんぐりむっくりな体型の髭面のおじ様。
ゲームでいう所の、如何にもドワーフみたいな人だった。
ザイルさんは、彼に私達の納品リストを渡す。


「こちらを、一気に納品させてもらいたいんですが。」

「あ?一気に?ふん、飛び級か?どれ・・・」


ドーツさんという、ずんぐりむっくりおじ様は、リストに目を通す。
次第に目が見開き、ザイルさんの顔を凝視する。


「おぃ!?この量一気にか??しかもDなんて、塩漬けだらけじゃねぇか?」

「はい、ご本人達がいけると仰るので。お願いします。」


ドーツさんが、私達の方を向く。
値踏みするように、しばらくじーっと見ていた。
その様子に、他の職員も集まってくる。


「黒髪・・・ギルマスの言ってた、ファーマスんトコに入ったっつー『黒持ち』か。わかった。とりあえず、そこに置いてけ。」

「「わかりました。」」


私達は言われた通り、指示場所にF・E・D級と分けて、ポンポン置いていく。空間収納は、楽だね。

最初のうちは、半信半疑だった職員達も、D級納品物を出す頃には、静かになってしまった。


「これで、全部ですー。」

「俺も、これで。」


終わったことを告げると、ドーツさんは、職員達に指示を出す。


「お前達は、F級チェックしろ、お前達はEだ。テル、お前は俺とD級チェックだ。」

「「「わかりました。」」」


指示された職員達が、一斉に動き出す。
チェック終わりまで暇そうかなーと思っていたら、何やら騒がしくなってきた。


「何でこんなに、最高状態で採取できるんですか!?どれもこれも、ランクAですよ?」

「新人がこんなに綺麗に出来るわけがないっ。ドーツさんっ、コレは不正ですよ!大問題です!」

「ニースの森の住人達の採取を、自分達がやったと言っているんだろう!?」

「こんな、魔獣までありえないっ」


・・・あー、あー、キコエナーイ。
キャパ越え現象が起こると、否定したくなるのは世の理なのでしょうか。

しっかし、失礼だなぁ。ウチの最優秀鑑定さんと採取スキルのおかげなのに。
まぁ、銃はかなり反則だと思うけども。


「うるっせぇっ!!お前らの見解なんか聞いてねぇ!黙って鑑定仕事しろぃ!!」


ドーツさんの雄叫びに、一気に静まり返る。
おぉ。流石。年季が違う感じだ。
仕事にプライドのある職人さんは違う。カッコいいなぁ。
ふと、ザイルさんと師匠を見る。
視線を感じたのか、2人が振り向く。


「大丈夫ですよ。ドーツ主任の鑑定眼は素晴らしいです。採取物から、人の性根も見分けますから。」

「採取や解体に関しては、俺らより、
お前達の方が腕がいいのは、集落の皆が知る事実だ。」

「寧ろ、リンちゃん達のおかげで、集落自体が、恩恵を受けてるしねぇ。」


ザイルさんが、ニコニコと。
師匠達がのんびりした様子で話すため、職員さん達との温度差がすげぇや。
まぁ、鑑定が全部終わるまで、大人しくしてようかな。



****




しばらく待っていると、鑑定は終了した。
職員さん達の結果を集め、ドーツさんが最終確認している。
それも終わると、ドーツさんが私達の所へやってきた。
評価が書いてある紙をザイルさんに渡す。


「どの品物も、文句つけようのない最高ランクだ。D級ライセンスは問題ない。納品状態で言えば、C級でもイケるだろうな。」

「そうでしょうね。」


渡された紙を確認しながらザイルさんは頷き、私達を見る。


「それでは、D級ライセンス認定とします。C級昇格試験については、試験官の調整が取れ次第と。」

「待ってください!!」


先程まで、鑑定を行っていた職員達が声を上げる。


「何でしょうか?」


ザイルさんが、とても冷たい声を出した。
一気に背筋が寒くなる。
しかし職員達は、負けじと声を上げる。


「新人が、D級まで一気に納品なんて、あり得ません!!」

「あなた達は、彼らが目の前で空間収納から取り出すのを見ていなかったのですか?」


ザイルさんの声色が氷点下。こえぇ。
それでも、彼らは止まらない。
自分の常識外は認められないんだね。


「見てはいましたが、空間収納は魔力量さえ有れば、量は入れる事ができます。その全てを彼らが採取や討伐したという証拠がありません!」

「そうです。彼らはニースの森の集落にいたとか。あの集落の人達が彼らに納品物を渡している可能性だってあります!」

「魔獣だって、『グレイハウンド』のメンバーについていれば、自ら倒さなくても、手に入れる事が、出来るではありませんか!!」


・・・その物言い、アウトじゃね?
私達を認めたくないのは別に良いけど。
それじゃ、ニースの森の集落の皆さんや師匠達が、進んでズルに加担しているって話だよね?

・・・馬鹿にすんのも大概にせぇよ?


「リン、カン、待て。」


ぎり、と奥歯を噛みしめ、踏み出しそうになるのを、イズマさんに止められた。


「っでも!」

「副ギルマスに、任せておいて大丈夫。だよ?」

「ギルド職員達の不始末だ。副ギルマスが処理してくれる。」


ベネリさんも、イズマさんも、そう言って、飛び出そうとする私達を、やんわりと止めた。
しぶしぶと、身体を戻し、成り行きを見守る。
絶対零度の眼差しで、ザイルさんは職員達と対峙していた。


「わかりました。あなた達は、ランクBパーティー『グレイハウンド』及び、彼らが守護するニースの森集落の者達が、不正に加担していると。
そう仰るのですね?」

「そうは、言っていません!」
 
「何がです?彼らが、自分達の力で最高の状態で採取なんて出来る訳がない。
だから、『グレイハウンド』のメンバーや、ニースの森の者達が、彼らに横流しをしている。
あなた方が言っているのは、そういう事でしょう?

大体にして、彼ら新人に横流しをして、ニースの森の者達や、ファーマス殿達が得るメリットは何なのですか?
メリットも無いのに、自ら不正に加担すると?
何かの慈善事業ですか?」

「そ、そうではありません!」


容赦なくぶった切るザイルさん。
職員達は、青ざめた顔してるけど。まだ、食い下がる。


「では何だと?」

「・・・その者達が、収穫物を盗んでいるということです!」

「証拠は?」

「っ!」

「そこまで言うのならば、証拠があるのですよね?その納品物が、窃盗品だ、という。
鑑定で判定出来たと言うのですか?」

「判定した訳では、ありませんが・・・そうでもしなければ、こんな品を揃えることなど無理です!!」





**************



ザイルさんの無双回になってしまった・・・(´ー`)


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