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冒険者はじめました
28.冒険者登録とか、飛び級とか
しおりを挟む飛び級って、カッコいい響きだけど。
いざそうなる立場だと、ビビる自分は小市民。
***
ザイルさんの話を引き継ぎ、ロイドさんが話始める。
「ファーマスから、ある程度の話は聞いている。
黒髪なのは異国出身であるから。
魔力適性が、全属性かは不明。
但し、魔力量は膨大。空間収納も使用可能。
現在は、無属性身体強化メインの戦闘方法。
カン君は、剣と盾の近接守護役。
リン君は、遊撃。武器が特殊と聞いているが、相違ないかな?」
「「はい。」」
カン君と声を揃える。
師匠が、そのように伝えているなら、そうしておこう。
属性弾については、自分で用意というよりも、師匠達に属性魔力を入れてもらってる設定の方が良いかな?
自分で用意出来るように、特訓中って事にしておいて。
「ファーマスが言うには、バトル方法、パーティー戦術、共にC級ライセンス相当と。
ランクアップの試験官を行う奴の評価だから、正しいとは思うが。
F級から、納品クエストで一気に上げられるのはD級までだ。
C級については、D級納品クエスト完遂後、試験官が付いてC級クラスの単独魔獣退治となる。
君たちは、『グレイハウンド』所属となっているので、ファーマスが試験官になる事は出来ない。
ザイルか、俺か、他のB級ライセンス以上の試験官資格持ちが行うことになる。
それで良いかな?」
私とカン君は、ブンブンと首を縦に振る。
かなりな破格対応でしょう?
これで意を唱えたら、バチ当たるわ。
「それでは、この依頼書のファイルから、納品出来そうなモノを選んでもらえますか?
そして、それぞれの紙に書いて下さい。」
そう言って、ザイルさんは、F級からD級の依頼が載った3冊のファイルを机の上に置き、私とカン君それぞれにペンと3枚の紙を渡す。
紙を見ると、FとE級はそれぞれ20件分、D級は15件分がノルマのよう。
「わかりました。」
私達は、ファイルと空間収納のリスト欄の睨めっこを始めた。
****
クエストの中身を確認。
F級は、街周辺でできる採取中心のお使いクエスト
E級は、獣関係の皮とかが増える。戦いに慣れる、て事かな?
D級は、ちょっと難易度の上がる採取や、下級魔獣退治が入るよう。
私達は、緊急度高そうなモノや、塩漬けになっている依頼を中心にチェックしていく。
「む、コレは少し足りてないなぁ。最近使っちゃってるし。・・・カン君紫蘇の葉50枚ある?」
「紫蘇、あ、ペリエの葉っスね?ありますよ。」
「じゃ、D級のコレはカン君対応で。」
「リンさん、アーミラージュ持ってます?皮と角と魔石2体分。」
「ウサモドキねー、あるある。コレだけで5枠埋まるなー」
「それはやめましょ?値崩れするっスよ。せめて2枠で。あ、コッチは?」
「スピーダの尾羽と魔石15体分?あ、カモドキね。あるわ。」
「鴨モドキっスよね?その言い方、やめてください。蚊モドキみたいで痒くなるから。」
サクサクと在庫チェックを実施。
リストに書き出していく。
その様子を見ていたロイドさん達は固まっている。
「おい、ファーマス!何なんだ?チェック内容だけでとんでもない量入ってそうだぞ!?」
「だから言ってるだろう。魔力量がハンパないって。」
「しかも、D級でも達成しにくい魔獣系納品ばかり選ぶとか。」
「アイツの武器は特殊だからなぁ。」
ロイドさんとザイルさんの眉間に皺が寄る。
「特殊って・・・」
「説明するより、見た方が早い。ちなみに、アイツの空間収納、アグウルグ10体は入りっぱなしだぞ?」
「アグウルグって・・・それだけで、C級じゃないですか。」
はぁ、とため息をつくザイルさん。
眉間の皺を深くして、ロイドさんが師匠を見やる。
「おい、まさか、あのビガディールは・・・?」
ロイドさんが思い出したらしい。
ニースの森のA級相当ビガディールの退治。
ニヤリと師匠が笑う。
「ご名答。コイツらだよ。」
「なっ・・・っ!」
「いつの間にかあの森に居て、訳わからないままに、ビガディールに襲われて。手持ちの武器で倒しちまったンだと。」
「おぃ、そしたら何であんな報告を!?」
「コイツらの希望だ。」
片耳で聴きながら作業をしていたけど、何かロイドさんが不穏な雰囲気になったので、口を挟むことにする。
「あ、その件は私達からお願いしましたから。
そもそもビガディール仕留められたのも、ビギナーズラックでしょうし。本来討伐する筈だった師匠達に、処理をお願いしただけです。」
「何でそんなことを・・・」
「え?だって、ビガディール討伐は緊急クエストだったんですよね?
その価値も重要度も知らない、冒険者でもない流れの私達が、退治したなんて名乗り出たら、クソ面倒な事になるの目に見えているじゃないですか。
だったら、本来倒すべきだった人が報告上げた方が、全方向穏便に済みますよね?何か問題が?」
はぁーー、と大きなため息をつき、ロイドさんが頭を抱えた。
ザイルさんも苦笑い。
師匠達はニヤニヤしてる。
「それでは、あなた方の得する所がないでしょう?」
「得ですか?」
カン君と顔を見合わせて首を傾げる。
昨日も、レインさんに言われたけど。得って?
「ビガディールの報償金は、師匠からまるっともらってますよ?
それに、この国の常識何にも知らない状態で、ご厄介になってる上に、コッチのお願い通り、常識とか、魔力の使い方とか、戦闘方法とか教えてもらってるんですよ?
居候生活で、寧ろお得ですけど?」
「こちらとしては、状況把握が出来て、仕事の目処がつくまでは静かにしていたかったので、ニースの森集落の皆さんには感謝しかないです。」
私の後にカン君が続く。
その様子に、ザイルさんが首を横に振る。
「考え方といい、言葉遣いといい、君たちは本当に成人したてなのかい?」
「なー。妙に老成してるっつーかなー。」
師匠の言葉に、ギクリとする。
カン君と冷や汗流しながら苦笑い。
「ま、まぁ。元いた国では、働いてましたしね。」
それだけ言って、誤魔化すために、またファイルに目を落とす。
「あとは、高麗人参・・・じゃないや、コーロット3本ので良っかな?」
「それでいきましょう。今年取りにくいって話だったので。足りてないかもしれないっスから。」
「オケ。・・・じゃ、ザイルさん、これで。」
出来上がったリストを渡すと、ザイルさんは頭に手をやる。
「見事に、その級の難易度高いものばかりですね・・・D級なんて塩漬けだらけですか。」
「ザイル、諦めろ。」
ニヤニヤしながら師匠が言う。
ザイルさんは大きく息を吐くと、諦めるように首を振った。
「まぁ、塩漬けを消化して貰えるのは、こちらとしても助かりますから。では、倉庫に行って、これらを出してもらって良いですかね?」
「わかりました。」
席から立ち上がり、大きく伸びをすると、私達はザイルさんに付いて、ギルマス部屋を出た。
納品が終われば、D級スタート。
試験官同伴で、単独魔獣退治済ませればC級に上がれる状態、と。
すんなり行けば良いなぁ。
*******
復習回になってまった。
これで、やらかしても、ギルマス達が、何とかしてくれるよね?w
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