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冒険者はじめました
27.腹を割って話そう
しおりを挟む※ 行間とか調整中です。過去の文ボチボチ修正してます。
**************
「昨日はすまなかった。」
「・・・はぁ。」
入るなり、厳つい坊主頭のギルマスに頭を下げられた。
ぽかーんです。
昨日の勢いどこいった?
もっと、怨みがましい感じで来られると思ったので拍子抜け。
師匠達はニヤニヤしてる。
ザイルさんも、含み笑い。
何でしょう?
「ま。座ってお話ししましょうか。」
ザイルさんに促されて、応接セットに腰掛ける。
全員が、座ったのを確認し、ザイルさんはお茶を出してくれながら話し出した。
「商業ギルドでの一件。私もギルマスとレインから聞き及んでおります。各代表の暴走を止めて頂いたとか。」
「本当にすまねぇ。薬師や飲食店側の考えに反発するしか能がなくてな。あんな恥ずかしい姿見せることになっちまった。」
「反発、ですか・・・?」
ギルマスは、本当にすまなさそうな顔をして、空気がしょぼーんな感じ。
思わず隣にいたカン君と顔を見合わせる。
これは、本当に悪いと思ってる、よね。
ふむ。
あの時、冒険者ギルマス・・・えーと、ロイドさんだっけ?が、薬師や飲食店代表に、反対せざるを得ない状況だった?
「・・・えーと、つまりは、何か冒険者側に不利になるような話に進みそうだったんですか?」
思ったことを口に出してみる。
ロイドさんみたいな人・・・こんなにすんなり謝ってくるタイプの脳筋系な人は、何か身内に不利になりそうな時とか、頑張っちゃう傾向があるからなぁ。
方向性間違えて、ムダに暑苦しい時も多いけど。
私の発言にロイドさんもザイルさんも眼を見張る
何か変なこと言ったかな?
きょと、とする私に、師匠が問いかける。
「何でそう思った?」
「んと。素直に謝るってことは、今回の結論に納得した、自分の考えよりも良い結果になったからなのかな?と。」
「ほぅ?」
師匠が目を細める。
「・・・あの時、ギルマスさんは『一般人に、付与効果は必要ない。冒険者に必要』的な話をされてましたし。今のご様子を見ていたら、自分の利益よりは、冒険者全体の何かを考えてたのかな?と思いました。
なので、薬師側や飲食店側に主導を取られると、冒険者としては困る、ということなのかな?と。」
「聡いですね・・・今の話だけで。」
ザイルさん、関心してるケド。
いやいや、何となく読めるでしょ。
・・・そういや、最初の段階で、ベネリさんがそんな説明してたような?『冒険者の利益になるから、レシピ欲しい』って。
「はぁ・・・そこまでお見通しかよ。」
ロイドさんはガシガシと頭をかく。
そして、ザイルさんと一緒に、今回の行動に至る経緯を話してくれた。
ポーション類は、中々に高額であり、駆け出し冒険者が、おいそれとは手を出せない。
色んな事情で冒険者に成らざるを得なかった者がいるが、駆け出しのウチに命を落としてしまったり、怪我の所為でもっと酷い日雇い仕事やスラムに行く者もいる。
食事に付与効果、ということで、冒険者ギルドの食事処で安く提供出来れば、生存確率も上がるのではないか、という思いだった。
薬師や飲食店側に主導を取られると、結局は物珍しさをウリに値段を吊り上げ、結局は駆け出し冒険者達の口に入る事はないのではと危惧。
だから、あんな一つ覚えのような物言いになってたと。
それが、私達の提案で、食事処に薬師を雇えば安価で付与効果料理が提供できる可能性が出来たこと。
また、商業ギルドがメインとなって開発を進めることとなったため、今後新しい付与効果料理が開発となっても、常識的な値段になるだろう。
「商業ギルド開発としても、簡易な体力回復お菓子のような物が出来ないか考えていると、レインが話していました。完成したら、領内特産品として、ポーションより安価での販売に結びつけたいと。」
「こうなって、本当に助かった。冒険者達も安全策が講じれる。ありがとう。」
「いえ・・・」
面と向かってお礼を言われると、何かくすぐったくて、恥ずかしい。
別に誰かの為じゃなく、自分らの為だったんだけどなー。昨日だって、結局の所、自分達の話を聞いてくれないから、キレただけだし。
ロイドさんは、冒険者達が大事、なんだなぁ。
頭が下がります。
照れて何も言えない私とカン君を、生暖かい目で見ている師匠達。
・・・何か言ってよ。
ほのぼのされると、居た堪れないよ。
空気を変えるように、パン、とザイルさんが、掌を叩いた。
「さ、この話はここまでにして。お2人の冒険者登録の話に移りましょう。」
****
尾を引くザンギ事件。
なかなか本題に入れない(◞‸◟)
冒険者ギルマスと仲直りしたので、短いけど区切ります。
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