27 / 393
冒険者はじめました
26.冒険者はじめますよ
しおりを挟む冷やし中華はじめる感じで。
北の大地は、通年ラーメンサラダですが。
ごまドレは正義だと思うの。
***
昨日入った商業ギルド会館の隣の建物、冒険者ギルド会館に入る。
建物内の作りはいっしょだが、やはり雰囲気が違う。
朝早めの時間のため、依頼ボードとカウンター前は人で溢れていた。
「ちょっと、待ってろ。」
「「はーい。」」
師匠が先にカウンターに向かった。
私たちは、入り口付近のフリースペースで、待つことに。
「活気がありますねー。」
「そうだねー。特にこの時間帯は人が多いかな。」
のほーん、とベネリさんと会話していると、昨日商業ギルドで感じた以上の不躾な視線をあちこちから感じる。
『黒髪・・・』『なんで、2人・・・』等、遠巻きにひそひそされる。
居た堪れず、カン君と顔を見合わせる。
「なんっつーか・・・居心地悪いっスね。」
「んだねー、そんなに黒髪って珍しいんですか?」
ベネリさんの顔をみると、彼は苦笑い して、私たちにしか聞こえないくらいの小声になる。
「とっても珍しいヨォ?黒髪なんて、お伽話だと思われてるくらいにはね・・・」
「集落では、まず《迷い人》と認識されたから、黒髪も有りだったけどな。」
イズマさんも小声で続けた。
そうか。集落の皆さん達に、すんなり受け入れられてたから、全属性話を聞いても、そんなもんか、しか思ってなかったよ。
結構、立場的に色々微妙?
そう考えると、ニースの森集落の皆さんの懐の深さがすげぇ。
「ココでは《迷い人》であることは秘匿。君たちは他国から流れ着いた、黒髪持ち。2人とも、全属性は使い切れていない設定。だから、」
いつも、フワッとした雰囲気のベネリさんの表情が真面目に変わる。
イズマさんからも、ピリッとした気が漂う。
「2人とも、C級ライセンス以上になって独り立ちするまでは、俺らから離れないこと。いい?」
いつもと違う雰囲気に気圧されて、私たちはコクコクと頷く。
それを確認したベネリさんは、ニコと微笑み、またいつもの雰囲気に戻った。
ふと、顔を上げると師匠が手招きをしているのが見えた。
「さて、行こうか。」
「「はい。」」
ベネリさんに促され、私達は師匠の元に向かう。
視線が一緒に動くのを感じるけど、動揺を気取らせないよう、背筋を伸ばして、前を向いて、床を踏みしめる。
カウンターの端に師匠と、もう1人男性がいる。
師匠に近い、180cmくらいの長身に、紫っぽい髪色の短髪、精悍な顔つきのおにーさん。
「初めまして。私は、冒険者ギルドミッドランド支部の副ギルドマスター、ザイルと申します。色々積もる話もありますから、とりあえず中にお入り下さい。」
有無を言わさず、ギルド内部に来るように誘導された。
師匠の顔を見上げると、穏やかな顔で頷く。
ふむ。この人は信用できる人みたい。
好奇、嘲り、嫉妬・・・色んな視線に晒されながら、私達5人はカウンターの奥へ進んだ。
廊下を進みながら、ザイルさんは話を進めていく。
「ファーマス殿から概況は伺っています。黒髪は、どうしたって好奇の目に晒されますから、ライセンス認定や納品等は奥で一気にやってしまいましょう。」
「・・・お願いします。」
つくづく、師匠は人脈が広いんだと思う。
ちょっと話をするだけで、ギルドの偉い人が来ちゃうくらいに。
その恩恵に預かっちゃってる私達は、そりゃ、好奇や嫉妬の目に晒されもするよなー
降りかかる火の粉は自分で払い落とせるように。
自分の強さ、立ち位置、見極めて、驕らないようにしなきゃなぁ。
むむ、と考え込んでいると、師匠の手が頭に乗った。
「何、難しい顔してる?」
「・・・自分の立ち位置と、今後の振る舞いについて?」
くっ、と師匠の喉奥が鳴る。
何故笑う。
「小難しいことは考えなくていいぞ。そのままでいい。」
「なんか、考えないアホの子みたいな言われようデスね。」
アホの子扱いは不本意だ。
「お前らの基本的な価値観と、信念のままで、いいって事だよ。」
「そうですね。ウチのギルマスが落ち込むくらいですから。その方が楽しいと思いますよ?見ている側もね?」
わぁ、ザイルさん爽やか笑顔なのにオーラが黒い。
副ギルマスは、それぐらいじゃないとやってけないんでしょうねー。
と、まぁ、色々話していたら、重厚な扉の前に到着。
・・・あれ?これ、向こう側に偉い人いるヤツ?
会議室とかじゃないの?
あわあわしていたら、ザイルさんがおもむろに扉をノックした。
「ギルマス、『グレイハウンド』一行、お連れしました。」
「入ってくれ。」
ちょっと待てぃ。
まさかのギルマス部屋。
よくわからない新入職員が町長室ぶっ込まれるようなモンじゃん。
しかも、昨日あんなけ、ケンカ売った相手デスよ?
何考えてんの。
カン君と2人でテンパっているのも気にせず、ザイルさんは扉を開けた。
10
お気に入りに追加
1,009
あなたにおすすめの小説


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる