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異世界ネイチャーライフ(?)満喫中
24.ザンギ事件収束?
しおりを挟む・・・売られた喧嘩は買う主義です。
向こうにいた頃は、穏便にしてたけどさ。
言いたいことを一気に吐き出すと、私は立ち上がり、ザンギのお重を片付け、空間収納へしまった。
あーぁ、という顔のカン君。
ニコニコ顔のレインさん。
横向いて笑いを堪えてる師匠。
・・・何故笑う、師匠。
「では、失礼します。カン君、師匠、帰りましょ。レインさん、申し訳ありませんでした。」
ペコリと頭を下げる。
その様子にオッサン達が蒼白な顔をして、引き止め始める。
「ちょっ、ちょっと待てっ。君は何を言っているのか分かっているのか!?」
「世界的な発見・・・巨額の富を何だと思ってるんだっ」
「金カネうっさい。」
あー。
イラっとし過ぎて、本音が出てしまった。
もーいーや。
「若造だったから、何とでも丸め込めるとでも思いました?そして、レシピの権限奪い取るつもりでした?」
あ、冒険者ギルドのギルマスの目が泳いだ。
ほーぅ。
「それとも、薬にしても食事しても、買う側に、税でもふっかける気でした?」
今度は、薬師代表と飲食店代表が目をそらした。
ふーん。
「大体、何でもう、自分たちがレシピを扱えると勘違いしてんですか?ココは交渉、商談の場でしょう?交渉決裂すりゃ、情報売られなくて当然じゃん。」
グウの音もでず、オッサン達は黙る。
「対等な商談のできない、自分の、自分たちの利益しか考えられない人間と、交渉の余地なんかないです。
それなら街角で人集めて、街頭演説した方がよっぽどマシ。
いろんな所でゲリラ的にやって、何処が発祥か分かんなくしてやる。ちっさい集落ばかり回れば問題ないべや。」
小規模集落ネットワークみたいなのないかな?ニースの森の集落の皆さんに手伝ってもらって、元々あった考え方にしてしまえば問題ないべ。
集落薬師の伝承的な感じに仕立てあげれば、ギルドが何言おうが『昔からありますけど何か?』ってツッパねれるべし。
金になる木だろうが何だろうが。
私らが提供する側じゃ。思い通りにさせるかボケ。
「・・・実利ではなく、公の益をとる、とお考えなのですね?リンさんは。カンさんも同じですか?」
固まっているオッサン達を尻目に、レインさんが場を仕切る。
副ギルマス流石。
話を振られたカン君も頷いて答える。
「はい、同じです。俺らがこの国でお世話になった人達が元気でいられるように、と、思い出した故郷の料理でもありますんで。」
一番は自分らのためだけどね。
カン君エライ。話合わせるの上手。
するとレインさんが、すっ、と立ち上がり頭を下げた。
「お志しを無碍にする発言の数々、お許しくださいませ。レシピを取り扱う部署の責任者として謝罪致します。大変申し訳ありませんでした。
情報開示については、されなくても構いません。騒ぎになった件は、商業ギルドで検証し、何もなかった、ポーションでも肉にかかったんだろうと、誤魔化せば問題ない話ですから。」
そう言って、レインさんは何処かスッキリしたような笑顔を見せてくれた。
「レイン、何を勝手にっ」
「・・・若造にココまで言わせておいて、アンタらは恥ずかしくねーのか。」
食い下がろうとした商業ギルマスの言葉を遮り、師匠が超低音で怒気を放った。
わぁい。ししょーの出陣だー。
「コッチは既に、発動条件の検証済ませて、開示の仕方について方向性を話し合ってきてんだ。ソレを聞きもしないで、好き勝手言ってんじゃねえよ。」
イラついてたんですねぇ。破壊力抜群な気配がダダ漏れ。
なんか周りに陽炎が見えまっせ。
不動明王さまですか?
師匠を見ると、顎で席に座るよう促される。
大人しく指示に従った。
しっかし。師匠がお目付役としてこの場にいるのに、どーして丸め込めると思ったんだか。
さて、彼方はどう動くかな?
ラスボス出陣したんだから、そろそろ謝らないと、ホントにレシピ開示できなくなるよー??
そこまでアホじゃないよね?
しばらく、睨み合いが続く。
実質2~3分の沈黙だったと思うけど、体感時間は10分くらいに思えた。
師匠の威圧に、とうとう耐えられなくなったのか、商業ギルマスが口を開いた。
「この度は、大変申し訳ないことをした。今までになかった付与だったために、我々も舞い上がっていたようだ。」
そう言って、商業ギルマスは頭を下げる。
その他のオッサン達も渋々頭を下げた。
師匠は、私とカン君を見やる。
「どうする?」
「謝罪は、受け取ります。」
カン君も、こくり、と頷く。
オッサン達の表情が明るくなる。
あからさまだね。
「ではっ・・・」「ただし。」
商業ギルマスの言葉に被せて、ワザと発言を遮る。
「情報開示に関しては、こちらの要求通りに進めることが条件です。それが不可ならば、この話は無かったことに。」
ニッコリ笑顔で、強気でいきますよ?
馬鹿にされてましたから。
見た目は小娘、中身はアラサー舐めんな。
「そうだな。こんなけアホな態度とられたんだ。そんくらいじゃないと、割りに合わん。」
師匠もすぐ、同意してくれる。
苦虫を噛み潰したような顔した、お偉方。カン君の顔を見ているけど、彼だって折れないよ?
「・・・わかった。要求に応じよう。」
商業ギルマスが、喉の奥から絞り出すように声をだした。
他の3人は、一斉に商業ギルマスを批難の目で見るが、何も言えない。
「言質はとった、ということでよろしいですか?レインさん。」
「はい。商業ギルドは、この件に関して、リンさん、カンさん達の考えを尊重し、レシピを取り扱います。
その際、リンさん達が不利益を被ると考えられる場合には、提案させていただきますがよろしいですか?」
「はい。お願いしますね。」
レインさんはとっても信用出来るのになあ。気持ちよく、今後の話ができるよ。
腹を割って話せれば、皆んなが利益を出して、街を盛り立てることも出来るのに。
そんな中、面倒くさい事はしたくない、自分ばっか良けりゃいいってヤツは、何処にでも居るんだね。
「では、検証結果と、こちらの条件をお伝えします。」
師匠とカン君と目配せをして、情報開示を行った。
【効果付与の件】
・効果付与は、材料に薬草類を利用しているためである。
・そのため、薬師持ちの人が作った薬草入り料理にしか、効果付与はつかない。なお、薬師が薬草に絡む部分を完遂させている事が条件かも。
・材料の薬の鮮度や保存状態、薬師スキルの熟練度によって、効果強度が変化する
・薬師とそれ以外の者の作成では、付与効果の有無はあるが、味は変わらない。
【レシピの販売について】
・ザンギの作り方、ある程度のアレンジ方法は、レシピにて提示
・初回のレシピ販売分のみ購入とするが、その後のアレンジについては自由。
・あくまで、『元祖』は商業ギルドが提示したレシピとする。
・効果付与の点も開示。効果付与を売りにするなら、調理者が『薬師』である事を明確にすること。薬師以外の者が作成した、薬効無しのモノを『付与効果あり』として売った場合は、罰金等罰則規定を用いる。
・レシピ販売のマージンは、他のレシピと同様とする。
イメージは、レシピ本販売。
本に載ってるレシピをアレンジして店で出しても、問題ないわけで。
家庭料理として浸透させたいし、ザンギ串みたいに露天販売ありだし。
あと、この情報開示は、薬師としての可能性も提示している。
この料理だけでなく、既存の料理に薬師が薬草を加えるだけで、効果が出るものがあるかもしれない。
味の保証はできかねますが。
ソコは料理人も含めたみんなで頑張れば良い話。
この領は、薬草や薬が特産品なんだから、それをウリにした薬膳料理とかやれば良いじゃん?
そんなことも、カン君と盛り上がりながら、レインさんに向けて話してみた。
レインさんは大きく息を吐き。
商業ギルマス達を見やった。
オッサン達は、居た堪れない様子。
「全く、あなた方は・・・メリットがないではないですか。」
「ありますよ?美味しいもの増えるの良いじゃないですか?それが健康に、美容に、仕事によいなら一石二鳥、三鳥でしょ?私、誰かが作った美味しいモノ食べたいし。ね、カン君?」
「そっスね。ただ、これによって、薬草類が乱獲されたり、値段が上がったりして、本来の薬が作れない、ということが起こる心配があります。一時的なブームで済めばよいかもしれませんが、ある程度は需要が増えるかと。そこは、ギルド側でセーブすることは可能っスか?」
レインさんの眉間に皺がより、師匠を見やる。
師匠はニヤニヤしながら、口を開いた。
「だから、言ってるだろ?こーゆー奴等なんだ。まっすぐ過ぎて、居た堪れなくなるだろ。
・・・自分の利しか目にない、汚ねえ大人にはな。」
・・・買いかぶり過ぎです。
私だって、それなりに汚い大人だけど?
現に自分の主張を通すために、師匠の威を借りて強気だし。
「わかりました。商業ギルド内に、薬師、料理人などで、薬膳料理の開発グループを作りましょう。薬草販売に関しては出荷量調整は可能ですから、そのように取り計らいます。」
何も言わないオッサン達を横目に、レインさんはさくさく話を進めてくれた。
契約書も、レインさんが作成。私たちと師匠で、私たちの主張が網羅されているのを確認してサイン。
最後に商業ギルマスのサインが入り、終了。
契約書は二通作成して、それぞれが持つというのは、何処の世界も同じみたいです。
煩方3人は、終始無言。
商業ギルマスは、一気に老け込んだ様相。
レインさんは良い笑顔。
これにて、ザンギに関わる一連の事件は、円満に?終了となりました。
**************
この次の話がやりたくて仕方がないのに、このパートが、なかなか終わってくれなくて、凄い困った・・・
喧嘩買った上に、台詞増やさないでよ、主人公・・・
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